母がこそこそと部屋の扉を開ける。



そして小声でつぶやくように言った。



「……あのね。(父親が原因で)どうしようもなく


死にたくなったら先に言ってよ。


お母さんが、あの人…殺すから。…ね?」




衝撃的な言葉だった。そして、ああ…



自分よりはるかにつらい思いをしてる母親に



もっとつらい思いをさせてしまったんだなぁ…と感じた。




母の前で死にたいなんて言葉はもう出してはいけない…


そう、強く思った。






今でも母のあの言葉は忘れられない。




たまにふと思い出してしまう、過去の出来事。



そして我に返ると、日常の中では当たり前のように


通り過ぎてしまうけど…自分の家庭って




さすがに普通ではないんだろうな、と。








母はまず学費のことを言った。



「支払いがつらいなら、お父さんとお母さんで


頑張って払うよ!?」



そういう問題じゃない。それ以前に、生活が厳しくて


少ない額だったけど、母にお金を貸して欲しい


言われたこともあったので、それは無理でしょう?


とも心の中で思いつつ。



学校選びで安易な判断をした自分も悪かったが、


正直不得意な分野のさらに専門的知識の勉強に


まったくついていけなかった。



「限界の8年間通ったとしても卒業できないと思うよ?」






…そんな話が続いて、ある程度話をしたところで



私の決意が固いことを理解してくれたようで



「お父さんに話してみる。」



と言ってくれた。





それから少しして、そんなに嫌なら


辞めればいいんじゃないか?


と安易に返事をされたと母から報告があった。




そして、それから数日後の夜。







ぽかーん。








驚きを通り過ぎて、呆然としてしまった。



それとともに、頭の中がすっきりと、



肩にのっかっていた重たいものが



ぶわっと軽くなるような感じがした。







その言葉に引っ張られるように、




全部を辞めてしまうことを決断する。






さすがにお金はないので家は出れなかったけども。









まずはアルバイト。




辞める予定の月を店長に伝え、新しい職探しへ。





そして問題の学校の方。




これはさすがに親に相談しなければいけない。





でも、ただ「辞めたい」じゃぁ納得してくれないだろう。





母親に言いたくなかった隠していた気持ちも伝えなければ、



わかってはもらえないだろう。






直球な言葉になってしまうが









「もう今ある何もかもがつらい。



家(父親)もバイトも学校も…




正直死にたいって思ってしまう。」