2025年3月1日
この週末、居座っていた冬型天気が
漸く過ぎ去って
脊梁山脈にも晴れ間がやって来た
ひと冬に一度は西黒尾根と
自身にノルマを課しているのだが
ここへ来て漸くそれを果たせる事が出来た
何時ものように前夜に現地入り
谷川岳ベースプラザ一階の駐車場で車中泊
この夜の気温は+2℃
先週の八ヶ岳と比べると18℃も高くて
雪山仕様の寝袋では暑すぎるほど
暖かくて困る事はないけれど
寒暖差の激しさに付いて行くのも大変です
翌朝、身支度をして
6:08
駐車場を出発
除雪のされた車道を指導センターまで歩き
そこでアイゼンを装着
西黒尾根の取付きは指導センターの裏手
薄いトレースが刻まれている
登りだしからいきなりの急斜面
先行する登山者に付いて行こうとしたが
とても付いて行けるスピードではなかった
当然ながら若者には適うはずもなく
今日もやっぱりいつも通りのマイペース
7:05
最初の目印ポイントの鉄塔まで登り上げる
今日の気温の高さを考慮して
それなりのウエアリングで来たのだが
それ以上に暑くて
ここで早々とインナー一枚となり
早速水分も補給
今日は出だしから消耗が激しい
鉄塔を過ぎると若干傾斜は緩むが
急登斜面に変わりはない
先行者の薄いトレースを辿って
気持ちの良い景色の中を上って行く
8:04
1140m峰までやって来た
ここからはこれから向かうラクダの背と
谷川岳の頂きが望める
今年は積雪量の多さが効を奏して
視点が5mほど上がっているだろうか?
樹林に遮られずにスッキリと望める
1140m峰を過ぎると幾分傾斜が緩む
樹林の隙間、右手北方に武能岳が見える
黒々とした堅炭岩と
その向こうのピラミダルな頂きは
単調な上りが続く中で
僅かばかりの変化をもたらしてくれる
そしてもう一か所
白毛門がスッキリと姿を見せる場所がある
もう何年も辿っている冬の西黒尾根
そろそろ見えるだろうと振り返ると
この景色が現れる
上るに連れて更に樹林は疎らになって
美しい雪面と程好い樹々の間隔と
その向こうには雲一つない群青の空
谷川岳は人気の雪山だが
ここ西黒尾根は喧騒のない
静かな登行が楽しめる
9:25
第一クサリ場までやって来た
ここでストックをピッケルに持ち替えて
急な雪壁に取付いた
今年は雪付きが良くて登りはスムーズ
すんなりと上部へ抜け出した
そこは瘦せた雪稜
左側5mほどは雪庇になっている
見た目は広々とした尾根だが
辿れるのは右側の僅かな部分だけだ
ここからは展望の良い尾根道
正面に目指す谷川岳を見据えて
右手には遠く巻機山へと続く峰々が望める
振り返れば尾瀬の山や武尊山
南方を見れば靄の中に
赤城山や榛名山まで望める
さあ、先ずはラクダの背を目指して
慎重に危うい雪稜を辿って行こう
一見、幅広の尾根
だが、南側の迫り出しは全てが雪庇
起伏の激しい尾根を辿ると
大きなギャップに直面する
無雪期にはクサリ場となる場所で
何時もなら真っ直ぐに乗り越えるのだが
今冬は雪庇が大きすぎて直に越えられない
トレースは北側斜面に下りて
ブッシュの生える岩場下を巻いている
結構、緊張を強いられる場面だったが
今冬はこれが最良のルート取りのようだ
そんな難所を無事にクリアして
9:56
ラクダの背へと辿り着く
振り返れば
辿ってきた美しい雪稜が見て取れる
そして北方には
上越国境の美しい峰々が肩を並べて
正面には大きく迫る谷川岳の雄姿が
雲一つない青空を背に煌めき立つ
この先はこのルート唯一の下り道
ラクダのコルへ向って
緩々と高度を落として行く
例年ならばここは東西にクラックが走る場所
トレースはそれを避けるように付けられるが
今冬はまだそのクラックは見られない
だが、それは見かけ上の事
ヒドゥンクレバスは落し穴のように
何処かに待ち構えているはずだ
先行者のトレースが
必ずしも安全とは言い切れない
雪山とはそんな世界なのだ
そんな緊張感を胸に抱きながら
ラクダのコルまで下りてきた
さあ、この先はこのルート最大の急斜面
仰ぎ見れば
青空に向かってどこまでも雪壁が続いていて
簡単には登らせてはくれなさそう
心して掛からなければだ
(その二)へ続く




















