※妄想話です









ニノの病院に着いて

玄関にニノのマネージャーがいた

「おつかれさまです!」

腰を深く折って
俺とチーフに向かって頭を下げる

「おつかれさま、大変だったな」

チーフがマネージャーの肩に手を置き
労った



「…二宮さんを病室に1人残してきてるので、歩きながら説明させていただいていいでしょうか?」

「ああ、行こう」


病室に向かいながら

これまでの経緯と

入院になった理由を聞いた


マネージャーは相当凹んでいて
ニノの体におこったことは全部自分のせいだと
責めていた


チーフは下手に慰めることはせず

同じことを繰り返さないように
今回のことを一緒に振り返って
対策をしようと声をかけた


俺は

体のことは正直ショックだし

心配でしょうがないけど



ニノらしいなと思った

辛いだろうな

体はもちろんだろうけど

気持ちのほうも













「…辛いか?」

病室に着いて

俺の顔を見て
ニノはすげえ驚いてた

でも
ニノの顔色の白さに
俺のほうが驚いた




ニノの体をゆっくり擦っていく

手から伝わるニノの体温に

不安だった気持ちが和らいでいくのを感じた


「辛くないよ」

「嘘つくなや…」


「ホントだよ、大野さんが体撫でてくれるから
 すごい気持ちいい」

そう言うと

撫でる手と反対の俺の手に
自分の手を重ねてきたから

その手を優しく握り返した



「ねえ、現場どうなってる?」


「んなこと今は気にすんな」

「そういう訳にはいかないよ…」 

「現場は大丈夫だよ、皆ニノたちが無事で安心してる」


マネージャーは
すげえ怒鳴られてたけど

まあ、そこは仕方ない

「そっか…」


視線を落とし

無意識なんだろう
腹を擦り始めた


「痛むか?」

「ん…平気」


「仰向けになれる?擦ってやるから」

「ええ…いいよ、大丈夫」

「やだ?」

「嫌じゃないけど」

「なんだよ?」



「いや…どしたの?優しすぎて怖いんだけど」


なんだそれ


「ニノにしてやりたいだけなんだけど」


ニノの耳が
ほんのり赤くなって

ゴソゴソと動きだし

仰向けになった


俺の方をチラッと見てる

「ここ…痛いの」

ニノが臍の上あたりを指さす

「わかった、ここだな?」

ニノが言うところを

ゆっくり優しく
撫でていく



…ふふっポニョポニョしてる

「…気持ちいい、ありがと大野さん」

「うん、ニノ」

「なに?」





「あの日…ごめん、ルアー1つで…無視したりして」


目を瞑っていたニノが
ゆっくり目を開けながら俺を見る


「…ごめんなのはオレでしょ」

「いや、無視はよくなかった…あとさ、あの日釣り行かなかったんだよ」

「…そうなの?」

「ん、雨すごかったじゃん…んで、次の日船長が休みだって言うから…船長の家泊まって、朝から釣りに行ってた」

「そっか」


「連絡しなくてごめん…着信入ってたから、心配したろ?ホントにごめん」


ニノが大変なときに
呑気に釣りしてたなんて


「…心配したよぉ…あんたのことだから…沖にでてんじゃないかなって」

「ごめん…」


「んふふ…謝ってばっかだ…」


ニノが
いつものように可愛らしく微笑む



可愛い…




コンコン

「失礼します、大野さんちょっといいですか?」

チーフに呼ばれた

「二宮さんは僕がみてますので」

マネージャーと交代して
チーフのもとへ行く


「どした?」


「二宮さんの病状聞いてきました、ご家族に連絡もしまして、今日にもお母様がいらっしゃるようなので一旦東京へ戻りましょう」

「…」

「大野さん、明日ロケありますよね?」

「…あるよ、わかってるよ」


「二宮さんのお母様がいらっしゃったら交代しますので、大野さんは先にマネージャーと帰っててください」


「ニノの母ちゃんか…会いたかったな」

「…あの」

「ん?」


「お二人のこと…まさかご家族は知らないですよね?」

「いや、知ってる」

「…!えっ!」


「言ってないけど、多分知ってんじゃない?
 一緒に住むって知ってるから」

「…へえぇ」


さすがにおおっぴらには言えないけど

お互いの母ちゃんは

多分
わかってる


「帰るってニノに言ってきていい?」

「はい、マネージャーには車まわすように言います」





ニノの病室に戻って

「なんか母親来るんだってね、色んな人に迷惑かけちゃったな」


…そんな悲しそうな顔すんなよ


「…帰っちゃうの?」



やめろよー


そんな可愛い顔してそんな可愛い台詞吐くなよ



俺だって帰りたくねぇよ

できることなら
ずーっと側にいたい


「気をつけて帰ってね」

「ん…ラインするから」

「ふふっ…うん」





かなり名残惜しいけど
明日は仕事だし

責任を全うしなくては



ニノのマネージャーと病院を後にして


都内へと向かった