『お台場戦隊ヘキサレンジャー~最終章~』64 | 逢海司の「明日に向かって撃て!」

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「・・・、どうせなら、仇の一つでも取ってから死んでやるよ」


吐き捨てる言葉と共に剣を構えたテラは、全力出し切って座り込んでいた剛士に向かって飛び出した。
咄嗟に剛士も応戦するため身構えようとするが、戦いが終わったと気を抜いていたところからでは体制が整うはずがない。
なんとか己の剣に手をかけるところまでは行き着けたが・・・。


テラの全体重をかけた剣が、半月の弧を描いて振り下ろされる。
だが彼の執念に近い一太刀は、無情にも宿敵の剛士に届く前に打ちとめられた。
テラに残っていた力以上の気迫が、受け止めた剣から伝わってくる。
そうまでして彼を突き動かすものがなんなのか、分かるような気もしたし、理解したくない気もした。


「・・・邪魔してくれるなって言ったはずだぜ、大海ちゃん」


テラの渾身の一撃を受け止めたのは、それまで傍観を決めていた大海だった。
テラが欲し焦がれていたあの剣で、大海は彼の全てを受け止めていた。


「もう勝負はついたはずだ。悪あがきはよすんだ、テラ」
「どうだかな?俺はまだ負けを認めてないぜ」


弾いた勢いに乗せて、そのまま大海に向かって幾度と剣を振り下ろしてくる。
だがそこには、大海を圧倒させたかつての力は存在してなかった。


「君たちを追いつめた人間や、不要と烙印を押した人間たちを許せない気持ちはわかる。憤って当然だ。

でも君は、その感情のままに振りあげた拳で何を訴えたかったんだ。

自分たちの存在か?強さか?それともただの復讐か?その先の、いったいどんな場所に辿り着きたかったんだ」
「壊すんだよ、歪んだ常識に満ちてるこの国の全てをな!」


激しく行き来する互いの刃の間を縫うように二人の声が響いた。
そんなヒートしていく攻防の中でも、大海の瞳は熱に侵されずに冷静な輝きを保っている。
何が自分を動かしているか、その源となるものを見失わずに。


「壊して、そのあとをどうする?導くものがいなければ、さらに弱肉強食の世界が進むだけだ。

君は、未来を願ったことがあったかい」
「未来なんて・・・!」
「力の差で負けたんじゃない。

行き着くべき未来を見定めている羞恥心に、自分がどうなりたいのかも見つけられない人間が勝てるはずはないんだ!」


受け身に徹していた大海だったが、その言葉を転機に自ら前に出てテラに攻撃を加えた。

思いがけず素早く動く大海の剣筋にテラが翻弄される。
もはやテラにはまともな反撃に出る力は残っていない。
彼の剣先がふらついたのを見逃さずに大海が大きく払うと、テラの剣はその手から離れ遠く弾き飛ばされた。


武器を失ったテラの首元に向けて、大海が剣先を示す。
いつかのときと、まるっきり逆の立場だった。


大海は構えた剣を微動だにもさせず、ただ寡黙なままの眼差しを向けていた。
深く、そして揺るぎない瞳。
そこには言葉にすることのない彼の心に抱いた真意が、満ちているかのよう強く瞬いていて。
その強さが、己の信念を信じとおせる強さだと、ここまできて認められないほどテラも愚かではなかった。


「大海ちゃんの言うとおりだな。

自分のための未来が描けない俺たちに、この国をひっくり返すなんて出来っこなかったんだ。
でも、そんな野望でも持ってなきゃ、自分が何のためにここにいるのか、それもわかんなくなっちまって・・・」


ぐっと唇を噛み締める。
悔しい気持ちは、いったい何に対しての悔しさだろう。

自分を利用した人間か、陥れた輩へか、それとも己自身の不甲斐なさか。


でもそれももう、どうでもよい気がした。
テラは仄かな笑みを浮かべると、改めて大海のまっすぐ過ぎる視線を正面から捉えた。


「俺、お前が男でも女でも、大海ちゃんに会えてよかったよ。できるもんなら、次は普通に・・・」
「テラ!」


ゆらりと、まるで風に遊ばれているように、テラの身体がゆっくりと前のめりに崩れていった。



続く。