山中大介さん
 NHKラジオの朝4時からの「明日へのことば」という番組。それを若い人の目に留まるかと思い書き起こしされている『明日へのことば』 そのブログをもとに編集しました。

2019年10月23日水曜日

山中大介(街づくり会社代表)  

     ・【心に花を咲かせて】庄内の自然と暮らしをデザイン

 山形県鶴岡市の畑の真ん中に、その地域らしい田園風景を売りにするというホテルができて話題を呼んでいる、という事で興味を覚えました。設計は、建築の分野での国際的な賞プリツカー賞ほか数々の賞を受賞している坂 茂さんです。紙の建築で知られている方で、坂 茂さんが初めて手掛けたホテルだという事です。勿論その設計も話題の一つでもあるのですが、ほかのホテルとは一味違うのは街づくりのために建てたというホテルのコンセプトです。東京から移住した、まだ30代という山中大介さんが、街づくり会社を作るために、10万円という手元資金と情熱で23億円という資金を集め、地域活性化の手始めに手掛けたものだという事だそうです。殆どゼロからのスタートでどうしてそんなことが可能になったのでしょうか。ホテルのそばには子供の心をはぐくむ施設を作り、地元の基幹産業の農業を強くしようという事で、地元の有機物質をつかった自然循環型の農業も始めていると聞きました。短期間で次々に事業を起こしてる山中さんに、その意図と実現への道のり、目指すもの、の話を伺いました。
 

紹介のあと、お話が続きます。
 
 いまから5年前に移住を、こちらに来て、地域の街づくりの課題に自分が何か役に立てることはないかという事で、話をする中で自分が街づくりの会社を作ってやろうという事で、最初に提案したのがホテルを田んぼの真ん中に建てるという事でした。人が庄内に来るきっかけからまず作らないといけないと思いました。地方の田園風景を売り物にすることによって、この場所に来るきっかけになるのではないかと思いました。

 今年34歳です。夢のある街づくりとか、夢のある計画をきちんと話せれば、お金というものは必然的に集まるという信念を持っています。計画のスタートも移住とほぼ同時期でした。提案自体が地域の課題の本質をとらえているという事で、耳を傾けてもらえたと思います。最初はなかなか受け止めてもらえませんでした。僕は夢を語る事、共感者を募る事、やり切ることに僕自身が信頼に値する人間であるかどうかという事、この3つだと思っていまして、ひたすらやり続けたからだと思っています。

 資金は基本的には出資です。地方都市においては、直面する問題は消滅するという事です。どのようにして消滅リスクから脱却するかという事が最大のテーマだと思っています。まずは、地域の可能性のある消滅することを低減すること。次には、中長期的なキャピタルによるメリットを得てゆくという事を訴え続けました。
 

 こちらに来たときには、バイオテクノロジーをベースにした会社に就職しましたが、自分の価値が生める形で地域に貢献したいと思いました。会社での仕事について、ショッピングセンターの新たな開発はいらないのではないかと思いました。今の大企業はお金が目的で、お金を儲けるためにはどうするかということで、非常に人が住む社会を逆進化させると思っていて、辞めるという事を決意したのが28歳の時でした。課題を解決する人生を歩みたいと思っていました。

 ホテル、児童館、農業も並行してやっています。課題を解決するための事業を、今4つありまして、ホテル業、教育業、農業、人材紹介業を同時進行的にやっています。人が豊かに生きる社会を、もう一度デザインし直すという事をやってゆく事だと思っています。未来に対して、きちんとみんなが希望を持てる状態で、どのように人、もの、金のバランスをとってゆくのか、という事が重要だと思っています。

 

 新しい社会づくりを山形庄内に実現したいと思っています。庄内の人はチャレンジ精神は持っていますが、最初の入り口のハードルは非常に高いです。入り口に入ると、非常に大胆な判断をされる民度、文化度の高い地域だと思っています。庄内藩の教育内容を含めて歴史が証明しています。江戸幕府は朱子学を奨励しましたが、危険思想だといわれた荻生 徂徠を採択したのが日本で二つだけで、滋賀の井伊家と庄内藩酒井家で、独自の文化を作り続けてきました。戊辰戦争では最後まで残って戦った藩の一つでもあり、賊軍となったが「沈潜の風」という言葉でこの地域の気質を表している。

 現在23億円集まりましたが、あと10億円単位で増えてゆくと思います。うちの会社では、資本主義のルールを使っていかに会社を社会と同一化をするか、という事に対してチャレンジしています。地域の40の企業にご支援を頂きました。鶴岡は13万人で毎年1.数%減っていっていますが、ホテルを作ることによって滞在人口も増えます。児童館を作って、0~12歳を対象にした子どもの遊びの空間と学びの空間を作って、子ども同士のコミュニティーもできるし、地域の大人、企業との関わりもでき、普段は絶対会うことがないような出会いも生まれます。遊び方も、こどもたちが自分で考えるトレーニングもしています。放課後の利用方法も、もっともっと増えるような方法も考えています。

 農業にも力を入れていて、山形庄内地方から日本の農業を持続可能にする、というぐらいの目的でやっています。
日本の農業を解決しなければいけない課題。
①農業経営の実現
②環境保全の意識を向上する。
③新規参入障壁を低減する。

①農業生産、自分たち自身が強い農業生産方針として自立する。
②農業人材を育成する学校をつくる。
③有機農業をしやすくするハードウエア ロボットの開発。
この3つを同時進行しています。
5年、10年先には大、中規模農業が増えてくると思っていて、農業経営者をつくる学校を、鶴岡市と一緒に来年立ち上げることにしています。有機農業でないともはや農業は成立しないというぐらい、今や買取価格が安すぎて経営できない。2年間ホテルを改造した寮に住みながら農業を学んで、卒業後の進路として地元への就農のための土地の確保などすべて鶴岡市、JAの協力のもと進めるという強力な体制で、就農後のケアを含めてパッケージされていて、有機農業を目指す人にとって夢のようなことだと思います。

 地方都市の一番の基幹産業は、一次産業です。一次産業を強くしていき、それを基盤にして、地域の個人の方々が当社に投資ができるところにもっていきたい。新しいファイナンスの形を構築していき、強い会社にしていきたいと思います。根底にあるのは、自分自身が世の中に対して価値を生みたいと思っています。米などは、加工米をふくめて海外マーケットを狙って行けるのではないかと考えていて、有機農業がマーケットを拡大すると思っていて、山形庄内から生産品、人材を送り出してゆく事が必要だと思っています。
 

 初志を忘れてお金を目的としてはいけないので、お金を手段としてとらえ続けながら地域、社会をきちんと前に進めるための投資、事業活動していく事が必要なことだと思います。
 

 最近、ありがとうと言われる機会が増えてうれしいです。

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スイデンハウス

 

ガラスの渡り廊下の左手は共用棟、右手は宿泊棟(Y棟)で、会議室も完備。宿泊棟は、H棟、G棟、Y棟の3棟があり、羽黒山、月山、湯殿山の頭文字を冠している