この物語はフィクションです。
実在する人物・団体・会社法人等とは一切関係ありません。
脳内の妄想産物と重々ご理解の上、お読み進め下さいませ。
いくら似てても気の迷いです!
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「ちょっとちょっとちょっと!!あれってどうゆうことなのっっっ!
オレ、一個も聞いて無いんだけどっっっっ(((o(≧×≦)o)))!!!」
俺に当るなら直接直樹に聞け。
グラスの淵に無意識で指を這わしてる剛士は、その言葉を噛み締めたように渋い顔をしている。
話があるから付き合って!と勢い良く誘われて出てくれば、珍しくご機嫌斜めな雄輔が居た。
しかも説明下手の雄輔の言片から事態を推理するに、完全に八つ当たりされているとしか思えない。
大将もその場で処理してくれよ、とそのままで雄輔を放置した品川を恨んだ。
「つまり、直樹が今度お友達と劇団を旗揚げする、と」
「そう!」
「んで、雄ちゃんはその話を今まで全然聞いてなかったし、あまつさえ誘われもしなかった、と」
「そう!!」
「・・・だから、なんで俺?( ̄_ ̄ i) カンケイナイヨネ」
「だってだってだって、つーのさんじゃん!!」
「答えになってねーっちゅうの!!」
本能だけで話してくれるなーーっ!と今更ながら剛士は頭を抱えた。
雄輔の言いたいところとしては、二人のアニキ分の剛士が取り持て、ということなんだろう。
それにしたって、無茶振りも過ぎている。
「だいたい、直樹がストリートプレイ・・、舞台志望なの知ってんじゃん。
俺としちゃ遅いくらいだと思うけどね」
あいつもこっそり地下で企てるヤツだから、淡々と準備してたなんて全く気が付かなかった。
思い立ったら、で動くのは、やはりこの三人の共通事項なのかも知れない。
「でもさ、ちょっとくらい話してくれてもいーじゃん。オレとアイツの仲なのに・・・」
確かにこの案件について、秘密にしておく必要性はまるで無い。
むしろ大々的に宣伝して、出来るだけの協力者を募っておいたほうが後々のためだ。
そうと分かっていて直樹が黙っていたのは、自分の力でどうにかしたいという男の意地だろう。
初めから誰かを頼るなんて、自称ストイックな直樹が選ぶ道じゃない。
そして・・・。
「お前とあいつの仲だから、雄輔には黙ってたんじゃねーの?」
右の唇の端だけを歪ませて、剛士は訳知り顔で薄っすらと笑う。
そんな剛士の言葉を聴いても、雄輔は眉根がくっつくくらいの苦い顔で戸惑っているだけだ。
言われたことの意味が分からないのだろう。分かってないから、直樹もこっそり事を運んだのだ。
「雄輔、直樹のこと好きか?」
「ったりまえじゃん!今更何言ってんの?」
「んじゃ俺は?」
「好きだよ、大好き。そうじゃなきゃ、こんな相談しないでしょ!」
やっぱり分かってねーわ、と剛士は喉元に乾いた笑いを響かせた。
「俺が見てる限りさ、直樹もお前のことがごっつい好きだったと思うよ。
お前が直樹を好きだーって思ってるのに、負けないくらいの強さで」
「それじゃ、なんで黙って・・・!」
「好き、だからだよ。
お前にとって直樹は特別だった。でも一番じゃない。
これでもかってくらいの大好きをくれるのに、『たった一人』にはしてもらえない。
そのジレンマに、そんなことでイチイチ悔しがってる自分に、ケリを付けたかったんだろ」
雄輔はいつだって、びっくりするくらいの『大好き!(≧∇≦) 』を与えてくれる。
もしかして自分は雄輔にとって不可欠な存在なのかな?って浮かれてしまうくらいの巨大さだ。
だけど雄輔からそんな『大好き!(≧∇≦) 』を受け取ってる人は実は他にも沢山存在していて、雄輔が自分にしか見せないと思っていた笑顔も、いろんな人に振り撒いていて。
ああ、勝手に自惚れてただけか、と思い知らされる瞬間がある。
だから直樹も、雄輔がみんなにくれる『大好き』に甘えてないで、自分だけの仲間を、自分を必要としてくれるカンパニーを作りたい、作らなくてはと思ったのだろう。
雄輔がくれるものではなく、自分で自分を計る指標を得るために。
それに加えて雄輔を見返してやりたい、という気持ちも多少はあったと思う。
雄ちゃんがボク以外に大事な人が一杯居るように、ボクだってボクだけの大事な人がいるんですって。
誰からも愛される雄輔に、ちょっとだけイジワルをしたくなったんじゃないだろうか。
「まー、どっちも嫉妬深いこと♪」
「それってどゆことよ?一番とか特別とか、全然かんけーねーし。
好きな人は好きだし、大事な人は大事なの!区別も何も無いの!!」
正論だけど、人の心の機微を分かって無い奴だな、と剛士は肩をすくめた。
これだけ平等に同じベクテルで人に気持ちを注げる人間も貴重といえば貴重なのだが、故に細かな問題が発生するってことがてんで分かってない。
人は何時だって、誰かの一番でありたいと思うんだよ。
恋人として、友達として、仕事仲間として、相談相手として。
その枕詞はどこでもいいけど、誰かの一番でありたいと、そこに自分の存在意義があると思いたいのさ。
残念ながら『一番』って枠から落とされてしまったら、それはそれとして諦めるしかない。
だけど明確な一番を示さないお前は、時として周りに期待ばかりさせてしまう厄介な奴になっちまうんだ。
「俺も雄輔のことは大好きだけど、たまに首絞めたくなるもんなぁ」
「ええ!!(゚ロ゚ノ)ノ オレ、つーさんになにもしてねーし!!」
「いや、この話に関係なく、けっこうなことされてるよ
イタズラトカドッキリトカ。
とりあえず納得できないんなら直ちゃんと直接お話しなさい。
俺と想像で話してたって、何の解決にもなりゃせんでしょ」
ぶんむくれた顔でハイボールを啜る雄輔。
覚悟の決め時だよ、ちゃんと現実を確かめておいで。
とっくに弟離れの覚悟を決めて余裕の笑みを浮かべる剛士を、雄輔は怨めしそうに見詰めていた。
つづく