箸をやめることは、あきらめることではありません
佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の橋間葵です。脳卒中後、「箸が使えないなら、他の道具に変えたほうがいい」。そう言われたとき、心が少し重くなる方は少なくありません。箸を使えない=能力が下がった=できなくなったそんなふうに感じてしまうのは、とても自然なことです。しかし、リハビリの視点から見ると、箸以外の食具への移行はあきらめでも後退でもありません。むしろ、身体を守り、回復を支えるための「戦略」だと思っています。箸は、つまむ保持する微調整するという複数の動作を同時に求めます。一方で、スプーンやフォークは、動作の自由度が少なく、身体への要求が異なります。つまり、今の身体に合った食具を選ぶことで、食事という行為そのものを安定して続けることができます。研究でも、自助食が安定して行えることは、生活全体の自立や回復の土台になると報告されています。「箸を使わない」という選択は、回復を止める選択ではありません。むしろ、無理を減らし、身体が学び続ける余地を残す選択だと思っています。また、利き手が麻痺側になったとき、リハビリのために時間をかけて箸を使う方、箸でどうにか頑張って食べ物をつかもうとして皿や食べ物を床に落とすこともあります。そして食事時間自体で疲れたり、苦になってしまう方もいらっしゃいます。わたしは、「まず、しっかりご飯を食べましょう。お箸はご飯の時間のうち少しずつしてみましょう。食べることすべてをリハビリとすると疲れてしまって食事が嫌になる方もいらっしゃいます。美味しく食べる時間にしてください」などお話ししています。脳卒中後、さまざまなことを選択しなければなりませんが、その時も陰ながら支援していきたいと思います。☆*:.。.最後まで読んでいただきありがとうございました.。.:*☆