終焉(おわり)の物語 | 蒼の徒然~何か語らないときっと後悔する

蒼の徒然~何か語らないときっと後悔する

自分の人生を変える!と決意したアラサー女子。
2013年5月で前職を退職し、2013年12月に現職。
接客は接客でも、180度違う業界にとびこむ。


後悔しない人生を送るために、
「今」を記録する場所に。

終焉の城下は、物々しい気配であふれている。

きな臭い話が、この小国の周辺でうようよわいている。

戦が近付いているのだ。

天下統一という、大きな波が。

近隣の諸国と同盟を結んでの戦か、覇王軍に降伏を求めるのか。

はたまた、一国の全面戦争か。


時は戦国領主時代。

覇権争いが数十年続いている。

民は飢え、殺させ、田畑は焼かれ、困窮、たび重なる戦のために税は増す一方、男どもは戦場の土に倒れる。

どの国も、そんな状況だった。


そんな中、終焉だけは比較的豊かだった。

数年前、二人の兄妹が城を制圧したその日から。



「同盟を結ぶべきではない。疑心暗鬼の他国との同盟は、我らにとっても命取りになる!」

「では、貴殿は覇王に降伏せよというのか!無条件降伏した国が、虐殺されているのだぞ!」


激高してにらみあう重臣たちを見て、領主、緒田龍暗は苦笑いで口をはさむ。


「まぁ、まだ実際にうちが戦するわけじゃねぇんだから。」

「領主、そうは申されましても!!」

「戦するんだってな、司令官がいないうちには決められねぇ、そうだろ?」


のんきな様子が、逆に油となった。

「そうです、姫領主はどこへ行かれたのです!こんな重要なときに!!」

「あの方は軍をなんだと思われているのか!あのざまでは、そもそも戦もままならぬではないか!!」


「では、お前が指揮をとるか?」


その声がその場を凍りつかせた。


「姫領主!」


息をのむ重臣に目もくれず、姫領主、緒田流菜が席に着く。


「なんだ、遅かったな。」

「あぁ、各村に伝令をだした。村の家から一人ずつ徴兵だ。」


そんな勝手な!


というどよめきを黙殺する。


「先日解体した軍の将軍たちも、3日後に出頭させろ。終焉軍をつくる。」

「では、姫領主は・・・覇王軍と戦をされるのですか?」

「いや。」

「今、この時期に解体も同然だった軍を編成するということは、他国を動揺させます。」

「それがどうした?」


流菜の言葉に、一同は継ぐ言葉を失う。


「終焉の軍再編は、他国への踏み絵だ。同盟に動くか、覇王につくか、その動きを探るいい機会になる。」



終焉の兄妹は、この時代の伝説だった。


彼らはたった二人で、しかも数時間もかけずに前領主をその座から蹴落とした。


龍暗は手に取るように軍隊の動きを読み取り、ことごとく動きを封じた。

その才覚に恐れをなし、次々と降伏するものが現れ、軍は崩れた。


だが、城の人間がもっと恐れたのは流菜のほうだった。

軍が崩れたなら、狼藉者は俺一人で十分、と次から次へと腕に自信があるものが二人に挑んだ。


彼女はそれらを瞬殺。自らは傷一つ負わず、顔色一つ変えず。



姫領主、緒田流菜。

時代は彼女を終焉の鬼女、と呼ぶ。