この作品はフィクションです。
実在する人物・団体・テレビ番組等とうは関係ありません。
妄想の世界と現実を混同しない、かつ、妄想の世界に理解ない方には漏らさないで下さい。
あたなとわたしだけでこっそり楽しむ場所と理解してお読みくださいませ。
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
昔ちょっと関わりがあったハーフの彼が、全ての仕事を一度降板してイギリスに留学するというニュースを聞いて、意外だな~と雄輔は思った。
安定を好むようなタイプだと思ってたのだけど、まさか夢を追っかけて海外に行くなんて。
ビザの都合とかで一年半で帰ってくるらしいが、昨今増えた芸能人の海外留学の中で、これだけ具体的に目的や期間を明言するのは珍しいらしい。
そういや、あいつも今は海外か。
馴染みの弟分の顔を思い出し、唸るように顔を顰めた。
あの一件がなけりゃ、あいつは俺らに事前に何も言わずに海外に行ってしまってた可能性が大である。
何でも口にしたがる自分と、自分の計画は外に漏らそうとしない彼。
こんなところも全く違うのか、と面映ゆくなる。
黙って行くつもりだったとしたら、あの時、集合を掛けたのは意味があったというわけだ。
自分の用は全く成さなくなってしまった、あの夜の飲み会に。
「ごめん雄ちゃん、それ、俺は無理だわ」
パパと慕う某プロデューサーと、その番組に関わったスタッフや当時のアニキ的存在だった人の前で、彼は、直樹は雄輔の要望をあっさりと蹴ってくれた。
雄輔以外のその場にいた大人たちは、やっぱりな~と言いたげな苦笑を浮かべている。
ただ一人納得いかずにどんぐり眼になっているのは、持ちかけた雄輔だけだった。
「え、なんでなんでなんで~~!」
まるっきり子供みたいな口調でしがみ付いてくる雄輔は、直樹が無理と言った理由よりも無理と言われたことに驚いてしまっていた。
三人で固まっていた頃、直樹は雄輔の子供みたいな我儘や甘えに『仕方ないなぁ』と言いながらも目尻を下げて答えてくれた。
雄輔のオネダリは大抵叶えてくれた。
それが、数年振りくらいのお願いをあっさりと断られてしまったのだ。
やっぱり年月ってのは人を変えてしまうのだろうか。
「あんまり人に言ってなかったんだけど、中野の頃は俺、ロスにいるもん。
NHKならこっちに居るかもしれないけど、渡米が早まる可能性もあるからその時期微妙なの。
だから、羞恥心の復活には協力できない。・・・ごめんね」
すっかりおっさんくさくなった顔で、だけど子犬みたいな瞳はあの時のままで。
直樹は済まなさそうに雄輔の顔を覗き込んでそう告げた。
ああ、いろいろ変わったけど、結局根本は変わってない。
それは多分こいつも自分も同じなんだろう。
「予定があんなら仕方ないかぁ。せっかく三人でまた揃えるかと思ったんだけどなぁ」
語尾が細く高くなる。
悔しさと言いうより心底残念だという気持ちが籠る口調に、直樹はもう一度ごめんねと繰り返した。
自分たちのデビュー曲をカヴァーした。
10年分の想いも籠めてのリメイクだ。
出来ればこのタイミングで、もう一度三人で公の場所で歌いたいと、そう思ってしまうのは年寄りの懐古主義なのだろうか。
「やっぱつーのさんの言う通り、次に三人で揃って歌うのって、じーさんになってからの『あの人は今』的なヤツになっちゃうのかな?」
「それは俺も勘弁して欲しいんだけど・・・
」
「・・・ってか、なんで野久保はロス行くの?観光なら日程決まってるはずじゃん?」
品川の当たり前な質問に、直樹はゲッと言葉に詰まった。
一瞬返答に困る直樹を、雄輔がくりっくりの眼でじっと見詰める。
うるさく根掘り葉掘り聞かれるより、無言の圧力の方が突き刺さるのはなんでだろう。
「ちょっと具体的には言いにくいんだけど、武者修行というか、今後の勉強と指南のために行ってみようと思ってて、出来れば長期で行きたかったんだけど、ビザの問題とか手続きがあるからやらそんなに長いのは今回は無理そうだったのね。とりあえず一度様子見と現地の状況みたいなのを自分で実際に見て、それでこの先のことを考えようかな、って」
あまり自分から話さない直樹だが、自分のことを一旦話し出すと長い。
ちゃっちゃか話された内容を雄輔は頭の中で必死に噛み砕く。
先に事態が飲み込めた神原は、何かを思い出したかのように苦笑いを浮かべていた。
「えっと、それってノックが外国に行くってこと?」
「外国には行くって言ってるでしょ」
「じゃなくて!ずっと向こうに行っちゃうって話?!」
「だから、どうなるか分からないから一度行ってみることにしたんじゃん。
も~~~、この話、まだ内緒なんだから絶対に他で話さないでよ」
「内緒って、俺にもかよっ」
「相談しなかったのは悪かったけど、雄ちゃんからうっかり情報が漏れそうで怖かったんだってば」
確かに、と同席した大人たちが一斉に頷く。
「なんでみんな、そこで納得するわけ?!」
「そこんとこ自覚してないから、野久保も言うに言えなかったんだろ」
品川の的確なツッコミに、雄輔は頬を膨らまして抗議した。
事を眺めていた神原にしてみたら、直樹は雄輔の口が堅かろうがうっかりだろうが、誰にも言わずに海外に飛んだだろうと、そちらを突っ込みたかった。
自分の内でなんでも決めて、他の誰かに相談して決断が鈍ることのないように行動に移して。
見かけに寄らず、あーゆーのが一番ヤラかすタイプやわ。
そう紳介が独り言にように呟いていたことを懐かしく思い出す。
「ところでさぁ、つるのには連絡しなくて良いの?さっき繋がらなかったから後でかけ直すって言ったきり放置だろ、雄輔」
「あ」
「もーーっ、信じらんない!自分から声かけといて無視って有り得ないでしょ!?」
「だから、LINE来てたの気が付かなかったってなんべんも言ってんじゃん。しつけーんだから」
駆け付け一杯。
額に汗の玉浮かべて、相当慌ててきたのが分かる。
懐かしい人集めたよ、なんて予告されてたのだから、剛士だってこの集まりを楽しみにしたのだろう。
仕事の都合で合流が遅れるのは致し方ないとして、行きたいのに行くべき場所が分からないというのはかなり焦れたはずだ。(お気の毒様)
「雄ちゃん、前もって剛にぃにお店の場所を教えてなかったの?
