『お台場戦隊ヘキサレンジャー~最終章~』48 | 逢海司の「明日に向かって撃て!」

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それは一瞬の判断だった。

雄輔の加勢に行きたいのに、敵に足止めを喰らって動けない剛士と大海。
大海自身は特に、自分がサンを振り切って行けるとは思えなかった。
ならば、考え方を変えるしかあるまい。

サンと対峙しながらも、まだ未使用だった投擲用の小型ナイフを取り出す。
大海がナイフを、初めての武器を取り出したことに、サンも多少の警戒の色を示した。
その隙を見逃さずに、大海はマジシャンのように構えたナイフを颯爽とした動きで投げ付けたのだった。

・・・・、剛士と戦っているテラに向けて。

こんな攻撃は子供だましも良いところなのだが、剛士に集中していたテラにはまさに不意を突かれた形になった。

焦りも含め飛んできたナイフに対処する間に、剛士が危機に瀕してる雄輔に向かって飛び出す。

続くように大海も飛び出し、策略に嵌ったサンとテラの前に立ちふさがった。


稼げる時間は限られている、どうかその間に・・・!


大海の機転の効いた行動のおかげで、剛士は落ちていく雄輔を間一髪で捕まえられた。

が、体勢が悪い。

片手で雄輔を捉え、残った片手で自分と雄輔を支えている状態なのだ。


大海の援助は期待できない。いや、彼がどこまであの二人を押しとどめていられるかも問題だ。

崖っぷちに捕まっている左手に力を込め、どうにか足場を確保できないかと壁面を探る。

なんとか這い上がらなくては、このままじゃ二人仲良くクレパスの下にまっさかまさだ。


「ちっきしょ・・・!」


大海がたった一人で耐えているのかと思うと、なおさら急がなくてはと焦るのに思うように力も入らない。

どうやら剛士も、先ほどまでのテラとの戦いで体力を相当消耗させられていたようだ。


「・・・つーさん」

「後にしろ、今、忙しい!」

「ね、マジで!大事なことだからっ!!」


なんだよ、と右手で繋いでいる雄輔を振り返る。

不安定に剛士の手にぶら下がっている雄輔は、こんな事態だというのに穏やかに笑っていた。

場違いすぎて、息を飲むくらいにこやかに。


「いろいろ、あんがとね」

「おま、何言って・・・!」


そっと雄輔が翳した手の平で、光が強烈な光量を伴って破裂した。

しまった、と思った時には、視界の中が全部真っ白になる。

弾かれた右手、反射神経だけで握り直そうとした掌は、ただ空を掴むだけだった。


「ゆうす・・・っ」


視力が正常に戻ったときには、もう雄輔の姿は確認できなかった。

ただただ暗い穴だけが、どこまでも続いているだけだった。


「ゆうすけーーーーーっ!!」


ぱっくり割れたクレバスの中を、剛士の罅割れた叫び声が木霊して落ちていく。

それを受け止めるモノも返してくれるモノも、どこにも存在しえなかった。


噛み切るほどに唇に歯を立て、剛士はぐっと空を見上げた。

身体を支えていた左手に力を込め、壁面を駆け上るようにしてその裂け目から脱出する。

登りきった目の前では、大海がテラとサンからの弄ばれているような攻撃に耐えていた。


素早く剣を引き抜き、容赦なく攻撃を続けるテラに対応する。

背中に庇った大海の緊張が一瞬緩んだのを感じ取れたが、すぐさま別の緊張が彼を取り込んだことも伝わってきた。

気が付いたであろうに、彼は何も剛士に問わない。

ここに雄輔が居ないことを・・・。


「大海、気を抜くなよ!」

「っ・・、はいっ!」


分かっている、今は他のことに気を捕らわれている場合ではない。

彼らの攻撃を、力の暴走を、少しでも封じなくては。


まずはサンからあの勾玉を奪い返す。

そう気合を入れ直し、件のサンの姿を捜した。

程よくの距離から相変わらずの不敵な笑みを浮かべて大海を眺めている。

じっくりと、仕留める獲物に狙いを定めるように。


「本物の太陽の力を見せてやるよ」


そう行ったサンが空に向かって翳した掌に、燃えるような光の球が出現した。

まさかと思う間もなく、それは急激な成長を始める。

そこから感じられる秘めたエネルギーは、雄輔が作り出した光の球の比ではない。


驚きが勝った大海の足は逃げるという行為に辿り着けずに、傍観として質量が増し続ける光の球に捕らわれていた。

圧倒的な力の前で、人は無力になる前に『無』になってしまうのか。

サンの腕が大きく撓ったときに、初めて自分の置かれていた事態を理解したのだが、遅かった。


「大海!!」


破裂した光の中で、唯一現れた影。

それが自分を庇うために飛び出してきた剛士だと気が付いたときには、全ては光に飲み込まれていた。





続く