この物語はフィクションです。
実在する人物・団体・会社法人等とは一切関係ありません。
ましてや、MAKOTOで上演された男だけのピュアでプラトニックな恋愛コメディとは無関係です。
脳内の妄想産物と重々ご理解の上、お読み進め下さいませ。
いくら似てても気の迷いです!
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第三幕
部室に居るのは笹沢と須田の二人だけ。
広い部室の小さなソファーに、ちょこん、と腰掛けている。
須田「とうとう本当に二人だけかぁ」
笹沢「部長は晴れて卒業、駒澤さんはイギリスへ、堀川先輩も福島へ行っちゃったしな」
須田「ね~~、新入部員の勧誘とかしなくて良いの?
部員が少ないと、部室を取り上げられちゃうかも知れないんでしょ?」
笹沢「ああ~~、かったるいしなぁ」
須田「しっかりしてよぉ、部長なんだから」
笹沢「俺がぁ!?なんで!」
須田「だって、写真部って部員が二人しか居ないでしょ。
だったら、経験の長い笹沢が部長をするべきじゃん」
須田にほのぼの笑顔で迫られるが、笹沢は認めたくない様子で苦い顔をしている。
ね?と笑顔で押し切ろうとする須田から、笹沢が後ずさりで逃げようとしていたとき。
部室のドアをノックする音が響いた。
笹沢「誰だろう」
須田「どうぞぉ、いつも開いてますから」
失礼します、と声がかえってきてドアが開く。
するとそこには・・・・。
須田・笹沢「「ビフォアー!!」」
男性の格好のままの粟島が、苦々しい顔で立っていた。
粟島「なんだよ、そのビフォアーって」
笹沢「いや、こっちの話だ、気にするな。ところで何の用事だ?」
粟島「安野先生に頼み事があって探してるんだけど、ここにも居ないのか、参ったなぁ」
うろうろと部室の様子を見渡す粟島。
それをしげしげと眺めている笹沢と須田。
須田「なあ、本当にあいつがあの写真の子になるの?」
笹沢「俺も未だに信じらんねえけど、事実は事実として受け入れるしかないだろう?」
須田「だって、全然オトコじゃん!!」
ひそひそと話す二人が気になったのか、粟島が怪訝な顔を見せる。
粟島「おい、一体なんの話を・・・」
椎名「やあ、若人たちよ・・・、ってビフォアー!!なんでここに!!!」
粟島「だから、ナンなんですか、そのビフォアーって!!」
飛び退くほど大袈裟に驚く椎名に対し、粟島が噛み付くような勢いで聞き返す。
椎名「いや、すまん、こっちの話だ。気にするな」
神田「おい、椎名。また部室で騒いでるな、いい加減にしないと・・・、あっ!!ビ・・・」
後からやってきた神田が『ビフォアー』と叫ぶ前に、現役生たちが必死になって神田の口を押さえた。
笹沢「神田先輩、それ以上は禁句です!」
須田「てか、すでに使い古されたネタになってます!さらに重ねるのは人として危険です!」
珍しい後輩達の真剣な顔に、口を押さえられたまま神田は素直に「うん」と頷いた。
意思疎通ができたことを確認した後輩らは手を離すが、粟島は腕組したままで納得できてない顔をしてた。
粟島「あのさ、やっぱお前ら、なんかあるだろう?」
粟島の詰問に、一同は揃ってフルフルと首を振る。
粟島「ほら!その態度がオカシイって!!」
安野「あらあら、今日は珍しく賑やかですね。おや、粟島くん、来てたのですか?」
粟島「安野せんせい、探してたんですよ」
安野「おや?今日は男性の格好なんですね。どちらも、たいへん良く似合ってます」
粟島「その格好に問題が発生したんです。
現代史の青野先生が、あの格好じゃ受講を認めないって言い出したんです。
安野先生からもなんとか言ってくださいよ」
笹沢「いいじゃん、青野先生のときだけオトコの格好をしてれば」
粟島「よくない、これはオレのアイデンティティーの問題だ」
椎名「そのアイデンキャンデーに俺たちは振り回されたんだよ!」(小さな声で)
神田「椎名、キャンデーじゃない、アイデンティティーだ。」
さらに「ティーならお茶か?」というオヤジギャグは抹殺。
粟島「安野せんせい~~」
安野「そこまで言うのなら、私からも青野先生に話してみましょう。
やはり人間は心のままにいることが一番大切ですから」
粟島を引き連れて安野が出て行こうとすると、椎名が慌てて呼び止めた。
椎名「安野先生!その前にいつもの『アレ』、お願いしても良いですか!」
安野「おや、そういえば今回はまだしてませんでしたね」
椎名「はい!!是非一発お願いします!!」
安野に縋る椎名の瞳は、これ以上ないくらいキラキラと輝いている。
こうなったら諦めるしかないと、神田を初め、笹沢、須田も胸に手をあてて同じポーズをとった。
(お約束が分からない粟島だけが、ナンだ?ナンだ?とあちこち見てる)
安野「安野純一の『愛の名言集より』
【愛とは、刹那にして永遠を感じさせるもの。
一度捕らわれてしまったら、もう逃げる事が出来ない・・・】」
安野は自分で納得するように言葉を噛み締める。
椎名は満足げに余韻に浸ってる。
神田たちはとりあえず一緒に頷いている。(粟島だけが事態が飲み込めず、あちこち見てる)
それぞれの感じ方でじっくりと後味に浸っていると、突然、安野がバタッ!と倒れた。
椎名「せ、先生!!」
慌ててみんなが安野の元に駆け寄ると、安野は上半身を起こして客席に向かって手を差し述べる。
