以下の文面はフィクションです。
実在する人物、団体、組織等とは一切関係がございません。
似てる人が居ても、それは偶然の一致です。
ですので、どっかに通報したりチクったりしないでください★
いろいろと問題発言多いお話なので、笑って許せる方のみお先にお進みください。
・・・、頼むよ、マジで (ToT)
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膨らみ始めた桜の蕾を、月の仄明るい光が照らしていた。
プラプラと歩く雄輔、その少し前ではっきりした足音を響かせる直樹。
いつも通りでありながら、やっぱり頭から離れないのは大海と剛士のことだった。
「なんか、考えてみるとすごいね」
星なんて殆ど見えない空を眺めながら、直樹が小さく呟いた。
心持ち上を向いた直樹の横顔が、なんだかひどく真摯に思えて雄輔は目が離せない。
いや、目が離せないのは今日に始まったことじゃないんだけど・・・。
「だってさぁ、あれって親ちゃんなりのプロポーズだったってことでしょ?。
すごいよね、告白とプロポーズと、保護者への挨拶を一辺にしちゃうんだから」
自分の解釈に満足してるのか、とても浮かれた笑顔で直樹は雄輔に向かって振り返った。
なるほど、そういう捉え方もあるのか。
大海に気持ちを伝えてないのなら、全部を一時に済ませたことになる。
・・・・、完全な事後承諾になるが。
「俺としては親太郎があんだけ思い切ったことをするなんて、予想外もいいとこだったな」
「そうだね、でも、親ちゃんも大海のことをずっと気にかけてくれてたのは本当だから・・・」
ふぅ、とため息が直樹の厚ぼったい唇から零れる。
珍しいな、とその口元に気を取られていると、気後れ気味な言葉が探るように発せられた。
「大海、どうすんだろ。
あの子、そんなそぶりを見せないようにしてたけど、きっと剛にぃのことが好きだったんだと思うんだよね。
剛にぃだってさ、大海のことを特別な存在だと思ってるはずだよ」
「ノックは、あの二人はそーしそうあいだって言いたいの?」
「そうじゃなくて、ううん、そうとも言うんだけど、なんかこう、必要以上に近寄っちゃいけない、ってお互いが警戒してるみたいなとこあるじゃない?なんか変なブレーキを踏んでるっていうか・・・」
その微妙なバランスのところへ、親太郎の爆弾発言だ。
これまでの関係をギリギリのところで保っていた二人は、あの告白を受けてどう対処するのだろう。
何もなかったふりで流すのか、これをきっかけに大きく変化していくのか・・・。
「お前さ、人のことはよく見てんのな。
でも自分のことは、どうなのよ・・・?」
忍び寄るような雄輔の言葉に、直樹はゆっくりと振り返って含みのない笑みを浮かべた。
「ボクは僕だよ?それ以上に何かある?」
涼しいくらい、意に介して無いまっさらな笑み。
雄輔が言わずも察して欲しかった、一番尋ねたかった部分に全く触れようとしてない、とてもずるい微笑み。
いつだってお前は、そうやって深みに嵌る前に予防線を引こうとするんだ。
「お前、俺を甘く見るなよ?」
分かってるよ、それくらい。
直樹は軽く肩をすくめてそう返事した。
一度絡み付かれたら、なかなか逃れ出ることが出来ない人。
だからまだ捕まりたくない、捕まったら彼から離れられなくなるから。
自分を見付けるまでは、この人の手には落ちたくない。
・・・、って考えていること自体が、しっかり捕まってる証拠なんだろうなぁ。
直樹は自嘲しそうなのを堪えて、もう一度雄輔に爽やかに笑って見せた。
もう少し彼を敬遠しておこう、彼に気持ちが傾いていると知られたら、図に乗って甘えて来るに違いないんだから。
「ほら、置いてっちゃうよ?」
「っんだよ、人の気も知らないで!」
慌てて雄輔が直樹の隣に並ぶ。
