湿った緑と空気の匂いが立ち込める森の中に、水音だけが響く。
水分を含んだ草木は、静かに呼吸し、森の中を二酸化炭素で満たす。
そのかすかな呼吸音。

一体ここはどこなのだろうか?

いや、場所は知っている。
山形県鶴岡市に鎮座する羽黒神社。

だけど、そういうことじゃない。


この空間は本当にここに存在しているのか?
わたしは異空間に迷い込んでしまったのではないだろうか。

 

……そこには、確かに神の気配がありました。

 

羽黒神社の境内を流れる川辺で、そんなことを考えた。

 

 * * * * *

 

さて新潟→山形(行き当たりばったり)の旅も3日目。いよいよ最終日。
その日、わたしは朝から筋肉痛に悩まされておりました。あきらかに2日目の弥彦神社奥ノ宮登拝山下りが響いています。

3日目は羽黒神社に参拝する予定でしたが、大丈夫か、わたし? 不安を覚えつつも痛む体を引きずって車に乗り込み、出羽三山の一社、羽黒神社を目指したのでした。

 

詳しくは公式サイト様↓をご覧いただくとして、出羽三山とは羽黒山、月山、湯殿山の総称です。

出羽三山神社 公式ホームページ 出羽三山とは羽黒山、月山、湯殿山の総称で 明治時代までは神仏習合の権現を祀る修験道の山であった。 明治以降神山となり、羽黒

www.dewasanzan.jp

 

 

記は羽黒町観光協会のサイトです。こちらも分かりやすい!

出羽三山 | 羽黒町観光協会 出羽三山は、山形県の中央にそびえる月山(1984m)・羽黒山(414m)・湯殿山(1500m)の総称で、六世紀に開山された

hagurokanko.jp

 

 

古来からこの三山をめぐることは、死と再生を辿る「生まれ変わりの旅」といわれ、羽黒山では現世利益を、月山で死後の体験をして、湯殿山で新しい命をいただいて生まれ変わるとされたそう。


ああ、なんか、今すぐ行きたくなってきたーーー! 

 

以下、観光協会サイト様の記述を要約。とても心惹かれる内容でした。

 

日本列島では古くから、山や川、木や石、動物などを神そのものとする考え、山や川が神の住処であり、神によって生み出されたとする考えがあった。

また人間は神の宿る山から魂を授かり、この世に生を受けて、死後はその山へおもむき、神として鎮まると考えられていた。

高くて形のよい山(いわゆる神奈備山?)は、豊かさの源であり、魂の鎮まる場所であると同時に、神聖な場所として麓の人びとから敬われていた。

 

……こんな文章を読むと、今すぐ旅立ちたくなってしまいます。

 

ご由緒や歴史については、後日まとめるとして

今回は主に祓川神社と五重塔で感じた“感覚“について記します。

 

 * * * * *

 

月山や湯殿山は山頂や渓谷にあり、冬季の参拝や祭典が難しいため、三山の行事はすべて、羽黒山の山頂にある三神合祭殿で行われるとのこと。


というわけで、今回は羽黒山の三神合祭殿を目指すことにしました。しかし、やっぱり前日の「弥彦神社奥ノ宮からの山下り」の影響は大きい💦
とにかく足が痛い、背中が痛い、腕が痛い…おのれの体力のなさが情けない。

当日は朝から小雨もよう。

かなり迷いましたが、「せっかくここまできたのだから」と参拝することに。

 

▲2446段の石段! 杉並木が美しい

お注連をかけて石段を歩く「石段詣」なるものもあるそうです

 

参道沿いの祓川にかかる朱塗りの神橋を渡ると、一筋の飛瀑が音を立てて滝壺へと流れていきます。


この滝は、江戸時代初期、羽黒山の中興の祖といわれた天宥法印(てんゆうほういん※法印は僧の最高位)が、8km先の月山から水路を開削して造った人工の滝「「須賀の滝」。古くは「不動の滝」と呼ばれ、修験者や参拝者が身を浄める水ごりの場だったようです。

 

