久しぶりに

電話で夫と話した日。


私は夫が子供達のことを

もうなんとも思っていない

ということを思い知った。

 

できれば話すことで

私は夫に父親としての気持ちを

思い出して欲しかった。

 

今はどうであれ

彼は18年間父親として

子供達と一緒に

生きてきたのだから。

 

あの子たちは

夫にとっても

慈しみ育ててきた我が子

なのだから。

 

いつか

思い出すはずと思っていた。

 

しかし

夫は結局、進学資金を出すとは

言わなかった。

 

すでに

不倫相手やその家族達と同居し

新生活を始めてしまった夫にとって

私や子供達はもうすでに

捨てた過去なのだろう。

 

思い出したくない

関わりたくない

もうどうでもいい

そんな存在なのだと知った。

 

新天地を見つけた夫にとっては

それでいいのかもしれない。

 

しかし

捨て去られ

置いてきぼりにされた私たちは

この家族の関係を

過去だなんてまだ思えないのだ。

 

まさに、今まだ

健太郎は私の夫であり

3人の子供たちの父親なのだ。

 

 

 

 

早朝

リビングのカーテンを開けると

凍てついた地面に

容赦ない吹雪が吹き荒れている。

 

いつもよりちょっと早めに

長男悠真が起きてきた。

 

「おはよー」

 

「おはよう。朝ご飯出来てるよ」

 

「うん、顔洗ってくる」

 

美織や健斗も起きてきた。

 

朝食はベーコンエッグに納豆に

夕べの残りの豚汁にリンゴ。

 

すっかり平らげた悠真は

身支度を整えると

カバンの中をチェックした。

 

「忘れ物ない?」

 

「何度も見たから大丈夫!」

 

「これ、お弁当ね。

お茶も入ってるからね」

 

「うん、ありがとう」

 

悠真は

ダウンと帽子と手袋を身につけ

玄関に立つ。

 

「お兄ちゃん!ファイト!」

と健斗。

 

「お兄ちゃんなら絶対大丈夫!」

と美織。

 

「わかってるよー」

 

悠真はそう言って笑顔で玄関を出た。

 

ちょうど一緒に行く同級生が

家の前に着いたところだった。

 

私は長靴を履き

悠真達が角を曲がるまで見送った。

 

今日は悠真の

大学入試センター試験。

 

頑張れ!悠真!

悠真ならきっと大丈夫!

 

私は祈る気持ちで

自分にそう言い聞かせた。

 

けれど本当に

頑張らなくてはならないのは自分。

 

私なのだ。

 

ちらつく小雪の中

悠真と2人の同級生の後姿に

どうか無事センター試験が済むことを

私は祈ったのだった。

 

 

 

 


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