この物語はフィクションです。
実在する人物・団体・会社法人等とは一切関係ありません。
ましてや、MAKOTOで上演された男だけのピュアでプラトニックな恋愛コメディとは無関係です。
脳内の妄想産物と重々ご理解の上、お読み進め下さいませ。
いくら似てても気の迷いです!
今回はいつもと書き方を変えております。
携帯からは非情に読みにくいと思いますが、どうぞお許しくださいませm( _ _ )m
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ *:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ *:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆゚・*:.。..。.:*・゚
第二幕
部室のソファーに笹沢と須田。
いつものように気だるそうに体をソファーに沈めている。
すると部室の奥(舞台上手)から鴻池が颯爽と登場してくる。
鴻池「なんだ現役生、随分やる気が無さそうじゃないか」
笹沢「つか、部長、いや、元部長!(ビシ!と鴻池を指差す)
なんで卒業したのに、まだ大学をうろうろしてるんですか?」
鴻池「出席日数の危なかった単位の代わりに、救済措置のレポートを提出しに来たんだ。
また僕の顔が見れて嬉しいだろう?」
笹沢「どうしたらそれだけ図々しい発想が生まれるのか、疑問だ」
鴻池「褒めるな」
笹沢「褒めてない!」
神田「お、なんだなんだ、結局みんな集合してるのか?」
神田と堀川まで当たり前の顔で部室に入ってくる。
笹沢と須田は諦めた顔でお互い見合わせた。
笹沢「この前、安野先生は『寂しくなります』とか言ってなかったっけ?」
須田「言ってた、絶対に言ってたし、そうなってなくちゃオカシイ!!」
笹沢「この流れで行くと、絶対にあの人たちが来るぞ」
須田「それって・・・」
ひそひそ声で話している二人の危惧通り、下手の扉から椎名と駒澤が登場する。
笹沢「ああーーーっ、やっぱりだーーー!」
須田「ここって、大学の部室だよね?大学生のほうが少ないっておかしくない??」
嘆きながらじゃれあう現役生とは別に、顔を合わせた途端に気まずい空気を出す駒沢と堀川。
あ・・、と目が合った瞬間に顔をそむけ、あらぬ方向に視線を彷徨わせている。
そんな二人を、『あれ?あれ?』と不思議な顔で神田が見比べていると・・・
椎名「あああああっ!もう俺は何も信じられん!!」
この世の終わりのような勢いで椎名が絶叫し始めた。
どうしたの?と視線だけで駒澤に問いかける神田。
肩を竦めて苦笑いを見せる駒沢は、『いつものことだよ』と言いたげだ。
椎名「俺は認めん、認めんぞ。だいたい、デスクは俺の才能が全然分かって無いんだ!」
笹沢「あ、やっぱり移動願いが却下されたんですね(o^冖^o)」
椎名「アイドルスマイルで簡単に言うな!!俺の人生がかかった問題なんだぞ!」
駒澤「俺はデスクの判断が正しいと思うけどな」
椎名「いや、絶対に俺はカメラマンになるべき男なんだ!!
そしてお前は世界で初めての携帯カメラマンに・・・」
駒澤「ならないと言ってるだろう」
下らない大人のやりとりに、須田と笹沢はソファーにかけなおして小さく肩を寄せ合った。
須田「なんか、このやりとりって、未来永劫受継がれていく気がする・・・」
笹沢「考えてみたら、俺らが入学する前からやってだよな。あれ(↑)」
駒澤「そもそも、俺はお前がマトモに写真を撮っている姿なんて久しく見たことがないぞ」
椎名「撮ったじゃないか、可愛い粟島瑞丸を」
駒澤「ありゃ隠し撮りって言うんだ」
鴻池「そういえば・・・、椎名先輩の作品って見たことがないですね。本当に写真が好きなんですか?」
鴻池の嫌味が入ったするどい質問に、うっ・・、と言葉を詰まらせる椎名
椎名「俺の感性を震わすような風景は、そこらに簡単に転がってないんだよ」
堀川「でも、『こういう情景を撮りたい』って意志がなくちゃ、どんな風景を求めたら良いか分からないよね?」
鴻池「そうですよ。堀川先輩のような目的もなく、ただインスピレーションが刺激されるのを待っているなんてプロのカメラマンとしてはどうかと思いますよ?」
鴻池のまともな突っ込みに、一堂が揃って「うん」と頷く。
言い返せなくなった椎名はあわあわと周りを見渡し・・・
椎名「うるさい!お前らにオレの繊細な感情を理解されてたまるか!」
と捨て台詞を残して部室を飛び出してしまう。
駒澤「神田、追いかけなくて良いのか?」
神田「大人なんだから、気が済めば帰って来るだろう。
それよりも聞きたいことがあるんだけど、椎名は仕事でも写真をあまり撮らないのかい?」
駒澤「そうだな。手慰み程度にシャッターを切ることはあるけれど、カメラマン希望と言ってるわりには、本気で写真を撮っているところは見たことがないな」
神田「・・・そうか」
ふっ・・と椎名が飛び出して行った扉を見詰める。
切ない、寂しげな瞳が去っていった椎名の背中を追いかけているようだった。
神田「あいつが、一番撮りたい風景って、『幸せ』なのかもしれないな」
駒澤「神田?それはどうゆうことだ?」
ゆっくり振り返り、神田はその場にいたメンバーの顔を見渡した。
少しだけ泣き顔に似た、優しい笑みを浮かべて。
神田「椎名の家って、早くにオヤジさんを亡くして苦労したろう?