それだけで自然と頬が緩むのは、もう慣例としか言いようがない。
どちらともなく笑い声を漏らして、さりげないくらい小さく寄り添って。
今はただ、居心地が良いこの距離を保っていたかった。
ちょこん、と目の前に正座している大海を、剛士は改めて観察し直した。
子供だ子供だと思っていたが、そう決めつけていたから猶更子ども扱いしてしまっていたが、大海ももう大学生だ。
きっちりと大人の端っこに入る歳になっている。
それなりに、容姿だって・・・。
「親太郎が慌ててプロポーズしてきた気持ちも分かるな」
「え?」
不意な言葉に、大海は不思議そうに瞳を丸めていた。
まだどこか、警戒心のようなものが残った顔であったが。
「お前、少し目を離した内にどんどん綺麗になっていくじゃんか。
傍で見てた親太郎なら、そりゃ他の奴に取られるかもって焦って実力行使に出るよ」
それだけのことなのだろうかと、大海は納得出来ない様子で首を傾げた。
親太郎の気持ちに気が付いてなかった分、驚きよりも理解出来ないという感情が前に来ているようだ。
難しい顔で考え込んでいると、やはり大人びてきたとしか言いようのない表情が浮かぶ。
複雑な環境、で思春期を過ごしてしまったのだから、精神的に成長するのが早いのは仕方のないことなのだが。
「大海」
呼ばれて顔を上げると、瞼にかかる前髪を一筋、持ち上げるように軽く引っ張られた。
何の戯れかと驚いたままで見詰めると、剛士がなんだか嬉しそうに笑ってる。
嬉しそう?いや、違うな、でもなんだかはにかんだように笑っている。
面映ゆい、とでもいえば正しいのだろうか?
そんな彼が、また少し笑い皺を深くしながら告げた。
「あまり急いで大人になるな。もう少し、お前の保護者で居させてくれよ」
その言葉に、どれだけの意味が要約されていると思って良いのだろう・・・?
どれほどの感情が籠っている判断して、受け止めて良いのだろうか。
ギリギリのところで本音を煙に巻いてしまうこの人の心の内は分からない。
だけど、告げるのなら今なのだと、大海も小さな覚悟を決めた。
「・・・あの日、父さんと母さんが亡くなったあの日、僕が無防備なままで冷たい雨の中に放り出されたようでした。
どうにも避けようのない悲しみの雨が後から後から身体に降りしきって来て、生きていく体温がどんどん奪われていくみたいで、だけど何も出来ずただ雨に打たれているしかなかった僕を、兄さんは見つけてくれて、懐に隠すように僕を雨から守ってくれました。
兄さんが、ずっと僕を悲しみから遠ざけるように守ってくれていた・・・」
ずっと、傍らには剛士がいた。
悲しくて眠れない時も、寂しさからどうやって抜け出したら良いのか分からなかったときも、剛士がいつでも傍で見守っていてくれた。
彼一人がいてくれることが、こんなにも心強く自分を支えていてくれたと、彼は知っているのだろうか。
こんなにも自分の中で、彼の存在が大きくなっていることを。
「兄さん、僕は・・・」
「お前は気が付いてなかったかも知れないが、お前が雨に打たれてどうしようもなかったとき、親太郎はそっと後ろからお前に傘を差し出してくれてたんだ。
不器用なあいつらしく、余計なことは何もしないでただ傘を差し出していた。
親太郎だけじゃないさ、直樹も雄輔も、昔からの友達やお前の親戚の人たち、沢山の人がお前の身を案じて手を差し伸べていてくれたんだ。
一番近くに居た俺ばかりが目立っていたかもしれないが、お前は大勢の人の愛情に支えられてたんだぞ」
あ、と小さく呟いた後、大海は自分が告げたかったことを声にすることが出来なくなってしまった。
知っていた、剛士ばかりが頑張って守ってくれていたわけじゃない。
面倒な手続きを代行して、そっと援助してくれた親戚たち。
