傷つくってことは、「つながり」がなかったからかもしれないとふと思った。
つながれていないから、距離が測れなくて、どんなものかも分からないから、手探りのなか、暗闇の中近づきあうから、お互いに見えていないので怖くて、ナイフを振り回すみたいな。
ちょっと近づいてきているのは分かるけれど、何か分からないから
怖くて、がむしゃらに自分を守ろうとして傷つける。
お互いにそうだから、「傷つけられた」と思う。
そして、何も分からないまま「傷つけられた」として、離れる。
そうだ、一度もつながれていなかった。
相手がナイフを離したら、って思いながらナイフを向けていた。
超怖いよね、ナイフ向けられたら。
でも向けているほうは、ナイフだと思っていない。
手を差し出したつもりでいる。
でも、しっかり反対の手でナイフを握っている。
そして、さされたことがあるから念のため、ナイフを下げないでいる。
「傷つかない」でいるために相手を「傷つける」ことを受け入れている。
「だって、昔それでやられたから」
「だって、裏切られたことあるから」
「だって、傷ついたから」
自分を正当化して相手を傷つけていることには気づかないでいる。
でも、どのみち相手はあなたが刺さなくても、ナイフを向けなくても暗闇での恐怖で、自分のナイフを振り回しそれで自分の体に傷がつくかもしれない。そして「傷つけられた」って言ったりする(笑)
そんなもんだとして。
明かりをつけてみる。
灯りを灯すと、相手の顔や体や、姿が見えてくる。
純真無垢で、清らかだからこそ、傷ついたということが分かる。
真っ白のキャンバスに、黒い点があると目立つみたいに。
傷だらけの自分の姿を見て、「汚い」って思うかもしれない。
ナイフを振り回して、近づいていたなんて知ったら愕然とするかもしれない。
明かりがついたとき、相手はナイフを持っていなくて、あなたはすごい恥ずかしさと自分への不信がやってくるかもしれない。
それが、過去の自分がもたらした経験だったと知る。
過去の自分がそうやって生きていたんだ、とただ知るだけ。
なぜ、暗闇を選んだのか。
なぜ、ナイフを持ったのか。
それは過去の自分が、その時を精一杯生きるために選んだものだった。
「こうなはず」
「こうしたいはず」
「こうでなきゃいけない」
「こうあるべき」
と、その時はそれで生きてきたことが
今は自分を覆って、外に出してくれていなかったことにも気づく。
でも、「出たい」と言ったら出れたし
「外して」と言ったら外してもらえたことには気づかない。
そんなことを言うなんて観念がなかったんだ。とまた、愕然とする。
気づいたら、最後。
これからは幸せになる選択しかできない。
そして、暗闇を選ぶことは出来ない。
ナイフは持つことすら、考えない。