4:00に起きる、外はまだ暗いが周りのテントからはゴソゴソと出発の準備の音が聞こえる。シュラフを畳み朝食を摂る、辺りは大分明るくなってきた。
5:00を回ると日の出も近い、テントの外で日の出を待つ。
5:13に日の出を迎える、雲海の上に顔を出した太陽が今日の晴天を約束しているようだ。山上で何度も日の出を迎えていると感動が薄れて行くのは仕方のない事なのか、以前のような気持ちの高揚感が訪れない。
立山や剱がモルゲンロートに染まっている、爺ヶ岳の姿も良い。
テントを撤収し出発する。
高茎草原のお花畑の道を鹿島槍へ向かって進む、高山植物の盛期は過ぎてしまったが、まだまだ花を楽しむ事が出来る。
右方を見ると雲海の上に山々が頭を出している。頚城山塊から奥志賀、浅間、奥秩父、八ヶ岳、富士、南アまで見える。
南から時計回りに穂高や槍は勿論の事、薬師、立山、剱に毛勝山まで見渡せる。
道は草原からザレた稜線の登りに変わる、布引山の登りだ。
あまり傾斜の強く無い歩き易い登りだ。
布引山山頂はなだらかで、ピークらしい盛り上がりを感じないので鹿島槍へ続く尾根の一角という感じだった。
今日の好天で展望は最高だ、暫し展望を楽しむ。
左が蓮華岳 右に針ノ木岳 奥に槍ヶ岳 手前の稜線には種池山荘
鹿島槍への登りを開始するが景色に見とれてなかなか進まない、少し登っては振り返り、写真を撮る事の繰り返しだからだ。
ゆっくりながらも山頂に到着する。
山頂には沢山の人がいた、360度の展望とはこの事だと言える展望だ。
ここへ来て、初めて八峰キレットから五竜岳へ続く稜線が見えた、今日、最大の山場になる所だ。
北峰に向かって吊尾根を鞍部まで下る、こちらからの姿の方が槍と言う名に相応しい姿をしている。
ザックを北峰との分岐点にデポしカメラだけ持って北峰に向かう。
やはり空身は楽だ、走ってでも登れそうな身の軽さに感じる。
北峰山頂には誰もいなかった、狭い山頂の北側はスッパリと切れ落ちた鹿島槍北壁だ、下から絶えずガスが湧きあがってくるが、時折切れるガスの隙間から不気味に白い雪渓が見え隠れしていた。
やはり夏山の特徴で、この時間になるとガスが湧きあがりだしてくる。
これから向かうキレットには、絶えずガスが懸ってきていて全貌が見えなくなってきた。
ザックをデポした分岐点まで下る。
いよいよキレット通過の始まりだ。
** (続く) **