翌日私が出社すると

机の上に

「浅見」の名札が置いてあった。

 

真新しいその名札を見る私に

社員が言った。

 

「奥さん

今日から皆名札をつけるんだそうです。

所長がそれみんなの分作ったみたいです」

 

「そう…

6人しかいないのに

今さらなんで名札なんだろうね」

 

「それがですね。

所長がこれを皆に渡すときに言ったんです」

 

「なんて?」

 

「今後は奥さんのことを

奥さんとは絶対に呼ぶなって」

 

「え?」

 

「奥さんのことは

今後は浅見と名前で呼ぶこと

だそうです」

 

なぜ夫は

そんな小さなことでさえ

私の心を傷つけたいのか。

 

私が休めば

仕事をしに来いと言い

私が仕事に来れば

こうやって人の心を無神経な

言葉や態度で容赦なく刺す。

 

なさに生殺し。

 

お前はここで働く社員だけど

俺の奥さんではないからなと

言いたいのだろう。

 

そこに夫が入って来た。

 

「浅見さん

ボケっとしていないで

早く事務所の掃除を

していただけませんか?」

 

そこにいた社員と私は

驚いて一斉に夫の顔を見た。

 

夫が私に対して敬語で話したから。

 

もちろんそんなことは

今までにしたことがないから。

 

「どうしましたか、浅見さん

早くやっていただけないですかね」

 

状況が呑み込めない私は

急いで掃除を始める。

 

事務所の床のモップがけをしていると

夫は社員に仕事の段取りを話し始めた。

 

「だからさ、ここは俺こうしたほうが

いいと思うんだよね」

 

敬語じゃない…

 

社員には今まで通りに話している。

 

敬語を使われるのは私だけなの?

 

パワハラ。

 

いじめ。

 

いやがらせ。

 

最低で幼稚な手段。

 

しかも社員みんなが見ている前で。

 

普通なら

なにやってんのよと

反論したいところだが

この時の私は夫のことが怖くて

やられるままだった。

 

「浅見さん

掃除が終わったら

この見積書大至急作って

先方にファックスしていただきたいのですが」

 

あなたは

皆の前でこんなことまでして

私のことを苦しめたいの?

 

私があなたに

いったいなにをした?

 

悪いことをしでかしたのは

貴方の法でしょ?

 

以降

事務所の中では

私に対する夫のパワハラが

これでもかというくらい続いた。

 

 

 


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