はっと上がった彼女の顔は、一瞬驚いたような表情を見せ、みるみる辛く歪んでいく。
彼女は声も上げず、ただボロボロと涙を落とし、水滴と一緒に青白い頬を濡らしていた。
私から目を反らし、心を閉ざしたままの彼女に、もう一度私は声を掛けてみた。
「……大丈夫?」
ゆっくりと彼女に近づく私。
彼女は強く首を振って、濡れた髪をぐしゃぐしゃと掴んだ。
私はただ、その様子を見ていることしかできない。
無力すぎるもどかしさに、胸が強く締め付けられた。
すると
「……助けて」
かすれた声がした。
独り言のように呟いた彼女に、私はまた一歩、また一歩と近づいた。
そして、辺りを気にしながら、彼女の目の前でしゃがみ込んだ。
突然、私の手を彼女が両手で強く握った。
驚くほど、冷たすぎる手。
段々力がこもってきて、両手がギシギシと痛むほど強くなった。
「お願い、助けて……」
強く私を見つめるその目とは正反対に、その声は弱々しく、哀しげだった。
でも……私は何もできない。
「……ゴメン」
彼女の手を払って立ち上がると、私は教室に駆け込んだ。
当然、授業中だ。
「おい朝川、何してたんだ」
理科の教師が、席につこうとする私を呼び止めた。
足を止め、言い訳を考える。
「……保健室に行ってました」
「大丈夫か?」
「平気です」
そう言って、私は席についた。
本当は、全然平気じゃない。
彼女の表情と、目と、声が、頭から離れない。
濡れた髪、青冷めた顔色、氷のような両手。
今、彼女がどんな状況に置かれているのかがストレートに伝わりすぎて、何だかショックだった。
イジメって、こんなに悲惨なんだ……。
でも、手は差し伸べない。
違う、差し伸べられないんだ。
私が彼女を守ろうとしたとき、私はどうなるの?
そんなの決まってる。
代わりに、いじめられるターゲットが私になる。
私、オモチャになんてなりたくない。
絶対、嫌なんだ。