『はじめての・・・』番外編Ⅲ | 逢海司の「明日に向かって撃て!」

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ご注意下さい!!私のブログは『愛』と『毒舌』と『突っ込み』と『妄想』で出来上がってます!!記事を読む前に覚悟を決めてくださいね(^^;。よろしくお願いします☆

季節遅れの夏風邪にやられて、頭沸騰中で~~す♪

イカレタ話を書いてますが、秋の夜長の幻と笑って許して頂ければ幸い。


いや、笑って許してくれ・・・。

石を投げつけたりカミソリを送ったりしないでくれ・・・。



はい、番外編です、タケシ&ヒロミです♪

いまや私の中で鉄板なのです、この二人。


・・・・。


だから、石を投げないで下さい!



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ぞっとするほど、美しい子だった。

漆黒の髪には幾筋もの七色の光が反射し、日本人離れして整った顔立ちを際立たせていた。

溺れるように深い瞳が、熱く何かに潤いながら真っ直ぐにタケシを見詰めている。

柔らかそうにふっくりとした口唇が、もう一度動き出すさまが脳裏に焼き付けられる。


「私なら一緒に居られる、それだけで充分なのに」


視線を外さないままで、ヒロミの身体がゆっくりとタケシのほうへともたれかかってきた。

そんな切なげなヒロミをタケシが突き放せることなど出来るはずもなく、寄りかかってくるままに華奢な身体を丸ごと受け止めてしまう。


浮気なんてするつもりは毛頭無い。

彼女が落ち着くまで、少し付き合ってあげてるだけだ。


冷静に分別ある思考が響くのだが、心の動揺は抑えられなかった。

彼女がタケシに密かな想いを寄せていることぐらい、とっくに気が付いていた。

その上で知らない振りを通してきたのだ。


ヒロミもそれを望んでいた。

可愛い部下の一人として大切に扱われている、その程度の見返りしか期待してなかった。

だからこそ、この綱渡りみたいな関係を保てたのだ、今までは。


「ヒロミ・・・」


彼女の名前を改めて囁いて、不安定そうな肩に手を置いて支える。

それだけで心臓が高鳴った。

彼女の僅かな吐息が、反復するように耳に纏わり付いて離れなかった。

胸元に落ちてくる平熱が、まるで焼かれたようにジリジリと胸を焦がした。


「ヒロミちゃん、それって、さ・・・」

「・・・・・・・・・・・・zz」


何か、ヒロミの様子がおかしい。

テンパッていた自分を落ち着けて、状況確認に神経を回すように心がける。

落ち着けば、ちゃんと分かるはずだ。

彼女が今、どんな状態であるか。









「・・・・・(v_v*)zzzZ」






『寝オチかい!(_△_;〃 ドテッ!』(←起こさないように小声でこけている)


真相が分かると、一気に身体から力が抜け落ちそうになった。

考えてみたら丑三つ時をとっくに過ぎている。

そりゃ正しい人間なら睡魔に負けて当然の時間だ。


「ったく、かなわねーなー、このお姫様には」


天然がかなり入っているとは思っていたが、まさかこの場面で寝てくれるとは想定外も良いところだ。

完全に腑抜けになってしまったお嬢さんを起こさないように気遣いながら、そして己の腰を気遣いながら、彼女の身体をそれこそ正しいお姫様抱っこで抱きかかえて仮眠室に向かった。


何度か落としそうになりながら、それでも粗末な簡易ベッドに彼女を誘った。

タケシを翻弄してくれた犯人は、自分の言葉通りに幸せそうな顔をして夢の世界を漂っている。

少女そのままの、稚い横顔に思わずタケシの頬も緩む。


「俺だってそんな出来た人間じゃないんだからさ、誘惑すんのは無しだよ」


愛してるんだよ、奥さんのことを。

彼女以上に誰かを愛せるとは思えない。

出会った時からこの気持ちには一片の遜色もなく、未来永劫このままだと断言することだって出来る。


だけど、君の視線は。

遠慮がちに、だけど真っ直ぐに追いかけてくる君の視線は、昔の恋を思い出させるんだ。

視界の端にその人の姿が映るだけで幸せで、どんな雑踏の中からでもその声を探し出せて。

何を望んでいるわけでもなく、ただ一方的に想いを注ぐだけで幸せだったあの頃。


そんな淡い、まだ何も知らなかった頃のトキメキと切なさを思い出させるんだ。

ささやかな全ての出来事から、幸せの断片を拾い集めていたあの頃の自分を。


「こんな気持ち忘れていたよ、ヒロミに会うまではね」


ヒロミが決して告白してこないのを良いことに、彼女との片思いごっこを楽しんでいたのだ。

近くに居て笑い合って、お互いを感じるだけでなんだか嬉しくて浮かれてしまう。

そんな学生の頃のような淡い感情を、とっくに忘れていた感傷を味わっていたのだ。


「お前のコトは大事だよ、大好きだ。でも、これ以上は踏み込めない。

ヒロミの王子様には、俺はなれないんだ」


長く伸ばした前髪をそっと指先で掃うと、薄暗い部屋の中でも睫の影が白い肌の上に落ちる。

大人ぶっているけれど、まだ世間に出て行くことに恐れを感じている女の子のままだ。

彼女を守ってあげることは出来ても、助けてあげることは出来ないだろう。

こんなに、焦がれるくらいに大切に思っていたとしても・・・。




続く。