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本当に


復活しました。


とりあえず冒頭のみですが。笑。


プロローグ1は4までです。

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プロローグ 1-4

その音が何の音なのか。その事実を認識する前に俺は音のした方に振り返った。百八十度のターン。

そこには一人のカメラを構えた外国人観光客の姿があった。

俺とそいつの目が合う。

その外国人は馴れ馴れしい笑顔を俺に向けてきた。「ちょっと写真を撮ったんだ。お前も確かに写ったけどそれぐらい何の問題もないだろう。」そいつの顔からは一瞬でそんな感情が俺に流れ込んできた。


「ノープロブレム。」


俺は小さくそうつぶやいた。そいつが英語圏の人間なのかはどうでも良かった。俺の気分がそういわせたのだ。ノープロブレムと。問題ない。問題ないよ。

俺はお前を殴るから。

殴って殴って顔の形が変わるまで。そうすればノープロブレム。俺の気はすむんだから。


「そうだろう?」


俺はつぶやいたつもりもないがその声はこの世界で音になった。

斜め後ろの彼女がうなずいた。俺の言葉が彼女に聞こえたのかはわからない。ただ彼女も同じ気持ちなのは分かる。


俺達はその外国人を路地裏にと引っ張り込んだ。


ただ気のすむまで殴るのだ。


プロローグ(1-1から1-3をまとめたもの)

信号が青に変わった。

空を見上げていたかのようなタケノコ達が正面を見る。そして間髪を入れず一斉に立ち止まっていた根っこが、いいや、足達が動き出す。機械の国が生ものの国に擬態した。

「ガシャコーン。ガシャコーン。」

僕はそんな効果音を口ずさむ。

「ガシャコーン。ガシャコーン。」

根っこが動くのに「ガシャコーン。」って矛盾している。それじゃ擬態できていない。機械の国のまんまだ。僕はなんだかおかしくなって笑い出したくなる。


不意に無音が訪れる。僕はあわてて口を塞いだ。

この街には似合わない、それどころかこの街にはありえない、存在しないはずの静寂。


「キーン。」


僕の耳に小さくうっすらと響き始める。


「キーン。」


その音は徐々に、徐々に大きくなる。


「キーン。」


そしてとてつもなく大きくなる。大きくなって僕の耳を破壊する。耳の中で音の蛇がうなって蛇行して暴れまわりだす。そして耳だけじゃなく、僕を、僕自身を破壊する。


…。


…。


…そう。破壊した。



「ボス。」
「?」

「ボス。」


破壊されたはずの僕の耳に音が響いた。響いたせいで少しだけ耳の奥が痛い。出来たばかりの瘡蓋を破られるような感覚。

それでいて短く端的に僕を呼ぶ声。不必要な物を全て削ぎ落とし、その意味と目の前の事実だけを提示する声。

いいや。

俺を呼ぶ声。

彼女はいつもそうだった。いつもいつも、そう、初めて俺の前に現れた時から。気づいた時には俺の斜め後ろに立っている。

気づけばいつも同じ場所に居る。

いつからか俺がやめろと言うまで。


「ボス。」


彼女はもう一度俺を呼んだ。


「行くぞ。」


「はい。」


俺も短く端的に答える。

そして彼女はそれ以上に。


俺はゆっくりとタケノコ達に背を向けるように駅へと足を向けた。しかしそっちにもタケノコ達は山の様にいる。

不意にタケノコの山の一部が俺にぶつかってきた。

斜め後ろに居たはずの女が俺の前に出る。しかし、俺は直ぐ彼女を制する。

「すいません。」

俺の顔を見た早熟のタケノコ学生が頭を垂れて謝っていた。俺は適当に手を上げてそのタケノコをあしらう。そして歩を再び進める。

そのタケノコにぶつかったからか、一つの疑問が浮かぶ。

俺はいつ自分のことを俺と呼ぶようになったのだろう?









考えてみる。

思考する。


一人称という呼称の変化を。


僕から俺。


この変化は俺に何をもたらしたんだろう。

この変化はいつ俺にもたらされたんだろう。

この変化を俺はどう認識しているのだろう。


考えてみる。

思考する。

思考。

思い。

思い。

おもい。




つづく。


「カシャ。」

プロローグ1-3

考えてみる。

思考する。


一人称という呼称の変化を。


僕→俺。


この変化は俺に何をもたらしたんだろう。

この変化はいつ俺にもたらされたんだろう。


考えてみる。

思考する。

思考。

思い。

思い。



「カシャ。」



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