守綱記 第十三章「小牧・長久手の戦い」六 | グレート家康公「葵」武将隊

グレート家康公「葵」武将隊

天下統一を果たした徳川家康公のふるさと、岡崎市の観光隊を務める
”グレート家康公「葵」武将隊”による日記です。

「惣兵衛殿」

拙者がそう口にすると、騎馬武者は苦笑いを浮かべながら答える。

「おいおい、儂を殺そうとしたのか?」

この御方は、水野惣兵衛忠重殿。

刈屋城の城主で家康公の叔父にあたる方でございまする。

拙者は、惣兵衛殿に頭を下げ謝罪しようとするのですが・・・。

「乱戦故、お許し・・・」

惣兵衛殿は、拙者が謝り終わる前に話を切り出す。

「それよりも半蔵殿、儂の息子の藤十郎を見てはおらんか?」

周囲を見渡しながらそう言う惣兵衛殿に拙者は首を傾げて答える。

「藤十郎?見ていませんな」

「そうか・・・あやつめ、兜も着けずに突っ込んで行きおって」

苛立つ惣兵衛殿。その直後、羽柴軍の後方が突如崩れ始める。

拙者と惣兵衛殿は瞬時に状況を理解する。

「小平太か」

おそらく迂回して敵の背後に回り込んだ榊原小平太の隊が羽柴軍を襲撃しているのでありましょう。

後方まで乱れた為、さらに混乱を増す羽柴軍。

拙者は、にやりと笑い惣兵衛殿に声をかける。

「この戦、勝ちましたな」

「ああ」

散り散りになり逃げ惑う羽柴軍。

その光景に惣兵衛殿は大声を上げる。

「皆の者、追えー追うのだ!」

惣兵衛殿の掛け声に応え羽柴軍を追撃する徳川軍。

拙者も透かさず馬を駆ける。

「逃げろ逃げろ~生き延びたい奴は必死で逃げろ!」

拙者は馬上で笑みを浮かべながら槍を振り回す。

これが白山林の戦いでございまする。

羽黒の戦い同様、奇襲により羽柴軍を撃退した徳川軍。

勢いに乗る我らは、敗走する羽柴軍を尚も追撃するのですが・・・。

・・・・・・・・・つづく