※妄想話です









特番が多くなるこの時期

嵐のメンバーで
集まって収録する機会もぐっと減る


あれから
記者は影を潜め
潤くん、もちろんオレにも
接触してくることはなかった


オレはレギュラー番組の収録や
ナレーションの仕事などをこなしながら

借り住まいで1人暮らしを続けていた


大野さんとは

1回だけ電話で話しただけで
後はちょこちょこラインのやり取りをしてる


大野さんはオレが何処にいるのかは
知らないし、聞いてもこない


聞かれても答えらんないんだけどさ


正直なところ




オレは
大野さんが不足しすぎていて
若干イライラがきてる

イライラには大野さんの
やけに物わかりが良すぎるところも
要因に含まれてる


電話で話したとき

声聞いたら
寂しさみたいなものが溢れちゃって

「寂しい」

って言ったら

ワガママ言うな
辛いのはお前だけじゃない
松潤なんてもっと窮屈な生活強いられてんだぞって



お説教受けましたよ

別にさ?

オレだけがなんて思ってないよ?

ただ寂しいなって言っただけじゃん?

なのに

そんな言い方する?


「…そうだね、ごめん」

って言ったら


謝るなや
俺が責めてるみたいじゃんって



じゃあどうすりゃいいのよ!


もうイライラしてきちゃって

「もう話してるとムカつくから
 電話はしてこないで」


って言って切っちゃったよね


そのあと
大野さんから電話がかかってくることもなく
オレもかけなかった


たまにするラインも

元気?みたいな
近状報告してるだけ

好きだ
愛してるなんて

そんな甘いやり取りは

皆無








レギュラー収録が終わって
ゲストを見送ったあとスタジオを出ると

マネージャーが寄ってきて

「二宮さん、僕このあと事務所に
 呼ばれてまして下に相葉さんのマネージャーが
 待機してくれてますのでお帰りは
 そちらの車に乗ってください」


「わかった、おつかれ~」


楽屋に戻り
着替えを済ませて地下へ向かう


辺りをキョロキョロしながら
駐車場を歩いていると



「二宮さん」


誰かに呼ばれた

立ち止まり振り向くと


見えたのは

始めてみる男の顔


「はじめまして
 松本さんの記事を書いた編集部の者です」


…例の記者か

オレのスケジュール調べて
張ってたのか


「この間松本さんから話し伺ってましてね
 また松本さんのとこ行ったら…
 すげぇ警戒体制で近づくこともできなくて」


だろうね

付きっきりで監視されてんだから



てか相葉マネージャーなにしてんだよー

「ちなみに、松本さんから何か訊いてますか?」


事務所に言われてる通り
応じることなく辺りを歩く

「二宮さん、最近松本さんとお二人で
 お出掛けになってますよね?公園だったかな?」



ピタッと足を止める

「あれ?松本さんから訊いてません?」


記者の方を振り返ると
それと同時に目の前に写真を
突き付けられた


「ここに写ってるの
 あなたと松本さんですよね?」


…確かにあの時のものだ

でもなんで

「実は音声もゲットしてるんですよ
 途切れるところがあったんですけど
 なんとか精度を上げることができて
 やっと何言ってるかわかりました」


記者が取り出したレコーダーから
聴こえてきたのは

あの日の潤くんの言葉



「…こんな台詞
 ただのメンバーに言う言葉ですかね?」



なんでだ


いつから付けられてた?

てか、なんで潤くんこのこと言わなかったんだ


「松本さんには
 二宮さんに何かしたら許さないと言われてます」



チーフからのメールには

大野さんと俺のことしか
書かれてなかった


だから
大野さんと離されたと思っていたのに


「…どうなってんだ」


「えっ?」


この記者は
ずっと潤くんをマークしてた

例の女からの依頼で
  


マークしてたら
偶然オレと出かけるところを見かけて

写真や音声まで押さえられたってとこか



「二宮さん!」


地下入り口から慌ただしく
走りよってくる見覚えある男


相葉マネージャーだ

「ちょっとなんですか?
 こういうことは困ります!離れて!」

マネージャーが
オレと記者の間に割って入る


「はいはい
 二宮さん、さっきのネタ…世間にでたら
 面白いことになると思いますよ」

「警備員さん!こっちです!」


マネージャーの声の方から
複数の警備員が走ってきて
男を取り囲む


「二宮さん、すいませんでした
 行きましょう」


マネージャーに肩を抱かれ
早足で地下入り口に向かう


肩越しに後ろを振り向くと


記者は
オレから目を背けることなく

じっと前を見据えていた





マネージャーの車に乗り込み

オレは疑問に思ったことを
訊いてみた


「なぁ、あの記者
 潤くんとオレのこと疑ってる
 チーフからはそんなこと一言も訊いて
 ないんだけど、どうなってんの?」


「あ、それは…すいません
 僕らも詳しくは訊けてなくて」

「オレは大野さんとのことがバレそうだから
 別居しろって言われたんだけど」


「そうですね、それも間違ってないです」

「てことは、今回潤くんは
 オレとのことと、大野さんとのこと
 両方揺すられたってこと?」


「……すいません、僕からはなんとも」



そのマネージャーの一言で
確信をもった


潤くんの記事にしろ
大野さんとのことが世間に晒されるにしろ


どちらもオレが絡むことだ


だから
オレだけこんな離れたところに
隔離されて守られてる




記者が言ってたな

「松本さんには
 二宮さんに何かしたら許さないと言われてます」




全く

冗談じゃないよ

オレは女じゃないんだから



1人で何とかしようとしないでって
言ったじゃんか



オレはスマホを手に取り



潤くんに電話をかけた