道志川で山女魚釣り | 気ままにアウトドア

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  自然の中を流離う

2020年4月16日

 

昨年秋、丹沢を訪れた際に目にした道志川

橋上より見下ろした川面には

程好い落差と清冽な早瀬の流れ

如何にも山女魚の住まう渓相に

眠っていた釣り魂を揺り起こされたのでした

生憎、その時節は禁漁期

その想いは冷ますことなく春へ

「山吹の花が咲けば山女魚の季節」と

古の山猟師たちも心踊った季節

麗らかな春が訪れた道志川を訪ねてみました

 

***

 

早朝に道志村入りし

先ずは遊漁券を

国道沿いには幾つか「遊漁証」の幟を見かけるが

どこの販売所も戸を閉ざしたまま

それもその筈

平日のこんな早朝に

来るか来ないか定かでない釣り人の為に

門戸を開く販売所は少ない

 

これまでの長い釣り人生では

夜も明けぬ早朝に販売所の門戸を叩き

寝ぼけ眼の主人から

釣券を買った事は数知れずでした

お互い口には出さないが

「こんな早くに叩き起こしやがって」と思う主人と

「早朝から申し訳ない」と思う釣り人

釣りは早朝が勝負時

販売所も釣り人もそれは暗黙の了解で成り立っている

 

そんな中の販売所の一つ

和出村を通りかかると

河西屋さんに灯りの点りが見えた

どうやら家人は起きているもよう

訪ねると女将さんが気持ち良く応対して下さり

遊漁券を無事に購入することが出来ました

これで準備万端

後は釣りをするだけです

 

和出村の釣り人用駐車場に車を停めて

早速、道志川の流れを覗き込む

水は相変わらず清冽で

魅惑的な流れは変わらずだった

昨年秋の気持ちの昂ぶりが甦る

 

身支度をして河原へ下りる

気温は2℃

朝の冷んやりとした空気が漂い

流れの水音が心地良い

竿に仕掛けをセットする

釣法は渓流釣りでは伝統的なミャク釣り

浮子は使わずに糸と錘と鉤だけのシンプルな仕掛け

中程に毛糸の目印を付けて魚信(アタリ)を見る

渓流の水深は千差万別

その都度浮子を調整する手間はいらない

 

鉤に餌(ぶどう虫)を刺し付けて

流れに立ち込む

冷んやりとした水の冷たさが

ウェイダーを通して伝わってくる

ウールのソックスにすれば良かったかな?

一瞬、そんな事を思ったが

瞬時に思考回路から消え失せる

 

先ずは第一投

落差40㎝程の落ち込みは白泡を点て

深みから勢い良く瀬頭へと流れ出る

釣り糸は落ち込み右の巻き込みを一回りして

流心の流れに乗って瀬頭へと吐き出された

目印には何の反応も無い

第二投、第三投と繰り返すが

仕掛けは何の反応も示さずに流れ下る

直ぐさまその上手へポイントチェンジ

落差も深みも同じようなものだが

左側の石下に洞があるように見える

洞は渓魚にとって退避場所のようなもの

魚が釣れる確率は高いのだが

ここも仕掛けは虚しく流れ下るばかり

「ヤマメよ、いったい何処にいるんだ」と

独り言を言って次から次へとポイントを探る

 

 

 

落差が落ちた石裏のポイント

何の変哲もない淀みで初めて目印に反応が出た

コツン コツンと二回

錘が底石を叩いたのだろうと思うほど微妙な感触だった

仕掛けを抜き上げると鉤に餌が無い

ここで初めてアタリだったと気付いたのだ

一年振りの渓流釣り

釣り感の鈍りは否めない

気を取り直して仕掛けを再投入

同じ流れを幾度か流してみるが

そのポイントで再びアタリが来る事は無かった

 

渓魚は一度不審を感じると

洞に身を潜めてしまう

警戒が解けるのは数時間後

警戒心が強い者は翌日と言う事も良くある事だ

 

 

 

次から次へポイントを替え釣り上がる

入渓してから2時間程だろうか?

上流側に釣り人の姿が見える

そろそろ場所替えのタイミングのようだ

車へ戻り少し上流部へ移動してみる

 

車道から眺めると

南東側に山が迫る日陰の流れがあった

今日はまだ誰も入渓して無いようだ

ここは穴場かも?と思ったが

それもその筈

急な間知ブロックは足場も無く

河原へ下りる術はない

辺りを見回すと下流側に太い蔓草が一つ

河原へと垂れ下がっている

多分枯れ蔓だろうと思って近付いて見てみると

確りと生きた状態で根付いている

ふふふ!

