『ライオン~こころのこいぶみ~』番外 | 逢海司の「明日に向かって撃て!」

逢海司の「明日に向かって撃て!」

ご注意下さい!!私のブログは『愛』と『毒舌』と『突っ込み』と『妄想』で出来上がってます!!記事を読む前に覚悟を決めてくださいね(^^;。よろしくお願いします☆

以下の文面はフィクションです。実在する人物、団体、組織等とは一切関係がございません。

似てる人が居ても、それは偶然の産物です。

妄想と現実を混同しないように気をつけましょう。

ちなみに、今回は(やっぱり)基本がBLです。

苦手な人は避けてくださいm( _ _ ;)ドウモスミマセン


しょせん素人が書いてるモノなので、過剰の期待はしないで下さいね~~。





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「お話したいことがあるんですが」


二人だけが残った店で、崎本が改まってそんなことを言って来た。
雄輔やバイトの子たちと混じって馬鹿な話もしたりしてるが、根は慎重なくらいに真面目な一面を持っている。
そんな彼が真剣な眼差しで、物言いたげにじっと剛士を見詰めてる
色白な肌に際立つ深い黒い瞳に見詰められて、剛士は心臓が高鳴りそうになった。

高鳴る?待て待て、相手は男の子だぞ?こんなんで心臓が高鳴ってどうする?
確かにひろみちゃんは可愛いし美人さんだが、ボキはあいつらと違ってノーマルなのだ。
男の色香にやられるなんて、そんな馬鹿な話があるわけないじゃないか。

と、理性を取り戻そうとしてる剛士に向かって、切なく柳眉を歪めた崎本がつっ・・・と身を寄せてきた。


「すみません、こんな話することはないんですけど」


桜色の艶やかな唇が囁いた途端、何かが剛士の胸を打ち抜いた。
そりゃベタにズキューン!と。
深夜の照明を落とした店で、この悩ましげな視線は反則すぎる。


「ど、どういった話かな?」


動揺を隠し切れない上ずった声が零れた。
あまり尋常でない剛士の状態にも気が付かず、崎本は言葉の先を伝えるべきかどうか迷っているように口を噤んでいる。


これは、もしや、俺・・・。
告白されちゃうのか???


早鐘のごとく心臓が打ちまくっている。
期待をしているわけじゃないが、こんな状況で緊張するなというほうが無理だろう。


「あの・・・」


消え入りそうに小さく呟いた後、彼は意を決したように顔を上げた。
迷いを断ち切った潔い面に、暴れまくる心臓が鷲掴みにされる。
息をするのさえ忘れて、ただ立ち尽くしていた。


「さきも・・」
「輝さんがプロポーズされたって、本当ですか?」


・・・・。


「はい?」
「今日のオープン前にそんな話になって、店長なら何か知ってるかと思ったから」


咄嗟に剛士の頭が切り替わらない。
てっきり自分に対しての話があると思っていたのに、話の趣旨は全く別の方向にあるようだ。


「店長?」


きょとん、とした瞳で首を傾げてる崎本は不思議顔だ。
当たり前だ、ふしだらな発想をしてた剛士のほうが問題なのだ。
(というか、自意識過剰)


「ああ、悪い悪い、輝ちゃんね。うん、俺もなんとなく気が付いてたけど、そこまで話が進んでいたか」


なんとなく決まりが悪い剛士は、どうにか顔を引き締めて体裁を整えた。


「輝ちゃんだって大人なんだから、そうゆうお話があっても可笑しくないだろう?
それに何も今すぐここを辞めるってわけじゃないから、コトがはっきりするまで静観しててあげてくれないかな」


店舗責任者の顔でゆっくり諭しても、崎本はどこか不安げに俯いていた。
万一、輝が店を出るなんて話になったら跡を継がなきゃいけないのは彼なのだから、その気持ちも分からなくはない。

だけど、とも思う。


「輝ちゃんってすごく強そうに見えるけど、実はかなり怖がりなんだ。
与えられた環境で自分を磨くのは得意だけど、新しい場所に踏み出すのにはいつも躊躇してまう。
変化するってこと、見通し出来ないところへ行くってことに尻込みしてしまってる」


自分の居場所に甘えるような人ではないけれど。

だけど受け身ばかりの生き方では勿体無い人でもあるのは確かだから。


「受けるにしろ受けないにしろ、プロポーズされて輝ちゃんの世界が広がるんなら、俺は背中を押してあげたい、かな」


ちょっと問題アリな相手だけどね。


最後の一言は言葉にせずに呑み込んだ。
余計なことを言ってしまったら、また崎本を不安にさせてしまう。
掌中の珠を取られるには正直不満な相手なのだが、輝もそこらへんはちゃんと見極めることだろう。


輝ちゃん、そろそろ直樹に逃げるのは終りにしよう。
言えない片想いは、与えられる物が少なくても、傷付かないし何も自分に影響は来ないよね。
でももう、覚悟を決めて次に行かなくちゃ駄目だ。


「さ、俺らもそろそろ帰るぞ」


素直に剛士の後に付いてくる崎本も、そのうちここから飛び立って行くのかもしれないし、延々と腰を落ち着けてずっと居着くかも知れない。
どんな付き合いになるか、可能性だけは無限にある。


この店を通り過ぎる全ての人に、ここは居心地が良かったという記憶を残せたら。
そんな思いを込めながら、剛士は店の鍵を閉めた。
いつだって、居場所と言われるところは泡沫の存在なのだ。
ある日あっさりとその場が壊れたり失ったりする。
でも、心に残る景色は永遠だから、そこが迷った時の拠り所になることもあるから。


「明日からも気合入れていくぞ」


はい、と鮮やかな笑顔が隣で咲く。
全ての一瞬は永遠の欠片なのだと、その屈託ない笑顔が剛士に教えてくれた。





続く