美織の高校進学の準備は

だいたいのところは心得ている。

 

悠真の時で経験済みだから。

 

でも

我が子の大学進学の準備に関しては

ほとんどのことがわかっていない。

 

普通なら

合格が決まるまでの間に

先輩ママから情報を仕入れるとか

 

同級生のママ友と話すとか

そんなことでこの日まで

だいたいのところを

把握しておくのだろう。

 

しかし私は……

 

そんなことをできる状況で

なかったことは言い訳にはならないが

それらのことが全くできていなかった。

 

だめ親だ。

 

一生に一度の大学進学。

 

我が子が私の手を離れ

全く別の場所で生活をスタートする

その準備の大事な時期なのに。

 

父親に至っては

その進学費用を

出すとか出さないとか

親としての責任を全うすることを渋り

自分と不倫相手には高級車。

 

最悪の両親。

 

こんなダメ親に育てられる

子供たちに本当に申し訳がない。

 

精一杯……

 

今の私にできる精一杯をしよう。

 

死ぬ気でやってもそんなのでは

全然全然足りないのだろうけど。

 

今の私にできる精一杯を

我が家から巣立つ

長男悠真のために。

 

 

 

 

私は東京で生活したことがない。

 

右も左もわからないとは

全く持ってこのことだと思う。

 

引越し当日

私と悠真と2人で東京に行くとして。

 

なにもわからない東京で

店を探し

家財道具を一から揃えるには

大分時間がかかるだろう。

 

私の体調もある。

 

ではどうする。

 

生活に必要なすべてを

私はここ地元北海道で揃えてから

東京に向かうことに決めた。

 

ニトリ。

 

ニトリなら東京にも店舗がある。

 

私は早速悠真とニトリに向かった。

 

「あの…すみません」と私。

 

「はい、なんでしょうか」と店員。

 

「例えばですね。

ここのお店で買い物したものを

東京のニトリさんから

東京のアパートまで

届けて頂くことって可能ですかね……」

 

「え?

ここで買われた品物を

東京のアパートに配達するって

ことですか?」

 

そうではない。

 

それだと配達料がとんでもなく

かかってしまうではないか。

 

「いえ、そうじゃなくて。

このお店で品物を選ばせて頂いて

お支払もしますので

東京のお店の品物を

東京のアパートに配達して

頂きたいんですけど

無理でしょうか」

 

「あーわかりました。

ちょっと確認しますので

少々お待ちください」

 

「はい、ややっこしいことで

申し訳ありません」と私。

 

「なに?お母さん、最初なに

言ってるか意味わかんなかったよ」

と悠真。

 

「いいの、いいの。

それができたら

こちらで選んだものを

宅急便とか配達料かからずに

東京のアパートまで

持ってきてもらえるでしょ」

 

「なるほど」と悠真。

 

そうこうするうちに

店員が戻って来た。

 

「大変お待たせしました。

可能だということでしたので」

 

やった。

 

家具や家電や寝具やその他もろもろ。

 

宅急便で東京に送れば

小さな引越しぐらいのお金がかかる。

 

そんなちょっとした引越しのお金すら

2度目の調停を控えた今の私には

ないのだった。

 

「では、いろいろ買いますんで

よろしくお願いします」

 

私は店員に頭を下げると

店内で必要なものを

悠真と吟味し

次々とカートに入れていった。

 

布団

毛布

シーツ

電気毛布

パイプベット

 

テーブル

ハンガー

カラーボックス4個

衣装ケース4個

 

ミニ冷蔵庫

電子ケトル

アイロン

アイロン台

 

フライパン

鍋2つ

おたま

フライ返し

菜箸

お皿各種

お椀

お茶碗

箸立て

スプーンにホーク

ふきんに包丁

洗い物スポンジ

オーブントースター

 

バスタオル2枚

フェイスタオル5枚

お風呂の椅子

洗面器

掃除ブラシ

 

そしてカーテン

 

等々、等々。

 

とんでもない量になった。

 

私と悠真と店員さんと

それらをレジに運ぶ。

 

「これで全部です。

お手数ですがどうぞ

よろしくお願いします」と私。

 

「はい、大丈夫です。

ところでお支払は?」と店員。

 

「2,3日中に……父親が

支払いに伺いますんで

それでよろしくお願いします」

 

「そうですか。

わかりました。ではこちらで計算して

金額がわかりましたら

お母さまの方にお電話で

お知らせしますね」

 

「はい。すみません。

よろしくお願いします」

私と悠真は

深々と頭を下げ店を後にした。

 

「お母さん……

いろいろ買ってもらって

ありがたいんだけど」

 

「ん?なに?」と私。

 

「あんなに買っちゃって

あの……お父さん?大丈夫かな」

 

悠真は進学に対して

お金を出し渋る父親の反応を

心配しているのだ。

 

「大丈夫だよ。

あんなにって言ったって

生活に必要な最小限度のものしか

買ってないよ。

それに赤札のばっかり選んだし。

お父さんダメなんて言わないから」

 

私がそう言うのには根拠があった。

 

そう。

 

離婚調停3回目の私からの攻撃。

 

やっとのことで夫に

進学費用を出すと言わせた。

 

そして

追い打ちをかけるように

進学費用とは何を指すのかという

確認を明確に行っていたのだ。

 

裁判官、弁護士、調停委員の前で。

 

リストも渡してある。

 

今日購入したものは

全てそのリストに書いてあるものだけ。

 

だから大丈夫。

 

「心配ないってば!」

 

私は悠真にそう言って笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 


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