![小川規三郎](https://stat.ameba.jp/user_images/20170209/08/aoiwasi-k135/a1/0a/j/t02200271_0600073813864508289.jpg?caw=800)
小川規三郎さん
NHKラジオの「明日へのことば」の番組を、若い人の目に留まるかと思われ投稿を続けていられる方のブログより
2017年2月9日木曜日
小川規三郎(博多織職人・人間国宝)
・時代を生かすよろけ模様
昭和11年生まれ、福岡に古くから伝わる博多織に携わってきました。博多織は厚み、張りがありながらしなやかな感触をもち帯や着物、相撲のまわしなどに利用されています。もともとは絹の手織りで作られていましたが、今では各種の糸を用い機械織りが大勢となっています。 小川さんは昔ながらの手織りと良質の素材にこだわり江戸幕府に献上された高級品献上博多織の伝統を守り続けています。戦後、父の厳しい教えに耐え、帯を担いで行商しながら家業を守り通したという小川さん、今では伝統的な直線模様だけではなく、よろけ模様という曲線を生かした独自の織りの世界を編み出しています。
聞き手の紹介のあと、お話が続きます。
相撲のまわしは博多織です、絹が4kg近く必要になり硬く織ります。博多は昔は中国との交易があり、向こうの物資、文化が日本中に広がってゆく、古い歴史があります。
最初は陣幕、陣羽織、旗指物などをつくっていた。機械の技術が進んで最近は機械の方がいいです。手織りは修業期間が長い、子供のころから厳しく指導を受けます。
素材にも拘ります、良い物を作るには良い素材を使わないと良い物はできません。糸は生きているんです、真空包装で箱に入れておくと呼吸できないから絹が弱ってきて、菌が発生してカビが生えて変色の元、糸全体が駄目になってしまう。呼吸ができる様な状態にしておかないといけない。一番良いのは身につけること。
15歳からこの仕事に就きました。長男で家の手伝いをしました。父からは見て覚えといわれて、物差しでよく殴られました。自分で経験する体験すると忘れない、教わると忘れます。
父が亡くなってから、これが親父の言わんとしていたことかとか、もっとよく見ておけばよかったとか、反省とか悔しいことばっかりで、それから20年間はいずりまわりました。父はあまりものを言わず仕事一筋でした。
45歳の時に、父がなにか欲しいものはないかと初めて優しい言葉がありました。父が亡くなる間際、その時のことを思い出して、欲しいものがひとつだけあると、父の手を握ってこの手が欲しいといいました、それだけでした。父は、その時生まれて初めて優しい顔をしていました、そのことはしっかり覚えています。
それから新しい修行、20年修行をして文化財をもらいました、その父がいなかったら文化財になっていません、一介の職人に終わっていました。亡くなっても父が生きているような気がします。
献上博多織を代々受け継いできました。昔、子供のころは、着物はもってのほかだった。国賊ものだと言われた。戦争中は平和産業は虐げられていた。
父親が死んだあと、行商に行って踊りの会があると言えば担いで行って入れてもらったり、お茶の会があると言えば、後で見てもらったりして担いで歩きました。今思うと、物を作るよりはいい修行だと思いました。
冬空気が乾燥するので、やかんで蒸気を出して、機の機械は木で、周りは泥壁で、土間で静電気はおこらない。(暖房は入れないで窓を開けて空気を入れ替えるだけ)静電気はけばだってくるし、ごみを呼び込みほこりを織り込む。
模様は京都西陣織は日本一だが、博多は縦糸で模様を出すが、京都は横糸で表現する。横糸を変えればいいので何十何百色も使えるが、博多織はいったんセットするとそこしか出てこないので、横糸は一色です。
斜めになっていいんじゃないかと考えて、川が流れるようによろよろとしてみたら、良いものができました。新しいものにチャレンジするのも面白いものです。これは博多帯ではないと、昔だったら相手にしてくれなかったと思う。
品評会に出したら良い評価をしてもらった。お客さんが付いて売れ出して、みんなが真似し始めました。
山登りが好きで山に行ったときに自分の心が大きくなり、頭が空っぽになり自然のいろいろ現象があり、その中から模様などをいろいろ考えます。おしゃれをする、好奇心を持つこと、それに対して勉強する。
ものつくりはいかに良い物を作るかです、自分なりの目的、満足できるものに近づけるか。絹糸、最近は外国産の方がいいものが出てきた。私は国産のものにこだわるので、養蚕家のところに見にゆきます。
繭は春と秋にとれるが、春は黄緑の葉を食べ優しい柔らかい絹糸になり、着物に向きます。秋繭は葉の緑が濃くて油が多く強い絹糸になり羽織に向くんです。絹糸は細くて軽くて強い糸になります。
伝承は受け継ぎ、伝統はその時代その時代のもに生き残ってゆくもの、色もデザインも変わってゆく、伝統は新しいもの、生き物です、そう思います。昔は花鳥風月、風景の綺麗な物を持ってきたが、私は幾何学模様で出してみました。流行を敏感に感じ取ることが大事です。
2020年には200カ国近くが参加することと思いますが、国旗を参考にして、着物とか帯に生かしたい、私はカナダの国旗を参考にして帯を出しています。
「にこにこころころはきはき」 心に笑顔をもつ、よく体を使え働け、はっきりものを言いなさい、駄目なら駄目とハッキリという。(濁しては駄目)
「カメとウサギ」話を題材にしてウサギは目的を失ってしまっている、目的を忘れるなと言っています。
自分自身に目的を持って、ノルマを課すことですね。
経験体験は最大の師匠です(いろんなものを見て、いろんなものを聞く)
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
![帯](https://stat.ameba.jp/user_images/20170209/08/aoiwasi-k135/2f/9c/j/o0200013113864511644.jpg?caw=800)
博多織
![五色献上](https://stat.ameba.jp/user_images/20170209/09/aoiwasi-k135/93/59/j/o0200020013864513942.jpg?caw=800)
五色献上