かねてから元ホステスの女性との不倫が報じられていた俳優の渡辺謙さんが、先週謝罪会見を行いました。

 

報道はおおむね事実だと認めた上で、妻の南果歩さんには誠心誠意謝ったこと、長男の渡辺大さんや長女の杏さんとは今後ゆっくり関係を修復していく予定であることなどを語りました。

渡辺謙さんが報道陣に囲まれてひたすら謝罪する姿に、ハリウッド俳優としての渡辺謙さんのイメージとのギャップを感じた方も多いと思います。

 

少し前の芸能界であれば、大物であればあるほど不倫も芸の肥やしであると許容される風潮がありました。

しかし、今は不倫に対する世間の風当たりが強い上に、妻の南さんの病気療養中の不倫だったことも、渡辺謙さんへの批判に拍車をかけたようです。

 

もっとも、病気や妊娠中などで妻が苦労している時に不倫をする男性は意外と多いものです。私が離婚の相談を受けていても、不妊治療中、妊娠中、子どもの受験期、親の介護など、妻や夫婦が何かの問題に直面している時に夫が不倫をしてしまうケースを多く見てきました。

妻や第三者から見ると「大変な時にひどい」と思いますが、夫は妻にひどいことをしようとしてあえてこういう時期を選んでいるわけではありません。妻が苦労しているから自分もしっかりしなければいけないというプレッシャーや、妻が精神的に疲弊していることへのストレスや、妻が自分に無関心になることの寂しさが、かえって夫を不倫に駆り立ててしまうのだと思われます。

 

もう一つ今回のケースで興味深いのは、大物俳優である渡辺謙さんが相手女性に不倫を暴露されてしまっているという点です。

 

不倫を暴露したい、それをやめさせたいという話は、不倫問題につきものです。

楽しく交際をしている最中や、女性の方から嫌いになって別れる時には不倫関係をばらそうとは考えません。逆に、妻と離婚しないということがきっかけで関係がこじれたり、別れ話をした時に男性が相手のケアを怠ってしまうと、「仕返ししよう」という考えが浮かんでしまいます。

 

「好き」の反対は「嫌い」ではなく「無関心」です。

 

嫌ったり恨んだりという感情は愛情と背中合わせなので、相手に仕返ししたい、何とかして不幸にしたいという執着は、まだ相手に対して気持ちがあることの表れと言えるでしょう。

なので、不倫を暴露する女性の心理には、まだ相手のことが好きだという気持ちが隠されています。

不倫した女性からの相談も受けますが、どこかで、今までの気持ちをないがしろにされた、妻にばれて突然振られたという、好きな気持ちのやり場に困った結果、「バラす」という心理に至っているようです。

男性からしますと、「バラしたらもう終わりだろう」と思いますが、バラすことでなんとか関係を続けたいというのが不倫相手の女性の心理なのです。

 

離婚の相談を受けていても、慰謝料も何もいらないからとにかく別れたいと言う人は本当に相手への気持ちが離れてしまっている人です。逆に、どうにかして相手に仕返ししたい、慰謝料や財産分与をできるだけたくさん取りたい、相手の主張に反論したい、と言う人は、まだ気持ちが残っている人だと言えます。

相手に対して気持ちがあるのかないのかによって離婚の方針も変わってくるので、離婚の事件を扱う際には、依頼者のこういった気持ちをきちんと聞き取るようにしています。

 

一方、不倫をしても揉めずに別れられる人もいます。

女性を振っても、「振られたけど付き合えてよかった」という気持ちにさせてあげられるタイプの人です。

 

一般に大物芸能人の不倫が発覚しにくいのは、相手を選んでいるからというのもありますが、別れる時に相手が「付き合えてよかった」という気持ちになって、恨んだり憎んだりする感情を抱かないからだと思われます。

「結婚できなくてもこんな人と付き合えただけで幸せ」と思えるぐらいの男性であれば、別れてしまうことによる精神面のマイナスが相対的に小さくなって、感情を悪化させずに別れられるというわけです。

 

裏を返せば、大スターであるはずの渡辺謙さんがこのような暴露をされてしまったということは、交際中に「付き合えただけで幸せ」と思えるほどのものを相手女性に与えられなかったということだとも考えられます。

私たちから見れば超大物俳優の渡辺謙さんですが、いざ交際して見れば「付き合えただけで幸せ」と思うほどの男性ではなかったということなのでしょうか。

苦しい表情で頭を下げ続ける謝罪会見での姿といい、渡辺謙さんもどこにでもいる普通のおじさんだったのかもしれません。