▲県道235号羽鳥福良線沿い、山中に突如現れる石の鳥居。鳥居前の未舗装の道は、かつての参道でしょうか?

 

福島県郡山市湖南町福良に鎮座される隠津嶋(おきつしま)神社。

写真は2019年7月23日、祭礼の際に撮影したものです。

 

▲こちらが拝殿。例大祭がおこなわれる7月23日に参拝しました。

 

『延喜式神名帳』の陸奥国安積郡に掲載されている「隠津島神社」に比定される式内論社の一社。

 

ちなみに、他の式内論社は

・郡山市喜久田町の隠津島神社

・二本松市木幡の隠津島神社

の2社。

 

いずれも式内社にふさわしい風格ある神社ですが、個人的に湖南町福良の隠津嶋神社の雰囲気に惹かれています。

 

郡山市から天栄村方面へ向かう県道235号羽鳥福良線の山中、車を走らせていると、突如として現れる畏怖を感じさせる石の鳥居。

思わず車を停めて写真を撮影したくなる神秘的な佇まい。

約15haにもおよぶ社叢は、杉の老木などが生い茂る鬱蒼とした原生林。

 

雨祈にまつわるパワースポットや、神秘的な磐座、境内の奥に鎮座される蛇神さまを祀る祠など、心惹かれる要素がいっぱい。好奇心が止まりません!

 

◆ご由緒◆

境内の由緒書きによりますと

貞観8年(866年)、清和天皇の御代、筑紫国宇佐郡の宗像大社より勧請されたそう。

 

ご祭神は宗像大社と同じく、宗像三女神。

・市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)

・多紀理姫命(たぎりひめのみこと)

・多岐津姫命(たぎつひめのみこと)

 

境内に菅谷地があり、菅がたくさん生い茂ることから「菅明神」や「お菅さま」とも呼ばれているそう。

干ばつのとき、そこで採取した菅草を社前に捧げ、雨祈をすれば必ず雨が降ったという伝説が伝わっています。

 

▲境内前を流れる清流。これが菅川でしょうか?

 

それ以外にも雨祈に関する場所があったり、蛇神さまが祀られていたりすることから、その昔、この土地に住んでいた人びとが、降雨をこの神社に祈っていたことがうかがえます。

 

湖南町福良の隠津嶋神社には、宇佐郡の宗像大社にならい、「奥津宮・中津宮・辺津宮」があり、こちらの神社は中津宮にあたります。

奥津宮は、南へ約5kmにある布引山(ぬのびきやま)の南麓の黒沢の峡谷にあったそうですが、現在は廃絶。

 

辺津宮が鎮座されるのは、東へ約4km進んだ湖南町三代(みよ)の栃窪という地。鎮座地には、周囲約4mの栃の老木と、菅の生い茂る沼があるとのこと。こちらは現在も続いているようです。

 

◆パワースポット◆

社殿の傍の参道は「風穴」に祀られる「蛇神様」への参道があり、途中に、烏帽子岩と呼ばれる磐座が鎮座されます。

 

【風穴(ふうけつ)】

「神風岩」と称され、俗に「蛇神さま」として信仰されているそう。

筑紫国から宗像三女神を勧請した際、その道案内をした付人が役目を終え、風穴で蛇の姿になり、穴に身を隠したという伝説が残っています。

 

▲隠津嶋神社脇、小高い丘の上に鎮座される「蛇神様」。「風穴」はこの社殿の下にあるようです

 

【烏帽子岩】

社殿の背後に鎮座する「えぼし」の形をした磐座。以前はこの磐座が信仰対象だったのかもしれない…と妄想。

 

▲緑に覆われて、岩肌が見えない…。磐座そのものを見るなら、冬がベストかも?

 

【菅谷地】

神社の前にある菅のしげみ。干ばつの際は、神職が潔斎して菅を採り、神前に捧げて雨祈をすれば、必ず雨が降るといわれていたそう。

 

▲祭礼の日も氏子と思われる方が、手を浄めてから参道に向かっていました

 

【菅滝」

社前を流れる菅川の源。高さ7m。昔から禊の場であり、雨を祈る場でもありました。

 

▲これが菅川?(未確定)

 

〈余談〉

「奥津宮・中津宮・辺津宮」といえば…

福島県棚倉町に鎮座する都々古別神社(つつこわけじんじゃ)の創祀地とされる建鉾山(たてほこやま)にも、頂上に「立鉾石」と呼ばれる磐座があり、「奥津宮・中津宮・辺津宮」にあたる磐座か祭祀跡が残ると聞きました。

 

建鉾山は美しい三角錐の形をした、いわゆる神奈備山で、5世紀の祭祀跡が残ることで知られます。

 

「奥津宮・中津宮・辺津宮」は、ヤマト政権がその土地の神を征服した証なのかもしれない…と妄想がムクムク…

 

▲再度、石の鳥居を掲載

 

▲鳥居近くの石の社標

 

▲白いのぼりが立つ駐車場。いつもは人気(ひとけ)がなく、ひっそり静まり返っていますが、祭礼の日とあって、車の数も多く感じました

 

▲参道の石段へと続く鳥居

▲背後の老木の存在感

 

▲苔むした石段を登ると…

 

▲石段の向こうに境内が見えてきました。祭礼の日とあって、あかりがついていましたが、いつもはひっそり…ちょっと怖いくらいの雰囲気です

 

▲狛犬さんがお出迎え

 

 

 

▲拝殿全体

 

▲本殿(たぶん覆屋に囲まれています)の背後にチラリと見える烏帽子岩

 

▲隠津嶋神社拝殿左手にある参道を通り、小高い丘の上にある「蛇神様」と「風穴」へ

 

 

▲先ほどと同じ写真ですが…蛇の抜け殻が祀られています

 

▲社前に備えられた卵