゚・*:.。..。.:*・゚ これは、ちょっと未来の、そんで、少し不思議、なお話。゚・*:.。..。.:*・゚
つーのさんは開拓惑星に直樹たちが引っ越すの危ないからって心配してた。
未知の惑星に何があるか分からないし、開拓時代に居ついた人たちは野蛮だからって。
でも新星のスペースエアポートに着いて、オレは逆の驚きを味わった。
地球のメインエアポートとそんなに変わらないハイテクで綺麗な空港だったからだ。
「すっげ~~、きらきらぴかぴかしてる!」
「そりゃそうだよ、この星の玄関口だもん。設備は地球のと変わらないよ?」
「なんかオレ、つーのさんに騙されたかも・・・?」
予想と違ってしっかり進んだ文明惑星に、オレはちょっとばっかし戸惑いを感じてた。
もっと原始的な場所でサバイバルな風景を前提にしてたのに・・・。
「雄ちゃん、がっかりしないで。ボクたちが住むところはもっと地方なんだ。
だからここよりも、もっと自然が多いんだって。ボクも楽しみにしてるの」
ニコって直樹がほほ笑む。
そっか、直樹も楽しみにしてる場所なら、オレもきっと気に入るな。
だってマスターが笑顔なのが、オレらには一番うれしいんだもん。
そこから高速カプセルに乗って、小一時間。
どんどん目の前の風景が様変わりして行って、オレも直樹も、しっかり者の直樹のにーちゃん(本物)まで一緒になって窓の外の風景に目を奪われていた。
立ち並んでいた銀色のビル群はさっと消え去り、どんどん増えていく緑の中に多種多様な形をした住居が姿を現した。
四角いビルにばかり住んでいる地球の人からは想像もつかない、それぞれの個性的な家。
そしてそれもまばらになり、緑地が広がり森や山の合間を自然の川が流れていく。
何世紀か前は地球もこんなだったんだよ、と直樹のおとーさんが教えてくれた。
空はすうっと吸い込まれそうなほど青くて、太陽の日差しを遮るものは木に茂る葉っぱしかなくて、目に見えないあちこちにいろんな生き物が潜んでる。
なんだろう、オレ、ロボットなのにワクワクする。
目に映って変わっていく景色を、インプットするのが忙しくて何も他に考えられなくなる。
「雄ちゃん・・・」
直樹がぎゅって、拳を握ってた。
無意識の間に力が入ってしまっているようだった。
「ここ、すごく楽しそう・・・」
「おう!オレが居るんだから、どこに行っても楽しいぞ♪」
自信満々のオレの言葉に、直樹は困ったように笑っていた。
アレを人は『苦笑』って呼ぶのかもしれない。
だけどもっとくすぐったそうな、期待がこもっているような、とても前向きな笑顔だったんだ。
直樹のおとーさんが研究のために訪れたその土地は、とても素敵な自然に恵まれてて。
人工ではない紅葉とか雪とか、そんな季節がありありと肌で感じられる素敵な場所だった。
直樹にもすぐに元気な地元の友達が出来た。
大概は直樹と同じように、地球からの仕事の都合でこの場所に来た人の子供たちだったが、中には子供を自然のある環境で育てたいと、移住してきた人たちもいた。
つーのさんは心配してたが、みんなあったかくていい人たちばっかりで、地球での生活がうそのようにゆっくりと流れる時間の中を子供たちは駆け回っていた。
いや、大人もここでは時間の流れ方が違っているように見えた。
まるで終わらない映画のように、毎日が繰り返し輝いて、永遠にこのままかと錯覚するように穏やかで。
毎日が楽しくて、オレは直樹と楽しむことだけに集中してて。
オレは、自分の役割がどこかに飛んで行ってしまったことも、気が付いてなかったんだ。
続く