あいつも姉さんも、親戚の家に預けられたりしてバラバラだった時期もあったらしい。
やっと大人になって、家族揃って一緒に暮らせるって思ったら、姉さんは結婚相手の都合で海外へ転勤、母親も再婚して地方へ行ってしまったらしい」
鴻池「椎名先輩、ああ見えて苦労してたんですね・・・。ぜんっぜんそうは見えなけど」
神田「それでもあいつは、皆がそれぞれに幸せに暮らしているんなら、それで充分だって言ってた。
みんなが幸せなら、自分も幸せだって。
でも、あいつが真面目に写真を撮ったのを見たのは、姉さんの結婚式のときが最初で最後だったように思うよ」
遠くを見詰める神田(客席に向かって)
椎名と出合った日のことを思い出しているようだった。
神田「あいつにとって『撮りたい』って強く思えるほどの幸せを、まだ見つけてないのかもしれないな」
しばらく沈黙が続く舞台。それぞれが何かを思うように視線を酌み交わして。
そして駒澤が空気を切り替えるように、一つ咳払いをした。
駒澤「神田、やっぱりあいつを追いかけてやってくれないか?
いつも人を巻き込んで騒いでいるけど、結局は寂しがりやな奴なんだから」
駒澤の進言に、神田が晴れやかな笑顔で大きく頷き、椎名の後を追って部室を出て行く。
その様子を見送る残りのメンバー。
そして、静かに会場内にメロディが流れる。
GOOD LOVIN『声を聞けば』 挿入
しばらくは誰も動かずに神田が出て行った出口を見ていたが、おもむろに駒澤が立ち上がり、内ポケットからボイスレコーダーを取り出す。
しばし何かを考えるように手の中のボイスレコーダーを眺めていたが、顔を上げ、堀川の手を取ると、彼の手の平の中にボイスレコーダーを握らせる。
(左手で堀川の手をとり、右手で被せるようにボイスレコーダーを握らせる)
戸惑い顔の堀川に対して駒澤はニヒルに微笑むと、颯爽と部室を後にした。
駒澤が立ち去った後、手の中のボイスレコーダーに目を落とす堀川。
その背中を眺めていた鴻池も、何かを決めたような勇み足で部室の奥(上手)へ入っていく。
ほどなく、大きないくつもの荷物(鴻池の私物)を抱えて出てくる。(荷物に埋もれてる感じで)
荷物を一端地面に置き、後輩達の肩を激励するように叩いてから、彼も部室から出て行った。
堀川もしっかりとボイスレコーダーを握り締め、顔を上げて部室から出て行く。
じゃあな、と笹沢と須田に手を振って。
残された現役生二人。
どちらともなく部室のあちことに視線を巡らせる。
ココで起こった様々な事件を思い出して噛み締めているようだ。
そして二人は顔を見合わせ、パッと笑い合うと肩を組むようにして部室を後にした。
次第に照明が落ちる。
夕暮れ時の町、舞台上手から肩を落とした椎名が歩いてくる。
そこへ追いかけてきた神田が合流。神田の顔を見て何かを必死で訴える椎名。
神田は苦笑いを浮かべながら、ハイハイ、と宥めるように話を聞いているふうだ。
慰められるうちに、次第に元気と勢いを取り戻す椎名。
最後は開き直ったのか、椎名のほうが勢い良く歩き出し、その後を神田がゆっくりと追いかける。
先に行った椎名は、下手ギリギリで振り返り、神田が追いつくのを待って二人一緒に幕内に消える。
許しあった、爽やかな笑顔を浮かべて。
つづく