「子供より親がだいじ、と言いたい。」で始まるのは太宰治の『桜桃』
桜桃を食べると、どうしてもこの
わずか9ページ程の小説を思い出して
しまいます。
「父は、大皿に盛られた桜桃を、
きわめてまずそうに食べては種を吐き、
食べては種を吐き、食べては種を吐き、
そうして心の中で虚勢みたいにつぶやく言葉は、
子供より親がだいじ。」
でこの小説は終わります。
途中、この小説は夫婦げんかの小説である、
と作者は書いています.。
夫婦げんかの後の桜桃の味?…さてさて。

まだかなぁ、と心待ちにしていると、初夏のある日、ルビー色のサクランボが
果物屋さんの店先に誘うように並びます。胸の《ときめき》は尋常ではありません。
桜桃の色を見ると、色が欲しくて買わずにはいられなくなります。
桜桃は甘いだけでもいけません。ほんのりと酸味がなくてはなりません。
酸みは甘みを引き立ててくれます。
母が遺していった染付の鉢に盛ってみました。印判なので明治でしょうか。
直径が24㎝あります。ゆったりとしているところも、好きです。