天然のフィックスロープ

蔓草に縋って無事に河原へ下りる

 

先ずは大石裏の緩やかな流れに第一投

仕掛けは大石を巻いて

淀みの中を複雑に翻弄されて流れ下る

その直後、ククンとアタリが来た

いるいる!

仕掛けを引き上げてみると餌がしゃぶられた状態だった

水温が低い為か魚の活性も低いのだろう

おちょぼ口のように口先でしゃぶしゃぶして

大胆に食らいついてはくれなさそうだ

 

新しい餌を付け直して第二投

再びクククンとアタリが来て仕掛けが止まった

「むむむ! 来たぞ」

一呼吸を入れて竿先を煽る

一瞬、水中に白い魚体が光り竿先がしなる

乗った!

竿先からピンと伸びた糸が水面を走り出し

手先にブルブルと振動が伝わってきた

竿を立て糸を張る

魚は深みに逃げようと抵抗を企てる

そうだ、これが釣りの感触だ

忘れかけていた感覚が今手の中に甦るが

魚の抵抗は長くは続かなかった

水面に顔を出すと抵抗はあっさりと終わりを告げる

釣れたのは20㎝程の尾鰭の揃ったピンシャンヤマメ

 

 

 

久しぶりに見る銀色の魚体とパーマーク

嘗て釣りに夢中だった頃

この美しい魚体を求めて

各地の渓を釣り歩いたものだった

 

同じポイントで仕掛けを再投入

果して、二匹目のドジョウ・・いや、ヤマメはいるのか?

上手からゆっくりと仕掛けが流れ下る

クン クククン

再びアタリが来たが鳴りはそれまで

渓流釣りはそんなに甘くない

 

気を取り直して一つ上手のポイントへ移動

仕掛けを振り込むと直ぐに反応が出た

クン ククン クククク・・・

大胆なヤツだな~!

一呼吸を入れて合わせを入れる

竿先がしなり糸が走る

しかし

あっさりと魚は水面に姿を見せた

こちらもまた20㎝程のヤマメ

ですが、こちらは尾鰭の丸い放流もの

放たれてからまだ日が浅いのでしょう

自然に磨かれた警戒心と力強さは

まだ備わってませんでした

 

 

 

川の流れは向きを変え

日の差す河原へと進んできた

目ぼしいポイントに仕掛けを振り込むがアタリは無い

透明で清冽な水は水底の石まで見透かせる

明るい日差しの中では

透明なはずの釣り糸も魚には見えるのだろうか?と

ハリスを0.3号の極細糸に替えて

橋脚基部の流れに投入

やっぱりアタリは来ない

直ぐ上手の大岩に洞を見つける

仕掛けを入れて数秒後

アレ?仕掛けが動かないぞ

根掛かりかな?

あ~ぁ、地球を釣っちゃった

そう思って仕掛けを引き抜こうとすると

ブルブルと竿先がしなり糸が動き出す

あっ、釣れてる

魚は洞へ逃げ込もうと深みに走る

そうはさせじと竿を立て糸を張る

清らかな渓で繰り広げられる魚と人との闘いは

あっけなく人に軍配が上がる

極細の糸の為に取り込みはデリケート

タモ網を出して引き寄せると

魚は20㎝程のイワナでした

 

 

 

丹沢在来のヤマトイワナではなく

移植もののニッコウイワナ

尾鰭がピンシャンしてるから

この渓で育ったものでしょうか?

美しい魚体でした

 

 

 

 

日も高くなった頃

河原の大石に腰掛けて小休憩

見上げると北西側には御正体山

一昨日の雪が冬枯れの林床に白い

雪国の雪代のように濁りは無いが

ここも雪解け水が流れ込んでいるのは確か

道理で春にしては水が冷たい訳だ

あの雪が消えるまで魚の活性は暫しのお預け

ヤマブキの頃の大胆さはもう少し先のようだ

 

キブシ

 

 

川辺に迫る山裾には

ヤマザクラやキブシの花

堤の先の田圃では田起こしが始まって

農家の方も苗代の準備に余念がない

 

こんな麗らかな春なのに

 

世の中は大変な事になっている

遂に緊急事態宣言が全国へと発令されてしまった

山笑う季節なのに・・・

 

そんな折

気になるメッセージを一つ見つけた

一般社団法人CAJの配信する

野外に出るときに 5つのガイドライン

(リンクしてます)

 

野外活動関係の多くの団体が

同様のメッセージを配信しています

今回の騒動は長期戦を強いられそう

どうか心と体が疲弊してしまう前に

終息が訪れる事を願います