それは唐突に突然に、もっと言うなら藪から棒なくらいの不意打ち加減で送られてきた。
そういえば、なんとかは突然に、とかいう歌が一昔前にはやったが、ドラマチックさでは良い勝負なのかもしれない(何基準の話だ?)
まあ、敵からの電信なんて突発的で当然なのだが、その内容の勢い、というか、相手からの意気込みが突飛だった。
『ヘキサレンジャー!よくも俺を誑かしてくれたな!!』
と、言われても心当たりがないので、メンバーはなんのこっちゃと顔を見合す。
電信を送ってきたのはカオスのテラで、どうも彼は何事かに憤っているらしい。
彼の後ろで、笑いたいのを堪えているテラが映り込んでいるのも気になったが。
「誑かしたって、何かあったっけ?」
『惚けるな!ひ、ひろみちゃんが、ひろみちゃんが・・・』
「え?サッキー??」
『おとこだったなんて~~~!!
』
涙目のまま(実際はゴーグルで隠れて見えないが、そんな悲壮感な雰囲気が漂っていた)で絶叫するテラだったが、訴えられたほうは思わず無情な白けた顔で受け止めてしまった。
「なに、あいつやっと気が付いたの?」
「つーか、本気で女だと思っていたんだ。半分サッキーのことをからかってるんだと思ってた」
「だとしても、今更このタイミングで?」
『こらっ!こそこそそっちだけで話すな!!』
いろんな意味含めて噴火寸前のテラであったが、ユエのほうは我慢できなくなったのか、後ろを向いて肩を震わせていた。
あれは、確実にツボって笑っているときの震え方だな。
「それにしても、よく今になって認めましたね」
『ああ、すみません大海さん。あなたがお休みの間にちょっと隠し撮りをさせて頂きました。
あなたが男性だと証明できる、決定的なモノを』
ユエの衝撃的な告白に、今まで会話に参加してなかった品川が、口に含んだお茶をぶっ!と吹き出した。
目を剥きだして固まったのは剛士で、驚愕して顔を真っ赤にさせたのが大海。
にやにや~~:( ̄∀ ̄)、とイヤらしい笑みで顔をにまけさせたのが雄輔であった。
「け、決定的な証拠って、いったい何をっっっ!」
これ以上なく顔を紅潮させて叫ぶ大海に、ユエは穏やかに笑い返した。
『お財布の中から免許証を拝借して写真に撮らせていただきました。
免許証にはちゃんと性別が明記されているでしょう?って、そんな真っ赤になって、どんな想像をされたんですか?』
意味ありげに笑うユエは、含みを持たせた言い回しで誤解を誘った確信犯だろう。
つか、それで認めてくれるなら、さっさと免許証を提示すれば良かった・・・orz。
『と、とにかく、これで俺はお前らには何も捕らわれる物は無くなった!!
遠慮なくぶちのめしてやるから、覚悟しろ!』
「ちょっ、それはそっちの逆恨みじゃ・・・」
『言っておくが俺たちの最終的な目的は、この国が善しと認めているものが本当に正しいかどうか問うことだ!
その証明のために、まずはこの国の正とされているものを一度ぶち壊す。
『正義の味方』のシンボルである羞恥心を倒すことは、その一歩に過ぎん!
この国から力を奪うこと、そしてそこから真の正義を導き出すこと、それが俺たちの目指す道だ!』
テラがぶつけてきた言葉に、誰もが息をのんだ。
彼らの攻撃は、羞恥心への単純な対抗意識からだけではなかった。
この国を揺るがす意味を秘めていたのだと、今、はっきりと示されたのだ。
『俺たちの気持ちが本物かどうか確かめたければ、この前の石切り場にもう一度来い。
時間は三時間後だ。・・・・、ここまで言わせて、引いてくれるなよ』
電信は、一方的に切られた。
もう躊躇っている場合ではない。奴らは本腰を入れて動き出そうとしている。
「大将、出動の準備を整えて下さい。俺たちはメディカルチェックに向かいます」
席に着いた品川は、無意識に大きなため息をついた。
局面がやばくなってきたと、誤魔化して逃げる道は無くなったと呟いているみたいだった。
それも仕方ないことだろうと思いつつ、剛士は顔色を失っている大海にそっと近づいた。
「来れるか?無理なら今回は・・・」
「行きます。いえ、僕が行って止めさせます。それが使命ですから」
打ち返すほどの早い答えに、剛士は少しだけ笑みを見せて彼の黒髪をゆっくりと撫でた。
一度関わりを持ってしまった相手と、割り切って戦うのは彼には酷な話だろう。
だがそれでも、この道を選んだからには越えなければならない壁がある。
正しいと信じたモノを、貫き通す信念を持ち続けるという壁が。
「行くぞ」
その一言に、大海も雄輔もしっかりと頷いた。
本当の戦いが、今こそ始まろうとしている。
続く