その夜

リビングでは

何も知らない三人の子供達が

いつものように食事を済ませ

寛いでいる。

 

「健斗はほんとゲーム下手だなぁ。

そこはそんなじゃダメなんだよ。

ちょっとお姉ちゃんに

貸してごらんよ」

 

長女の美織が

テレビゲームに夢中な健斗の

コントローラーを取り上げた。

 

「なんだよ、返せよ。

僕自分で出来るんだから。

お姉ちゃんより僕の方が

全然うまいんだから返せ。

お母さん!美織が

僕のコントローラー取ったぁ!」

 

「あ、そこ、そんなんじゃ駄目だよ。

美織ちょっとお兄ちゃんに貸せ。

いいからちょっと貸せ。

あーほら失敗。

俺ならクリア出来たのに

美織も健斗もまだまだだな」

と悠真。

 

「お兄ちゃんが邪魔したからだよ。

じゃなきゃ私クリア出来てましたぁ。

ようしもう一回!」

と美織。

 

「お兄ちゃんもお姉ちゃんも

邪魔すんなぁ。

僕がやってたんだから返せ。

返せってばー!

お母さん、ねぇお母さーん

お兄ちゃんとお姉ちゃんに言ってよぉ」

と健斗。

 

 

 

昔と何も変わらない……。

 

我が家の夕食後のリビングは

いつものように賑やかだ。


なんだかんだ言っても

仲良しの三人兄弟。

 

三人の無邪気な笑顔

楽しげな声

それは私の大事なたからもの。

 

元々仕事の多忙を理由に

子供に対して淡泊な夫。

 

元々仕事とゴルフ以外

家庭や子供達に

ほとんど興味を示さなできた夫。

 

夫は

3人も子供がいるのに

学校行事には参加したことがほとんどない。

 

11年間で2回……だろうか。

 

子供たちが

そんな夫と顔を合わすのは

朝と夜のほんの少しの時間だけ。

 

だから幸いにも

子供達は

まだ夫の変化に気付いていない。

 

 

「ほらほら

あなたたち宿題終わったの?

ゲームもいいけど

宿題早く終わらせて

順番にお風呂入ってよ。

もうこんな時間なんだから」

 

私は無理矢声のトーンを上げる。

 

子供達にとっては

いつも通りの夜。

 

 

 

そして

子供達が

それぞれの部屋で

深い眠りについた頃

ようやく夫の車が

家のガレージに入る音がした。