鳳凰山(その四) | 気ままにアウトドア

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2022年8月14‐15日

 

 

(その三)からの続きです

 

 

 

 

 

 

冷たい風の吹き抜ける赤抜沢ノ頭から

野呂川を挟んで白峰三山を眺め

観音岳を目指して稜線道を歩き出す

 

 

 

稜線部は白い岩に

黒いゴマを塗したような花崗岩地帯

光の反射率が高く

曇天とは言えそれなりの眩しさがある

恐らく紫外線の量も雪山と同程度ある筈

念の為サングラスを掛ける

 

そんな花崗岩の岩陰には

ピンクの花が幾つも見られる

強い日射と乾燥に晒されるこの稜線に

健気に咲いている

 

 

 

鳳凰山へ登ったら

このタカネビランジとホウオウシャジンは

是非とも見たいと思っていたので

早々とその願いが叶って気分が良い

花期もドンピシャ

どの株も多くの花を付けて風に揺れている

今朝は寝不足気味で

気分はイマイチだったけれど

この花たちを見られてそんな気分はリセット

もうそんな事はどうでも良くなった

 

花崗岩の岩間を縫うように続いている稜線道

ここで一旦、鞍部へと下降を始める

正面には目指す主峰の観音岳が

意外にも大きな姿で現れる

 

 

 

2008年に訪れた時は

夜叉神峠から入山して観音岳経由で

鳳凰小屋へと下りてしまったから

この景色を見るのはお初という事か

 

鞍部へと下る道すがらには

白砂と奇岩がオブジェの如く現れる

 

 

 

不思議な形の岩は風雪が削り出したもの

冬場の厳しい冷え込みと乾燥で

花崗岩表面の結晶が解き放たれて

真砂となって根元に堆積する

そしてその奇岩に引けを取らないのが

風雪に耐える樹々たち

まるで名のある植木職人の手で

仕立てられたような枝振りをして

真砂の稜線に立ち並ぶ

 

 

 

稜線道は鞍部へと下ると鳳凰小屋への分岐点

ここを観音岳へと登り返す

 

道は一旦北側の樹林帯へと回り込む

寒風は内場になって

林床にはダイモンジソウの白い花

稜線ではそれぞれに合った環境に

花を見る事が出来る

 

 

 

再び風のある稜線道に出る

道すがらには風に強いキク科の花

 

 

 

タカネヒゴタイは高山型なのか?

葉っぱがやけに細い

 

 

 

振り返れば

先程までいた赤抜沢ノ頭が見えて

オベリスクは正しく地蔵様の後ろ姿のよう

 

 

 

岩間には風を避けるように

幾つものタカネビランジと

コゴメグサやトウヤクリンドウが咲く

 

 

 

道はガレた岩場道ですが

滑りにくい花崗岩故に登りはスムーズ

 

7:30

鳳凰山(観音岳)山頂へと辿り着く

 

 

 

やはりここは百名山

幾人もの登山者が屯する山頂でした

 

生憎の空模様故に展望はイマイチ

以下展望写真です

 

 

先程までは見えていた甲斐駒ヶ岳でしたが

今はすっかり雲に隠れて

期待の白峰三山も同様に雲の中

彫りの顕著な大樺沢が

北岳の存在を示してくれている

 

 

 

さて、もう一つのピーク薬師岳を踏めば

鳳凰三山を巡れるのですが

今回は下山の事を考慮してパス

ここから鳳凰小屋へと引き返す事とします

 

山頂から岩尾根を鞍部へと引き返し

7:59

分岐点から小屋への道を辿る

 

 

 

道は意外にも急下降路

今は身軽で然程でも無いが

前回はここをテン泊装備で下って

大変だった記憶が蘇る

 

コメツガの茂る樹林帯を順調に下って

鳳凰小屋へと戻って来た

残っていたテントは4張

あんなに一杯だったテント場が嘘のよう

傍らのベンチで一休みした後

テント撤収

結露も無くて撤収はスムーズに完了

 

再びデカザックを背負えば

重たさがずっしりと身体に圧し掛かる

下山は御座石鉱泉へ

道は緩やかに下り始める

 

 

 

途中、南側の開けた”冨士見”を通過

山頂では見えていた富士山ですが

もうここでは雲に隠れ見えませんでした

 

道は徐々に高度を落として

少しずつ植生の変化も見られる

セリバシオガマは鹿は好まないのか

幾つもの株が林床に見られて

目を楽しませる

 

 

 

北側の開けた”槍見”まで下りて来た

だが、北アルプスどころか

間近な八ヶ岳も見えないような空模様

ただ、傍らにあるベンチに腰掛けると

地蔵岳のオベリスクが

本当に地蔵様のように見えたのでした

 

11:37

燕頭山まで下りて来た

 

 

 

ここのベンチでランチ休憩をとって

御座石鉱泉へ向けて下りだす

緩やかだった道はここまで

懸念していた急斜面の下り道が始まった

 

大きな段差を一つ一つ

ストックでサポートをしながら踏み下ろす

ただでさえ苦手な下り道なのだが

背中の重荷がそれに拍車をかける

 

 

 

こんな急坂を身一つで駆け上がる女性が来た

正しくトレールランナーの出で立ちで

白い艶かしい太股は筋肉隆々

きっと名のあるアスリート

あっと言う間に上部へと消え去った

 

 

 

祠のある旭岳まで下りて来た

ここで一休みと思ったが

数匹のアブがグルグルと付き纏い始めて

とてもそんな気分になれず

自身に虫除けをたっぷりと吹きかけて

逃げるようにその場を離れた

一頻り下ってアブもいなくなり一安心

だが、虫除けをかける前に

タイツの上から数ヶ所刺されたもよう

この時は少しの違和感のみだったが

後日に痒みが勃発してちょっと大変でした

 

 

 

急坂は”西ノ平”の広場でひと段落

北側に林道が続くが

ルートはそちらではなく

東側斜面を登り返す

もう登らないと思っていたが

山行の終盤の登りは辛いものだった

その登り返しを何とかやり過ごすと

なだらかな山稜の道になる

このままの道で登山口へ着けば良いのだが

直ぐに急下降路に切り替わり

ジグを切って尾根を下りだす

疲れ切った大腿筋を庇うように

ストックを突きながら

ゆっくりと脚を踏み下ろせば

少しずつ高度が落ちて行く

標高は1000m台

そう言えばどことなく呼吸も楽になって

手足の末端や頬にも

血液が満たされる感覚が戻って来た

 

 

 

ジグを切る道は下方から

小さな沢音を届けてくれて

湯沢の沢床は近い事を教えてくれる

その沢音は徐々に大きくなって

樹々の切れ間に御座石鉱泉の屋根を見れば

ゴールはもう直ぐだ

 

14:35

御座石鉱泉の駐車場へと

無事に到着です

 

 

 

 

天気に翻弄されて

幾度も予定変更の夏休み山行でしたが

辛うじて天気が持ってくれた鳳凰山

今夏はどこの山域でも快天に恵まれずで

予定変更を強いられた方も多いはず

僅か二日でも夏山を楽しめたのは

ラッキーだったのかも知れません