【再】『ライオン』⑲ | 逢海司の「明日に向かって撃て!」

逢海司の「明日に向かって撃て!」

ご注意下さい!!私のブログは『愛』と『毒舌』と『突っ込み』と『妄想』で出来上がってます!!記事を読む前に覚悟を決めてくださいね(^^;。よろしくお願いします☆

本作はフィクションです。

実在する人物・団体・法人等とは一切関係ありません。

すべて妄想の産物と理解してお読みください。


・・・・、なにげにBLです。





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「オレはノックが好き。

世界中の誰よりも、ノックが一番好きで大事で愛しい人です」


優しく耳元に振ってきた言葉が、直樹の思想を停止させる。

なんの冗談だか分からなかった。

いや、冗談どころか意味が理解できなかった。


どう聞いたってこれは愛の告白だ。

だけど雄輔は普通に女性を恋愛対象としている人で、今までだってそんな素振りを見せた事がなかった。

そもそも、直樹は塩沢と付き合うと宣告したばかりだというのに・・・。


覚悟を決めた告白なのに、直樹は自分一人で考え込んで何も答えてくれない。

驚かせたのか、それとも拒絶されているのか、雄輔は不安な気持ちで問い直した。


「オレじゃダメ?もう間に合わないの?」


追い討ちをかけるみたいな雄輔の言葉に、直樹は息を呑んで俯いた。

やっぱり雄輔は、そうゆう意味で直樹に『好き』と伝えている。

自分にとってたった一人の相手になってくれと、直樹に望んでいるのだ。


でも、そんなこと・・・。


「だめ、だよ。

ボクなんかじゃ雄ちゃんを幸せにしてあげられない。

雄ちゃんはもっとちゃんとした人と・・・」

「違うでしょ?!ノクがオレで良いのか聞いてるのっ。

オレはノクと居るだけで幸せになれるよ。普通に居る事がすっごく楽しいって感じられるよ。

ノクはオレと居ても楽しくない?あいつのほうが良い?」


そんなはずない。

雄輔よりも一緒に居たいと願う人なんて、この世界のどこを探したって見付かるはずはない。

こうして近くにいるだけで、この想いは加速して大きく膨れ上がってしまうというのに。


「苦しい」


微かな呟きが聞こえにくくて、雄輔は顔を顰めながら彼の言葉を待った。


「苦しい、雄ちゃんといるとすごく苦しい。

切なくて、恋しくて、胸が潰れそうだよっ」


言い切ってしがみ付く直樹の鼻先に、雄輔はそっとキスをした。


「好き、だよ・・・?」


滅多に聞けない低い声での囁きに、直樹は彼の胸の中で何度も頷いた。

頷くたびに涙が零れて、その涙を雄輔の唇が拭ってくれて、全部が夢みたいで怖かった。


「・・・いで」

「え?」

「離さないで、お願いだからっ。

ボクがどこかに迷わないように、しっかりと捕まえていて!」


雄輔の頬が緩んだ。

離さないでって、当たり前じゃん、そんなこと。

頼まれたって離したりしないから。ずっとずっと捕まえておくから。


「あ、やっべー」


クスクスを堪えきれない笑いを挟みながら、明るい声で続けた。


「ごめん、オレ、やっぱノックが抱えてた痛みとか傷とか、分かり合えないや。

ノクはさ、自分の恋人が男だって事を必死で隠してたでしょ?でもオレは、

『こいつがオレの恋人です!』て周りに宣伝して歩きたいくらい幸せだモン」


はぁ?っと呆れた感嘆詞と共に雄輔の浮かれた顔を見上げた。

冗談じゃない、いや、本気でそのくらいしそうな勢いだ。


「や、やめてよ雄ちゃん!普通に恥ずかしいから!!」

「だって~、オレ、めっちゃ幸せなんだよ?叫びたくもなるって」


叫ぶつもりなのー?!

直樹の驚嘆の表情さえも、愛しそうに見詰めてる。

さっきまでただの友達だったくせに、この変わりようは何なのだろう?


「もう・・・。知らない」


恥ずかしくて照れ臭くて、直樹は雄輔の胸に顔を沈めた。

トクトクトクと雄輔の心臓の音が聞こえる。

自分と同じくらい、早く元気に打つ鼓動が。


あ、一緒だ・・・。


そんなことに幸せを感じられた、始まりの夜だった。




続く