▲緑に映える朱塗りの橋

 

そして、滝の前、向かって右側には祓川神社、左側には岩戸分神社、奥には不動明王が祀られています。

 

神道の神と仏が同じ場所に祀られているのが、いかにも神仏習合の神社という感じ。

 

祓川神社のご祭神は『大祓詞』に記された祓戸四神。

 

瀬織津比咩神(せおりつひめのみこと)

速開津比咩神(はやつあきひめのみこと)

気吹戸主神(いぶきどぬしのかみ)

速佐須良比咩神(はやさすらひめのみこと)


ちなみに、岩戸分神社のご祭神は天手力雄命(あめのたじからおのみこと)

 

この瀬織津比売神(瀬織津比咩神)と速開津比売(速開津比咩神)が、気になっています。

 

『大祓詞』には、「川上にいる瀬織津比売神が罪や穢れを海に流し、「荒潮の潮の八百道の八潮道の潮の八百会に坐す速開津比売が飲み込む」との記述が。

どうやら、川上にいる瀬織津比売神が罪や穢れを流し、荒潮の潮の……というのは海のことだと思うのですが、流れた罪や穢れを速開津比売が飲み込むということらしい。祓戸の神については、脱線しそうなので、このへんで💦

 

今回、わたしが最も惹かれたのが、「須賀の滝」と、祓川神社と岩戸分神社でした。

 

この記事の冒頭に書いた「神の気配」のようなものを感じてしまったのでした……といっても、わたし、スピリチュアルなものを信じてるかといわれるとビミョーなんですが、「神」と呼ばれる存在は信じているといいますか……その程度です。

 

だけど、ときどき、ありありと「神のような気配」を感じることはあります。


それが今回の祓川神社と「須賀の滝」

それから2019年秋に訪ねた滋賀県大津市の日吉大社の川と滝

そして、屋久島の白谷雲水峡なのでした。

 

これらのスポットは、たぶん誰が行っても「神の気配」を感じるでしょう。


わたしは水のあるところ、それも山奥を流れる水のあるところに「神の気配」を感じるようです。また、あの気配……といいますか、植物の呼吸音のようなものを感じたい!

 

▲祓川神社の写真がなかったため、豊玉姫神社の写真をアップ

 

▲お不動様が祀られています。須賀の滝だけに清々しい

 

▲イケメンなお不動様が祀られています

 

祓川神社とお不動様にお参りし、神橋をわたって、ふたたび参道へ。

 

山頂の三神合祭殿を目指します。

 

 

巨大な杉並木の中にそびえる国宝の五重塔が見えてきます。

創建したのは平将門と伝わるそう。現在の塔は約600年ほど前に再建されたもので、東北地方最古の塔といわれるらしい。

 

杉並木の中にその姿が見えた瞬間、思わず声を上げてしまいました。柿葺き(こけらぶき)の五層の造りが美しい。

 

▲山頂ではないとはいえ、ここまでどうやって素材を運んだのでしょうか?

 

五重塔の左には、樹齢1000年と言われる巨木「爺杉(じじすぎ)」が佇んでいます。

 

▲メディアの取材かも? 人と比べると爺杉の大きさが分かります

 

▲「爺杉」胴体アップ

 

と、ここで一気に雨足が強くなり、ちょっとシャレにならない天候になってきました。

 

念のため雨具は持ってきましたが、この先はかなりの上り坂。

 

整備された参道が続きますが、ちょっと危険かもしれないなと判断し、登拝を断念。そのまま石段を降りて車に戻りました。

 

以下、道端の石仏や板碑をご紹介。


わたしの写真だと、乾いた感じですが、実際は水に濡れ、苔も水を含み、湿った感じでした。

 

 

「新潟→山形のたび2019」は、これにて終了!

 

いきあたりばったりで、あとから「あそこにいけば!」と後悔もしましたが、予期せぬことがたくさん起こり、とてもワクワクしました。

 

次に出羽三山に参拝するときは、1泊して月山も湯殿山にも参拝したいなと構想中。できれば、帰りに山寺も訪れたい!