安野「OH!ジュデーーーーッム!!」
粟島「なんじゃい、そりゃ!!」
安野のコテコテの演技がかった台詞回しに、耐え切れず粟島が突っ込んだ。
粟島「ジュデームでもガッデムでも良いですから、早く青野先生を説得してくださいよ」
安野「あら、そう?これからが良いところなんだけど」
粟島「まだ続ける気なんすか??」
安野「ま、今日のところは青野先生のところに行きましょう。
そうだ、笹沢くん、須田くん、君たちも一緒にいらっしゃい」
笹沢「え?なんで俺達も?」
安野「部室の使用延長届けを出さないといけませんので、その手続きをしに来て下さい。
この手続きを怠ると、せっかくの部室を取り上げられることになりますよ」
それならば仕方ないと、笹沢と須田も渋々同行する意志を見せた。
粟島に急かされて安野が、その後から足取りの重い笹沢と須田が続けて部室から出て行く。
最後に部室から出ようとした須田が、思いついたよう顔だけ扉から覗かせて。
須田「じゃ、邪魔者は居なくなりますから、どうぞごゆっくり♪」
と、なんとも意味深な言葉とドラエモンな笑顔を残して出て行った。
ご丁寧に部室の扉をキチンと閉めて。
そして、部室には神田と椎名の二人だけが残った。
神田「部室に二人っきりって、久し振りだな」
椎名「そうだな、いつも誰かしらいたからなぁ」
懐かしそうに目を細めて、部室の端々を眺める神田と椎名。
遠い出来事から思い出しているようだ。
椎名「なあ、神田、人はなんで写真を撮ると思う?」
突然の椎名の問いかけに、神田は少し驚いて椎名の顔を見詰めた。
いつものふざけた調子は微塵も感じられず、ただただ真剣な視線を向けている椎名。
その突き刺すような視線に、神田は真摯に答えなくてはいけないのだという事を感じる。
神田「そりゃ、その時、一瞬しかない見れない風景を残しておくためだろう?」
椎名「その通りだ。みんな目の前の幸せな一瞬を留めておきたくてシャッターを切る。
分かってるんだよ、永遠なんてどこにも無い、だからこそ、その風景を切り取って残すんだ」
椎名が目の力を弱めて、そして切なげに微笑んで言葉を続けた。
椎名「写真は変わらない、けれど現実は変わって行ってしまう。
大切な物を写真に収めてしまったら、いつかはそれが変わって行くことを認めてしまうような気がして、俺自身が永遠を否定してるみたいに思えて、シャッターを切れなくなった。
大切なものなら、特に、な」
神田「椎名・・・」
弱弱しく自嘲するように笑う椎名を、神田はしっかりと見据えていた。
そして何かを思い立ったように立ち上がると、部室においてあったカメラを持ち出し、椎名に差し出した。
神田「俺を撮ってくれ」
椎名「なに言って・・」
神田「たまには良いだろ?格好良く撮ってくれよ」
爽やかに、だけど断らせない押し付けがましさを滲ませながら、神田は椎名にカメラを渡した。
ほら、と急かされ、おずおずとカメラを構える椎名。
神田は分かりやすい作り笑いとピースで、写真を撮りやすいようにポーズを決める。
そして小さなシャッター音。
神田「椎名に撮ってもらうのは久し振りだな。見せてくれよ」
多少やけになっているのか、ぶっきらぼうにカメラを渡す椎名。
神田は楽しそうに写真を確認する。
神田「よく撮れてるじゃん」
椎名「当たり前だ、俺が撮ったんだぞ」
神田「モデルが良かっただけだと思うけどな」
神田はワザとすっとぼけたような口調で呟き、不満そうな顔をしてる椎名ににっこりと微笑んだ。
神田「いつかさ、こんな若くて格好良い俺も、歳食ってメタボな中年になったり、よぼよぼの爺さんになったりするわけなんだけど。
それでも変わらずに、オレのことを撮り続けてくれるか?」
はっ・・としたように椎名が目を見開く。
その驚いた様子を、神田は暖かな眼差しで眺めていた。
彼の言わんとしていることが分からないほど、椎名もヤボではない。
椎名「っち、しょうーがねーな。お前の成長記は俺さまがしっかりと残してやるよ。
これからも、ずっと、な」
わざと偉そうに椎名が言う。
神田が可笑しそうに嬉しそうに笑いを浮かべるので、椎名も釣られて笑顔になる。
改めてカメラを構える椎名。
フィルダーを覗くと、神田が優しく晴れやかに微笑んでいた。
それを見詰めながら、椎名がゆっくりとシャッターを切る。
暗転
NR
『初めて見せてくれた笑顔はぎこちなかった神田が、今はこんなに穏やかに笑えるようになった。
永遠に変わらないものなんてない、あるとしたら、それは心の中にある懐かしい風景だけだ。
今だって思い出せば、あの部室でいつものメンバーが笑っている。
今は居ない人たちも、揃ってオレのことを待っていてくれてる。
でもそれは、とても大事な風景だが今となっては幻だ。寄りかかってはいけない場所なのだ。
変わらないものはない。だからこそ、その傍に永遠がある。
神田、お前は俺が信じてる間は、そうやって変わらずに傍にいてくれるのか?
たとえお前自身がどんなに変わったとしても、変わらずに俺の傍にいてくれると、
そう信じても良いんだよな。
なあ、神田・・・・』
ED映像(割愛)
Happy end
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終ったぁ(*´Д`)=з
カテコはそれぞれ想像して♪
今回も拙い妄想にお付き合い頂き、ありがとうございました^^