2022年10月15日
(その一)からの続きです
小振りの露岩で一休みした後
大源太山を目指して
急登の尾根道を歩き出す
この辺りは既に背丈の低い灌木地帯
展望の尾根道の様相だ
真っ赤に色付いたツツジの向こうに
対峙する尾根を眺めながら
高度を上げて行く
灌木が迫り高度感は感じないが
この辺りから瘦せた尾根道が始まる
そんな道の小さなコブを乗り越えると
大源太山の北側斜面が見えてくる
更にヤセ尾根を詰めて
再度北面が見える所まで登ると
色付いた樹々が
急峻な絶壁に散りばめられて
目の前には錦絵のような風景が現れる
だがそんな目の覚めるような風景に
気を取られている場合じゃない
ヤセ尾根道は益々細くなり
両側がスッパリと切れ落ちている
そんな道を慎重に通過すれば
北面は益々間近に近付いて
鮮やかな色を魅せ付ける
もう気分は歓喜の絶頂状態
だが、ソロ故の哀しさ
この時ばかりは
この感動を共有する者が欲しいと
思った瞬間だった
更にそのヤセ尾根道を登り上げて
危うい北面の際に立ち
谷底を見下ろせば
吸い込まれそうな程美しい光景が
そこにもあった
アブナイ アブナイ
何時までも覗いていると
本当にこのまま吸い込まれそうになる
写真ではリアルさが伝わらないが
ここは際どい絶壁の上なのだ
そんな魅惑的な光景続きですが
程々に見切りを付けて
更に上部を目指す
いよいよ山頂が間近に近づいてきた
色付いた北面の向こうには
巻機山の姿も見えだして
9:29
遂に大源太山頂へと登り上げる
既に幾人かの登山者が屯する中
何時ものように展望写真を撮る
北側の巻機山から時計回りに眺めれば
上越国境稜線がぐるりと南方まで続いて
その延長線上の西側に苗場山が見える
残念ながら雲が多くて遠望は利かないが
中々見応えのある山岳風景だった
さて、今日はここが最終目的地ではなく
ここから上越国境稜線にタッチして
シシゴヤの頭まで縦走の予定だ
この贅沢な景色の中に
もう少しの時間身を置きたいが
先の事を考えると長居は出来ない
先ずはここから急峻な南稜の道を
下る事から始まる
この南稜の道は垂直に近い岩場という感じ
長い長い一本のクサリに縋って下って行く
シビレるような急斜面なのだが
紅葉の盛りのツツジが目を奪う
緊張感を和らげてくれる効果はあるが
気は抜けない
100mはあろうかと思える程の
長いクサリ場を下ると
一旦傾斜が緩んでヤセ尾根道に切り替わる
緩いアップダウンの先には
次なるピーク七ッ小屋山も見えてくる
尾根道は更に一段下って
10:03
最低鞍部まで下りて来た
振り返れば尖った大源太山の姿がある
最低鞍部より登り返しが始まる
小さなピークを一つ登ると
大源太山の険しい山容が更に露になる
鋭く尖り天を衝く姿は
当に上越のマッターホルンだった
向かう先の七ッ小屋山へは
幾つかのアップダウンを繰り返して
高度を上げて行く
だがしかし
この辺りからガスが湧き出してきた
大きく崩れる事は無さそうだが
期待の展望は諦め座ろう得なくなった
でも、展望が無くても
間近に色づく紅葉が目を楽しませてくれる
オオカメノキもご覧の通り
もう来春の花芽を準備して
厳しい冬へと備えている
幾つかのアップダウンを越えて
最後の急登道を登り切ると
緩やかな笹原の道に切り替わる
その緩やか尾根道を辿って
10:57
稜線の分岐点へと辿り着く
ここを左に行けば清水峠~朝日岳~白毛門
右に行けば蓬峠を経て谷川岳方面へ
ここは人気の馬蹄形縦走路のほぼ中間点
嘗て若かったころ
その縦走に憧れてこの道を辿ったのだった
今回はある意味邂逅の山旅だな
そんな事を考えていると
数人のトレールランナーが
風のように走り去って行った
平成生まれの彼らはこの馬蹄形を
一日でやっつけてしまうらしい
もう20年以上も前の事だけれど
大型ザックに押しつぶされそうになって
歩き通した事が
勲章のように思えたのだけれど・・・
若き日の思い出は
そっと心に仕舞い直して
次なるピーク七ッ小屋山頂を目指して
一歩を踏み出したのでした
(その三)へ続く