「ねえ、健太郎さん

ちゃんと聞いてる?」

 

私は

ダイニングテーブルで

夕食を食べる夫の顔を覗き込んだ。

 

「ん?え?なんだっけ」

 

「今ずっと説明してたでしょ。

悠真の進路の三者面談。

来週の月曜日の4時から。

いつも学校に行くの私ばかりだから

たまには健太郎さんに行って欲しいの。

裕真の大学進学の大事な話だから」

 

「ん?ああ、わかった、わかった。

時間空けておくよ」

 

「お願いね。忘れないでね」

 

「大丈夫だってば」

 

「ほんとかなぁ」

 

悠真は

義父と夫と同じ建築士になるべく

四大の建築学部を目指すことを決め

今の高校を選択した。

 

それは長年の

義父母と

そして夫の強い希望であった。

 

彼等は

将来悠真が

義父の設計事務所を継いでくれることを

強く望んでいた。

 

「いいか、悠真は

将来建築士になって

おじいちゃんの設計事務所を

継ぐんだぞ!」

 

義父と夫は悠真に小さいときから

そう言い聞かせてきた。

 

そして悠真もいつしか

義父や夫のようになることを

目標にするようになった。

 

 

 

夫はそんな悠真の夢を

一番喜んで心から応援していた。

 

なのに……。

 

悠真の大学進学の話に

いつもは誰よりも熱心な夫が

その日はまるで心ここにあらずで。

 

珍しいな。

どうしたんだろう。

 

それが

私が夫に違和感を感じた最初だった。