「悪の一派、エアメタル大将のカンムリ!お前の相手は俺たちがするぜ!!」
威勢よく轟いた声に、一同は動きを合わせたように顔を上げた。
小高い丘の上、そこに立ち並ぶ5つの若者の影が・・・。
「古来より、悪の栄えた試しなし!!」
「教えてやろう、正義の心で!!」
「この世に蔓延る悪の影、討ってくれようこの顔で!」
「たとえ如何なる闇だとて、払って見せようこの愛で!」
「我ら正義と勝利の使徒・・・」
「「「「「新撰組、リアン!!!」」」」」
(決めポーズはお好きなように妄想してください。センターは森くんでお願いします)
心当たりのないメンバーの突然の登場に、この事態をどうすべきか一瞬見失ったのは敵も味方も同じことだったようだ。
何が起こっているのか整理しきれてない雄輔と剛士の元へ二人、そして思わず攻撃の手を停めてしまったカンムリの元に残りのメンバーが飛び出して行った。
「君らは、いったい・・・?」
「『新撰組リアン』。僕たちもまた、紳助さんによって集められた戦隊です」
まさか、と雄輔と剛士は顔を見合わせた。
そんな隠し玉が居たことなど紳助や神原からは何も聞いてない。ましてや、そんな気配さえも感じなかった。
何時の間にこんな別働隊を集結させていたのだろうか。
「詳しい説明は後程いたします。まずは彼を成敗しないと」
緊張した面持ちで見上げた先では、彼の仲間がカンムリと対峙しているところだった。
不意を突かれた登場に驚き、接近を許してしまったのはカンムリのミスだろう。
あの至近距離では得意技の雷を落とすことも出来ない。
剛士たちの元へ降りてきていた若者たちも、仲間と合流するべく飛び出して行く。
歪んだ顔で歯ぎしりするカンムリを、五人の戦士がほぼ等間隔で取り囲んだ。
四方を塞がれ逃げることが不可能と悟ったカンムリは、一か八かで再び雷を落とそうと空に手を翳す。
だが、それよりもリアンたちの行動のほうが早かった。
カンムリを囲んだ彼らが構えると、現れた光の線がそれぞれを繋ぎ、五芒星の形を浮かび上がらせる。
その五芒星の結界の中に閉じ込められた形になったカンムリは、最後の手段と一際大きな雷を、自信もろともリアンたちの上に落そうとした。
空が、光る。
見守っていた剛士と雄輔が息をのんだ、その瞬間。
「「「「「成敗!!!」」」」」
落ちてくる稲妻の光を押し上げるように、五芒星全体から目も眩む光が発せられ、空へと駆け上がって行った。
止まらぬ轟音と大気を揺るがす衝撃に、さすがのカンムリも抗う術なく彼方に吹っ飛ばされる。
『おぼえていろよ~~』という、定番の捨て台詞を残して・・・(苦)
一連の攻防を静観していた『影』も、新戦力のリアンの登場は予期してなかったようだ。
「アニキ、あいつら・・・」
「大したことはない、ただの子供だましだ。だが、面白い物を持っているようだな」
初出動を無事に終えたリアンは、得意満面な明るい表情を晒して勝利の余韻に騒いでいる。
その余裕がいつまで持つかな?と謎の影たちは侮蔑の眼差しを送っていた。
詳しく話を聞かねば、と剛士らはリアンを基地に連れて帰った。
初の実戦を終えた彼らは興奮冷めやらぬ状態で、移動の羞マッハ号の中ではあの雄輔に『うるせぇ!』と叱られたくらいである。
基地に着くと、大海を始め留守番組に揃って出迎えられた。
珍客を連れて帰ってきた、ということもあるのだが、珍しく危なっかしい戦いぶりに肝を冷やした連中が、一言文句を言いたくて集まっていたらしい。
「冷や冷やさせてくれるな。こっちは寿命が縮んだぞ」
石井の親心からきつくなる言葉にも、剛士は飄々とした笑顔で返した。
「たまには刺激的で良いでしょ?無事に帰って来たんだからうるさく言わないで下さいよ」
その軽口を誰もが苦笑しながら、それでも彼らしいと受け止めていた。
どんな危機の時でも、それを乗り越える自信しか持っていない彼らしい対応だ、と。
だが、たった一人、剛士のそんな『らしさ』を素直に認められない人物がいた。
ぐっと口を真一文字に結んだ大海が、真摯すぎる瞳を晒して剛士に近寄る。
力んで強張った、薄い肩が震えていた。
それが何を意味しているのか、分からないほど剛士も日和見ではない。
溢れてくるものが止められず、大海は顔を隠すように俯いて言葉を投げかけた。
稚く、堪え切れない想いの全てを乗せた言葉を・・・。
「一度出撃したなら、ご自分が生還することを最優先に考えて下さい。
あなたは、この世界を守ることを任された大切な人なんだ。どうか戦いの場では慎重であって下さい」
押し殺した声の訴えは、事実の内容で有りながら大海の建前でもあった。
彼の願いは、世界の平和よりもただ剛士に無事で帰ってきて欲しいという一点に要約されている。
その抑揚を必死に抑える彼の訴えは、痛いほどまっすぐに剛士の心に突き刺さった。
「ばーか、俺は無敵の男よ?そんなに簡単にやられるわけないだろ?」
「・・・分かってます。でも・・・」
震えが止まらなくなった大海を、剛士はその胸に抱き寄せた。
彼の不安から守るように、彼の不安を取り除くように。
「心配性だな、ヒロミちゃんは」
剛士の慰めるような言葉に、大海はようやく小さな息を吐き出す。
ごめん、と聞こえないように呟いて彼をもう一度強く抱き寄せた。
まだ耳に残っている。
ヒステリックに自分の名を呼ぶ、大海の叫び声。
二度と彼にあんな思いをさせてはいけないと、あんな切ない声をあげさせてはいけないと、剛士はその胸に強く誓いを刻み込んだ。
たとえ叶わぬ願いと知っていても。
続く(次は水曜日です)