賃金規程の「定期昇給」という言葉にご注意 | エンプロイメント・ファイナンスのすゝめ

エンプロイメント・ファイナンスのすゝめ

雇用に関わるお金のお悩みはお任せ下さい!

こんにちは。
社会保険労務士・CFPの榊です。

お客様の会社の賃金規程をチェックさせていただく際、
とくに、何十年も前に作られたままになっている
就業規則に多いのですが、

--------------------------------------
第○条 (定期昇給)
 定期昇給は毎年△月に行うものとする。
--------------------------------------


と、書かれている賃金規定に出会うことがあります。

私は、このような規定があった場合、
経営者様の特別な思いがあれば別ですが、
そうでなければ、
必ず見直しをするようにアドバイスをしています。

なぜならば、
日本全体が右肩上がりで経済成長している時代ならば、
給料も毎年上がって当然だったのかもしれませんが、
長引くデフレ、国際競争の激化により、
おいそれと毎年賃金をアップさせられる時代ではなくなりました。

多くの会社では、従業員もそのことを理解し、
業績が厳しい年には、
今年は定期昇給なし、ということにしても、
理解は得られたかもしれません。

しかしながら、
万一、モンスター従業員みたいなのが紛れ込んでしまった場合、
この賃金規程を盾にして、
「昇給がないのはおかしい!」
と、強硬に主張してきて、
トラブルを引き起こす口実に利用されるリスクがあります。


更に言えば、会社の業績がさらに厳しくなった場合は、
会社存続のために賃下げが不可避となる場合もありますし、

会社全体の業績は悪くなくても、
勤続年数だけで昇給してきて、
ろくすっぽ仕事をしないのに
高い給料をもらっている中高年社員がいた場合、
若手社員の不満やモラルハザードにつながりかねません。

ですから、賃金規程を改定し、
定期昇給は毎年当然に行われるものではなく、
「据置き」や「減給」もあるのだということを
従業員に周知させるべきなのです。

従業員に良い意味での緊張感を与えることもできますし、
しっかり成果を出した者に厚く報いることで、
モチベーションを引き出すことにもつながります。

(だだし、限度を超えた成果主義は逆効果ですので注意ください)


賃金規程の見直し例としては、

---------------------------------------------
第○条 (賃金改定)
 賃金の改定は、毎年△月に行うものとする。
改訂とは昇給、据置き、降給を含むものとする。
---------------------------------------------


といったような形になります。

ただし、むしろ注意しなければならないのは、
実際の運用面においてです。

客観的な評価基準に基づいての降給なら問題ないですが、
評価者の好き嫌いなど、恣意的な理由で、
特定の者だけ降給させたり、昇給させなかたりした場合は、
トラブルに発展する恐れがありますので、
制度を導入することだけが重要なのではなく、
公正な制度運用をすることもまた、同じくらい重要なのです。