守綱記 第十三章「小牧・長久手の戦い」七 | グレート家康公「葵」武将隊

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天下統一を果たした徳川家康公のふるさと、岡崎市の観光隊を務める
”グレート家康公「葵」武将隊”による日記です。

天正十二年四月九日卯の刻 尾張国 桧ヶ根

「退けぇ、退くのだ!」

榊原小平太が馬上で全軍に下知を出す。

白山林での敗北の報を聞きつけた羽柴軍の第三陣・堀秀政は急ぎ軍を引き返す。

そして、敗走した兵たちを収容すると桧ヶ根に陣を敷き徳川軍を待ち伏せる。

勢いに乗る徳川軍であったが、『名人久太郎』の異名を持つ堀秀政の巧みな采配の前にあえなく敗北。

今度は我々が敗走する事となりました。

拙者も必死で馬を駆け、羽柴軍の姿が見えない所まで兵を退くのでありました。

「お頭~待って下さいよ~」

拙者の数間後ろから情けない声が聞こえて来る。

拙者は首だけ振り返りその声に答える。

「早う来んとやられるぞ~」

「お頭は馬だからいいものの、歩く我々の身にもなって下さいよ」

息を切らし、体を大きく揺らす恰幅のいい弓足軽―大岡大蔵の姿に拙者は仕方なく馬を止める。

「致し方ない。ほだら、ここらで一度休むとするか」

拙者が周囲を見渡すと、ちょうどいい所に池を見つける。

「あそこがよいな」

池に近づき拙者が馬を下りて槍に付いた血を池の水で洗っておると、そこへ一人の鉄砲足軽がやって来る。

先ほどの足軽と似た顔をしているが、こちらの方が少し歳を取り精悍な顔つきをしております。

先ほどの足軽の兄・大岡伝蔵。

「お頭」

「ん?」

拙者は槍を洗いながら答える。

「急いで逃げたため皆と別の方向に来ちまったようです」

「あぁ?」

拙者は周囲を見渡す。確かに先ほど攻めて来たところとは違った様相である。

「このままだと敵の池田・森勢と鉢合わせる事になりますぜ」

「ん~」

伝蔵の意見に拙者が頭を悩ませておると、突如弟の大蔵が声を上げる。

「あ、あれは!」

「何じゃ?」

・・・・・・・・つづく

守綱めも
卯の刻・・・午前6時ごろ
1間・・・約1,82めーとる