※妄想話です









雑誌撮影のため朝から
局と屋外の往復に追われる

さっそく昨日の記者の件が
チーフや事務所に知られ

朝からオレの周りは慌ただしかった


「二宮さん、今度は少しジャンプして
 動きをだしてみましょう」

カメラマンの要求に答えながら
仕事としての笑顔を全開にする


「はいっ大丈夫です!確認します」


皆でモニターの前に移動し
何十枚と撮った画像を厳選していく


編集作業の隙をみて
トイレに行こうとすると

「どちらへ?」

すかさずマネージャーが近寄ってくる

「便所」

「お供します」

「オシッコくらい1人で行かせてよ」


「外で待ってますので
 お気になさらずに」


いやいや 

気になるわ


ベッタリ張り付かれるって
こういうことなんだなって

身をもって体験中だよ


マネージャーと共にトイレへと
歩いていると

「そういえば、昨日大野さんから
 電話ありましたよ」

「ふーん」

「心配されてました
 なるべく付いててやってって」

「そう」


「二宮さん昨日スマホの電源切ったでしょ?」

「切ったよ」

「そういうことしちゃダメですよ
 いざ何かあったとき困るでしょ」

「仕事には支障きたしてない」

「いや、そうですけど
 常に連絡できるようにはしててくださいね」

「わかったわかった」


トイレに着いて
入り口でマネージャーが待機し
中に入る


昨日は

大野さんに対してガッカリした

ろくにオレの話聞きもしないで
オレが潤くん困らせてるって


本音を言えば

全くオレに寄り添ってくれず
潤くんばかり気にかけてる
その姿に


一抹の寂しさが募った


離ればなれにされてるから
顔を付き合わせて会話もできないし

オレの心配もしてくれてんだろうけど


今は大野さんに何されても

なんにも響かない自分がいる



昨日も1人で熟睡できたし



オレ

大野さんと付き合いだしてから

1人寝のときは  
熟睡できないときの方が多かったの

単純に寂しくて



今回もずっとできてなかった

途中起きちゃって
なんとなくゴロゴロしちゃってた


なのに

昨日はしっかり眠ることができて

朝からスッキリしてる



「おまたせ」

「いえ、では残りの撮影も頑張りましょう」

「おう」


あんなに募っていた寂しさは


今は微塵も感じることはなかった







次の日

全員事務所に呼ばれ

呼ばれると言っても皆仕事があるから

入りはバラバラでそれぞれに話がされた



「あんた家に帰っていいわ」


「…は?」

思ってもない言葉を上司に言われる


「あんたと大野の件はなんとかなりそう
 一緒のマンションに住んでるといっても
 部屋が別々であるなら不思議じゃないし
 マンションの中に入って調べるなんて
 セキュリティ上到底無理だからね」

「……」


「松本とのことも聞いた」


「え?」

「まぁなんて言うか…こんな狭い世界で
 何も恋愛しなくてもいいじゃないのって…
 思っちゃったけど」

「……」

「事務所としては
 あんたと大野のことに加えて、芋づる式に
 松本のことが出て、面白おかしく騒がれるの
 だけは避けたいの」


「…はい」

「あの記者は嵐の中での人間関係を
 スクープとして記事に出したい考えみたい」

「……」

「女を取り合うんじゃなくて
 中心にいるのが二宮だとわかれば…
 世間の興味はアイドルとしての嵐じゃなく
 ただの好奇の的として注目を浴びてしまう」


「……」

「記者とはなんとか折り合いがつくように
 交渉してるところだから、心配しなくて
 いいわ」

「はい…っあの」

「なに?」

「もう少し
 あの住まい貸してもらえませんか?」



オレの言葉が意外だったのか

驚いたような顔をしてる


「…なぜ?」

「単純に大野と居たくないんです」

「…痴話喧嘩の隠れ蓑のために
 提供してるんじゃないんだけど」

「じゃあホテルに泊まります」

「ちょっと待ちなさいよ
 なに?別れ話でもしてるの?」

「してませんよ」

「…あのね
 この状況でホテル住まいなんて
 させられるわけないでしょ?」

「じゃあ、もう少し住まわせてください
 大野のとこに帰れっていうなら
 違うとこ行きます」


これが
完全なワガママというものだろうな


だけど今帰っても

前みたいに大野さんと暮らして
いける自信ない


嫌いとか

そんな単純な思いじゃない





オレは大野さんに


失望してるんだ