森下敬一 『食べもの健康法』 

プルーン

森下敬一博士

お茶の水クリニック院長

国際自然医学会会長



●プルーン

 長寿村の食生活を比べてみると、いくつかの共通点があることがわかる。それもそのはずで、人間の体の自然性を保つ原理はただ一つだから、その自然性を左右する最大の要素である食生活は、本質的には同じものになるわけだ。


 その共通点の一つとして興味深いのは、世界有数の長寿村であるコーカサス(ソ連)とフンザ(パキスタン)で、プラムが盛んに食べられていることだ。それも、健康で長寿なのはこのプラムのおかげ、という意識を持って愛用されている。私の訪れたコーカサスでは、プラムを「命の果実」と呼んでいた。

 このプラムを乾燥させたのがプルーンである。プルーンは、アメリカではミラクル・フルーツ(魔法の果実)と呼ばれて、大いに珍重されている。
その第一の理由は、すぐれた便通効果を表すためだ。肉食には便秘がつきもので、そこから重大な慢性病も引きおこされるから、プルーンの存在は貴重なわけだ。


 プルーンがめざましい緩下作用をあらわすのは、ほどよく含まれている自然の糖分と、豊富な酵素成分の働きによるものと考えられる。

 このためプルーンは緩下食であるだけでなく、同時に速攻のある疲労回復食ともなる。

 肉食とは切り離しても、プルーンはなかなか有益な食品だ。最大の特徴は、カルシウム、リン、鉄、カリウム、ナトリウム、カリウムなどのミネラルが大変に多く含まれること。

 そのため、貧血や生理不順の解消、高血圧の防止、肝臓・腎臓の機能強化をはかる、といった幅広い薬効をあらわす。

 ビタミンAを始めB1、B2、D、ニコチン酸なども豊富なので、美容効果も著しい。吹き出ものやシミを治し、肌にうるおいを生むのだ。プルーンが果物らしからぬ薬効を生み出すのは、乾燥させることによっていっそうすぐれた成分組成となるプラムの特性にある。

 プルーンの故郷はコーカサスで、2000年も前から食用とされていたらしい。そこからヨーロッパ全域に広がって、「西洋の梅干し」ともいえる存在となっていく。それがゴールドラッシュ時代にアメリカのカリフォルニアに持ち込まれ、そこの気功?風土が奇跡的に適合したため、今日では、世界の生産量の70%をカリフォルニア・プルーンが占めている。

 今、日本で市販されているのもそれだ。
一般に出回っているプルーン製品には、原型のプルーン、プルーン・ジュース、プルーン・エキスがある。
プルーンは、そのまま食べるほか、適当に水を加えて20分ほど煮て汁ごと冷やして食べるのもオツ。
プルーン・エキスはそのまま舐めたり、パンにつけて食べ
るなど、いろいろな使い方がある。



    (了)