変わらずに付き合ってくれた仲間、大海に合わせるように一緒に過ごした直樹や雄輔。
そして。
あの日、一番最初に大海の元に駆け付け、そのあともずっと影から自分の様子を伺っていてくれた親太郎。
大海が負った痛みを同じように感じてくれたあの深い淵のような瞳は、今となっては思い出す大海の胸を苦しめる。
どれほど自分が、寡黙な愛情に包まれて生きてきたのか、それは身に染みてよく分かっていた。
だけどそれでも、自分が一番と感じてしまったのは、そう心が決めていたのは確かにこの人、一人だった。
「僕は、まだまだ未熟者らしいや・・・」
だから、まだ伝えられない。
まだ、守られる立場でいる内は、自分の気持ちなんて伝えても伝わる訳がない。
「ねえ、兄さん、僕がもう少し成長するまで、傍で監督しててくれませんか。
兄さんが手放しても大丈夫だって認められるくらいになるまで、僕の傍に居てくれませんか・・・?」
そのときが来たら、僕は僕の想いを告げますから。
だからその時まで、もうしばらくあなたのもとで雨宿りさせて下さい。
大海の想いをどれほど剛士は勘付いているのだろうか。
大海の懇願ともいえる申し出に彼は大らかに微笑んで、幼い子供にでもするように大海の頭を撫でてやった。
それは意固地なくらいに保護者の立場からの返答だった。
これは執行猶予。
胸に抱いた想いに決着をつけるのを先送りにして、今の穏やかで平穏な関係を今しばらく楽しみたいという逃げの時間。
この時間に意味が生まれるのかどうか、それはまだ分からない。
だけど許されるなら、もう少し彼を独占していたかった。
「さて、そろそろこの宴会の後片付けをしなくちゃな」
「兄さんたちばかり楽しんで、ずるいですよ」
「楽しんでって言うか、俺の愚痴聞いて終わってたけど・・・。やり直ししなきゃ、あいつら怒るかな?」
「そうですよ、僕だって雄輔さんや直樹さんと話したいことがあったんですから。」
「つか、その前にお前は親太郎と話つけなきゃまずいだろ?」
「それはそうなんですけど、何から話せばいいのか・・・
」
「二人っきりで話すなら、襲われないように気を付けろよ。あーゆーむっつり系は追い詰められたら何をするか分からん」
「ちょっ・・・、にーさん!!」
からかうように嫌らしく笑う剛士に、大海は少しだけ怒ったふりの声をあげた。
笑いながら食器をまとめて台所へ向かう剛士の後を、大海も慌てて追いかけて文句を浴びせる。
そんないつもと変わらない、本物の兄弟のように遠慮のないやり取りが、じゃれあうような近さで繰り広げられていた。
この暖かな時間が永遠でないことは分かっていた。
いずれ何らかのものに、形を変えなければいけないということを。
ただ今しばらくはこうして何も考えず、相手の存在に甘えていたかったのだ。
逃げ込んだ雨宿り。
いつか晴れたら外へ歩き出さなければ。
だからもう少しだけ雨宿り。
歩き出すのに十分な支度が整うまで。
あなたのもとで、雨宿り・・・。
終わり
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これでお終い~~?!\(*`∧´)/、とか怒らないでくださいまし。
狙いは『結局誰も引っ付かなかった』ってところだったんです。
居心地の良い微妙な関係を、今後、どう展開させるのか。
それはみなさまの妄想力にお任せします。
たぶん親太郎もあっさりは引かないだろうしね、つーさんもいろいろ考えてそうだし?
結末は無限です。
で、実はこの話、SだMさしさんの曲の『雨宿り』にインスパイアされたお話だったんです。
ぜーんぜん歌詞の内容と違う展開ですが、この歌が元でふと生まれた話には間違いありません。
まさかフォーク界の巨匠も、自分の歌がびーえるになっていたとは夢にも思うまい。(←謝りたまえ)
では皆様、良い週末を~~。