「麗子、大丈夫。

金目当ての女なんかに

健太郎が本気で惚れるわけない。

ましてやあんな評判の悪い女

選ぶはずがない」

 

「……」

 

「俺

ドルチェによく行ってるっていう

社長連中に

何人か聞いてみたんだ」

 

「……」

 

「美加のこと誉める人は

一人もいなかった。

みんな金目当ての男あさりって」

 

「そう…」

 

「泣くな、麗子。

健太郎は

すぐ目を覚ますから大丈夫だ。

今は美加にちやほやされて

なにも見えなくなっているだけ。

ほら、あいつ所長になって

生活が激変しただろ。

あんな店、健太郎は行ったこと

なかったもんな。

初めて行った高級クラブで

男扱いがうまい女にちやほやされて

今は舞い上がってるんだよ」

 

「うん……」

 

「あんな女本気で相手にする男は

いないってみんな言ってるよ。

信用できる人から聞いてるから

間違いはない。

麗子一途にここまで来たあいつが

今更他の女なんて

ありえないから大丈夫!

一時のことだから大丈夫!」

 

佐伯は

必死にそんな言葉を繰り返した。


 「…うん。…うん。そうだね」

 

しかし

そんな言葉を聞きながらも

私の胸は嫌な予感で一杯なのだ。

 

私の知る限り

夫は後にも先にも

私以外の女性を知らない。

 

そしてなにより嫌な予感の原因は

夫が一途な性格であるということ。

 

そして極端な

世間知らずであるということ。

 

これは簡単には事が収らない

私の中でそんな予感がした。

 

佐伯先輩との

電話が終わり

パソコンを開くと

私は夫のクレジットカードの

利用明細を開いた。

 

夫が休日毎週女と

いろんな店に出かけていると

聞いたからだ。

 

パスワードは夫に頼まれて

私が設定をした。

 

今まで疑うこともなく

開いたことのない

そのページ。

 

すると

夫がゴルフと言って

出かけた休日に

全く違う場所で

買い物や食事をしている履歴が

幾つも幾つもあった。

 

女性が好むブランドショップや

ジュエリーショップの

名前もあった。

 

確かに

夫の裏切りの証拠が

そこにあった。

 

私の心のどこかが死んだ。

 

「俺たちはずっと一緒だ」

 

その言葉を信じて

私はここまでついてきたのに。

 

今でもあなたを愛しているのに。

 

 

 

 


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