特性のあるお父さん | マイペースな日々

マイペースな日々

『中学生 いじめと学級崩壊』というタイトルを変更しました。
息子は2024年に大学生になりました。

あおいです。

 

息子のことを「普通じゃない」と仰るEくんのお父さん。私は彼こそ「特性」のある方ではないかと思いました。

 

「やめて」と縋るE母と、それを無視して「息子の普通じゃないところ」をまだまだ語るE父。
深く深く笑顔で頷く夫は、一体何を考えているのでしょうか。
E父の独演会の場所でもないので、私も立ち上がることにしました。

 

「すみません、うちの息子は誰かが怒られているのを見るのも耐えられないところがあって…」
「え? 繊細なお子さんですね!」
「だからEくんのことも、さっさと許してしまうことで、自分がラクになりたいんじゃないかと思います」
「何をされても許すっておかしいじゃないですか?!」
「私から見ても本当におかしいですが、息子にとっては普通です」
「仕返しもしないなんて!」
「仕返ししたら、今度は自分が怒られるので、もっと耐えられません」
「大丈夫ですか、おたくの息子さん」
「大人の理屈からは計り知れませんが、とりあえず今は、友達をやめる方がストレスになると言っています」
「理解できない!」

 

E父に悪気がないのは、わかります。
脊髄反射で言葉を返してくるだけなのです。
その言葉が、この場所に相応しくないことが、E父にはわからないのです。

 

「私どもとしましては、息子の心を守ることを一番に考えているので、息子がEくんと仲良くしたいと現状言っているのなら希望は叶えさせます」
夫が言いました。
「ここで大人が無理強いすることで、息子が孤立したりストレスを感じたりして病気になってしまうことの方が恐ろしい。特性がある子が二次障害を発生させやすいことは、あなたも当然ご存じですよね?」
「うつ病とか!」
「そうですそうです。そのうち友達ではいられないなと二人が思えば、自然と距離はあくものですよ。Eくんの特性から暴力や暴言を抑えこむのが難しそうなのは理解しましたし、その改善を早急に求めるのは酷でしょう」
「分かっていただけますか!」
「そのかわり、息子がEくんのことを苦手だと思うようになったら、距離を置くようになりますので、それは受入れてください」
「もちろんです!」

 

その後、Eくんのご両親は職員室に向かい、息子に謝罪をされました。

校長室に残った私と夫は、出されたお茶を黙って飲みました。


しばらくすると、息子と担任の先生、学年主任の先生、生徒指導の先生が入ってきました。

「本当に、この度は申し訳ありませんでした」
先生一同が頭を下げます。
「相手の親御さんもあんな感じで、不愉快な思いをさせてしまって…」
「いいえ、先生方には感謝しています、ありがとうございました」
夫が答えました。


「Eくんは暴力や暴言を抑え込めない人だと、息子が信頼しておけばいい話です。その上で仲良くすることは可能です」
「お父さんの仰ることは立派ですが、中学生は一筋縄ではいきませんよ」
「ははは、先生を頼りにしています」

 

息子はEくんと別れ際に握手をしたそうです。
「つねったり回し蹴りはしないって言ってた。足を蹴ることはクセになっているけど、やめられるよう頑張るって」
「信じられない」
「Eくんは嘘はつかないよ。約束を守るのが出来ないことはあるけど、本気で言ってると思う」

 

夫と息子の思考は、こういうときだけ似ています。
私はイヤな人とは一ミリも付き合う価値がないと思っているタイプです。

「約束を守らない人」だと信頼して仲良くする、とか、私には正直なところ意味が分からない。

 

私は人として未成熟なのでしょうか。