直電じゃなくてもメールとかLINEとかで入れとけば通じたでしょうに」
「あ、そうしときゃ良かったんだ」
久し振りに雄輔の言動で頭痛を覚えた直樹だった。
が、さらに頭痛を加速させる質問が剛士から飛ぶ。
「そんで?ノックは誰と結婚したんだっけ?名前は?」
「いゃしてないよ(笑)💦ほらもぉ。ゆーちゃんなんとかしてこの人ぉ😭💦(笑)」
相変わらずな兄貴たちに、やっぱり自分がしっかりせねばならぬのかと久しぶりの感情を思い出した。
そういう直樹も自覚ないだけで相当なもんなのだが。
「だってさぁ、最近の羞恥心集合って誰かの結婚式とかそーゆーときばっかじゃん。
てっきり俺はノックからオメデタイ話が聞けると思ったんだけどなぁ」
「オメデタイ話じゃないけど、違う話はあるよな」
「ほら雄ちゃん!そうやって話を広げる~~」
「え?ナニ?なんかあるの?ボキにもちゃんと教えてっ」
「あーもー、集まるタイミングが悪すぎだよ~」
「タイミング悪いってのは俺のセリフだって」
「だ・か・ら、俺にも分かるように説明しろっての!」
十年一昔と言うらしいが、こいつらの場合は十年一日だ。
見てくれとか関わっていることとか、そういったものは確かに時間と共に変わって行った。
だけど集まればあの時と何ら変わりない、まるで昨日も明日も同じ調子でつるんでいそうな彼らの姿に、同席した者は安堵に似た安らぎを覚えたのだった。
後日、直樹の元に剛士からLINEが入った。
武者修行のことを突っ込まれるのかもと思うと、少ながらず憂鬱な物が湧いてくる。
決して悪いことをしているわけではないのに、後ろめたさがあるのはなんでだろう。
さてどう切り返したものかと警戒しながらLINEを開いてみると、剛士は例の武者修行には全く意を関してない様子だった。
今更直樹の一足飛びの行動など驚きもしない、というのが正しいところである。
彼からの用件は、捉え方によっては直樹の渡米を快く思ってくれるようにも読み取れる内容だった。
『直樹が良いタイミングで外国行くことになってて助かったよ。
肝心の直樹が居ないんだったら、雄輔だって羞恥心のサプライズ復活を諦めるしかないだろ』
『久しぶりに三人でワーキャー言われたい気持ちもあるけど、雄輔のライブでそれやるのって公平じゃないもんなぁ。
やっぱ三人で次に並ぶのは直樹の結婚式か、じーさんになってからの『あの人は今』だな(笑)』
剛士も薄々その話が出ると予想してたんだろう。
デビュー10周年で雄輔が羞恥心をカヴァーした。
ならばどこかで三人一緒に、と思っても無理はない。
だが、
これは遊助のツアーであり、訪れる殆どが雄輔ファンである。
青や赤の推担も居なくはないだろうけど、やはり自分らのファンも同じ条件で見れる状態でやりたい。
とはいえ、それだけの理由で無碍に断るのも気が引ける、というのが剛士の本音だ。
実は直樹も、無理をすればNHKくらいだったら参加出来た。
折角の雄輔のお祭りに花を添えてあげたい気持ちもあったのだが、春のファンクラブイベントで拙い自分の歌に喜びの声援を送ってくれたファンの顔がちらつく。
その時に出会える出会えないはどうしても人によって別れてしまうかもしれないが、せめて誰のファンであっても平等にチャンスがあるときに実行したかったのは直樹も同じだった。
「ま、おかげで僕も今年の遊助ツアーの参船は見送んなきゃいけなくなったけどさ」
ちょっとだけ着てみたかった、あの衣装。
何年経っても変わらずに元気ですと、あのとき関わった全ての人に三人の姿を見て欲しかった。
でもそれは、またいつか、だ。
まだまだ成長して、それからでも遅くはあるまい。
さて、と直樹はスマホを持ち直した。
剛士にどんな返事を出そうかと文字の上で指を忙しく動かす。
ちょっとイタズラめいた気持ちを込めながら。
『次に三人が揃うのがいつになるか分かんないけど、振り付けちゃんと覚えておいてね。
こーゆーのって忘れたころにやってくんだから』
end
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
今となっては本当に雄ちゃんが羞恥心復活をやりたかったのか疑問なんですが、これは妄想だってことで一つ大目にみておくんなまし。
タイトルは困ったので、某ミュージシャンの歌の一節。
今日(火曜)にこんな話をアップしちゃったから、明日の連作はお休みしま、せん。(笑)
あの話、あまりに展開遅すぎて終わる気がしない・・・。( ̄_ ̄ i)