この物語はフィクションです。
実在する人物・団体・会社法人等とは一切関係ありません。
脳内の妄想産物と重々ご理解の上、お読み進め下さいませ。
いくら似てても気の迷いです!
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チラチラとした日差しの欠片が、丁度雄輔の瞼の上に落ちてくる。
どこに避(よ)けても眩しい破片から逃れられなくて、恨めしそうに空を見上げた。
天から落ちてくる日差しは桜の濃緑の陰にところどころ遮られ、直樹の上にも斑な影を落としている。
あ、直樹だ。
何故だかそんな感慨が胸いっぱいに膨らんできた。
当たり前に隣に居て、言葉を交わさなくても一緒に居ることで安心できて、甘えても我が侭を言っても最後は笑顔で受け止めてくれる直樹。
ずっとずっとこんなふうに、一緒に居てくれると思ってたのに。
パフン、と直樹の肩に凭れ掛かる。
急な行動に少しも驚かない直樹は、とっくに雄輔の予測不可能な行動に慣れているのだろう。
動揺の欠片も見せないのが悔しくて、ぐりぐりと瞼を直樹の肩に押し当てた。
小さな直樹のため息が聞こえる。
どうしようもない悔しさで、唇を噛み締めた。
「なんで」
「雄ちゃん?」
「なんで、行っちゃうの?」
今度ははっきりと、直樹の口からため息が零れたのが聞こえる。
きっと彼にしてみたら、どうしようもない我が侭をぶつけられたと思っているのだろう。
「どうして、そんなことを言うのかな?
会いたいときはいつだって会える場所に居るよ?雄ちゃんさえ、会いたいって思ってくれるんなら」
「やだ、会いたいときとか考えなくてもいいくらい、近くにいてよ。じゃなきゃ、オレ・・・!」
「・・・・・、会えないうちに、ボクのことなんて忘れちゃう?」
え?って思考が一瞬止まった。
何を言ってるんだろう?
忘れるって、誰を?もしかして直樹のことを?
混乱し、直樹の顔を凝視したまま固まる雄輔の態度をどう受け取ったのか、直樹は何かを諦めたように瞳の色を落として呟いた。
「良いんだよ、忘れたって。
ボクが居なくても雄ちゃんの周りにはたくさんの雄ちゃんの味方がいるんでしょう?
ボクなんかが居なくなっても、他の人がちゃんと雄ちゃんを慰めてくれるんでしょ?
だったらもう、ボクのことなんて放っといてくれないかな」
「いやだ!ノックはノックだもん。
他の人はどうでも、ノックは一人なの。ノックしか居ないの!忘れるなんて、出来るわけ無いじゃん」
ぎゅうぅぅぅっと抱きつく雄輔の背に、直樹はそっと手を置いた。
口では突き放すようなことを言いながら、その手は労わるように丸めた背を優しく何度も撫でている。
離れる事を惜しむように、彼の体温を確かめるように、何度も何度も。
「ねえ雄ちゃん。本当にそんなに遠くに行くわけじゃないんだよ。
ただ仲間と一緒に劇団を立ち上げようってしてるだけ。
何も、雄ちゃんが心配するほど変わったり、どっかに行ったりするわけじゃないんだ」
宥める直樹の言葉にも、雄輔はイヤイヤと首を振る。
こんなに感情むき出しで甘えられるのは、きっと『今』一番近くにいるだけだから。
顔を合わせる頻度が下がれば、自分の位置なんてあっさり別の誰かに奪われるに決まってる。
雄輔のことなんて、直樹はほんの少ししか知らない。
ずっと一緒に居るみたいに仲良くなったって、本当は何も分かってないことばかりだった。
それが悔しくて、自分の知らない人のことをキラキラの笑顔で語ってくるのが悔しくて。
こんなふうに直樹が嫉妬してることも知らないで、雄輔が誰彼かまわず仲良くしてるかと思うと、なんだか情けなくて。
早く、雄輔に頼らないで自分で歩けるようになりたいって、そう、思ったんだ・・・。
続く