私が集めた証拠品を持って

弁護士事務所を訪れてから数日後

結城弁護士から電話があった。

 

「先生

お世話になってます…」

 

「麗子さん

先日お預かりした証拠品ですが」

 

「はい…」

 

「全部、拝見しました」

 

「全部?あれ全部ですか?」

 

コピーは百枚以上

分厚いファイル2冊分になる。

 

それに私の日記やらなにやら。

 

「はい、全部拝見しました。

それからICレコーダーも

聞かせていただきました」

 

ICレコーダーでの録音は

全部でゆうに8時間分はある。

 

「全部聞いてくださったんですか。

先生お忙しいのに申し訳ありません」

 

「そんなことより

あれなんですか?

あの録音のことですが」

 

「はい…」

 

「私長年弁護士をやっていて

こういったたぐいの録音は

聞くこともあるんですが。

あんな酷い内容のものを聞いたのは

正直初めてでした」

 

…そうか。

 

私は慢性的にひどい目に合い続け

世間的に見て自分が

どのレベルのひどい目に合っているのか

感覚がマヒして

わからなくなっていた。

 

「なんというか

こんな言い方は不適切で

ごめんなさいね。

相手の方々、狂ってるっていうか

なんというか。

言っていることも

めちゃくちゃでひどい」

 

冷静な結城弁護士の

口調がいつもより強い。

 

言っていることが

めちゃくちゃでひどい。

 

良かった。

そう感じていたのは

私だけではないのだ。

 

麗子さん、あなたがおかしい!

常識を知りなさい!

 

義父も、夫も、美加の母親も

その親族も。

 

皆そろって

同じことを言われ続けると

私が狂っていて

皆の方が正しいことを言っている

のじゃないだろうかという

不安に襲われる。

 

ほんとは私がおかしいのでは?

あの頃の私は

ふとそんなことを考えては

不安になっていた。

 

でもそうではないのだ。

 

先生が

こう言ってくださるのだから。

 

良かった…。

 

おかしいのは私じゃなかった。

 

嬉し涙が流れた。

 

「麗子さん

こんなひどい言い分が

堂々とまかり通るようでは

私は弁護士をやっている意味が

無いと言うことです」

 

「はい…」

 

「一緒に頑張りましょうね」

 

この人に弁護をお願いして良かった。

 

私の痛みをちゃんと理解してくれる。

 

私の心にちゃんと寄り添ってくれる。

 

私がおかしいと思うものを

ちゃんとそれはおかしいと言ってくれる。

 

弁護士選びには

実はこれが一番重要なことなのだ。

 

弁護士を探すに当たり

助言をくれた

心療内科の看護婦さん。

 

市議会議員事務所で会った

議員さん、そしてママ友。

 

結城弁護士を紹介してくれた

司法書士会の会長さん。

 

お世話になった皆の顔が浮かぶ。

 

皆がいてくれての私の今だ。

 

 

 

私はやらなくてはいけない。

 

愛する子供達のために。

 

私は戦わなければならない。

 

まずは悠真の大学の進学費用を

確保するのだ。

 

センター試験まで3か月。

 

 

 

 

 

 


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