終らない夏の酷暑にやられて、頭沸騰中で~~す♪
イカレタ話を書いてますが、夏の夜の幻と笑って許して頂ければ幸い。
いや、笑って許してくれ・・・。
石を投げつけたりカミソリを送ったりしないでくれ・・・。
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小さな会議室に同じチームの一同が揃い、携わっているイベントの中間報告が行われる。
普段はふざけた顔ばかりのメンバーが神妙な顔で向き合っている。
そのギャップがなんだか好きなナオだった。
「問題はどのくらい集客できるかってことだよな」
「子供を対象に、イベントの準備作業を見学させるのってどうですか?」
「中ではけっこう大掛かりな工事もやるぞ。危なくないか」
「イベントは夕方から開始じゃないですか?午前中とかに直前の様子を見学させるって感じで」
「当日なら機械ははけてると思うが、現場の作業日程としてはどうなの?」
「それは問題ないと思います。今回は資材の納入が想定よりも早かったので」
ひとつの問いかけに対して次々と疑問点協議点が飛び出し、引き受けるように答えが方々から返される。
的確で、それでいて互いの意見を尊重しあうやりとりは、ぴったりと息が合っているように見えた。
「内部見学会なら余計な支出もないしな・・・。対象は?」
「一応事前申し込みの形をとります。メールかFAXで受付て、集まり具合によっては当日の飛び入り参加もありにしてみたらどうでしょう?」
「原則は事前申し込み、になるわけだな?」
「ええ、当日受付にすると混乱を招くことがありますので」
うん、と頷いて言葉を通す。
ここまでの案件は全員の中でスルーしたようだ。
「近隣の小学校や学童保育所にチラシを持って行こうか。希望者が多いようなら2回に分けても良いし」
「それじゃ安全な内部のルート確認と現場での了解を得ておいてくれ」
「何か特典ても付けるのかい?」
「あまり大袈裟なことはしたくないな。スタッフと同じパスケースとイベントで使えるドリンク券くらいのほうが良いんじゃないか?」
「賛成。おまけ目当てで参加されても困るしね」
「じゃ、プレイベントについての骨組みはこんな感じで。
ゴウ、詳しいレジュメを切っておいて次回の会議のときに説明できるようにしておいてくれ。
悪いけどナオが補助に入ってあげてくれないか?」
「分かりました、大丈夫です」
「他に何かなければ一端ここでお開きにする」
ふう、と誰の口からともなくため息が漏れた。
憂鬱なときに零れるものでなく、神経を研ぎ澄まして集中していた緊張感を緩和するためのため息だった。
資料を手にバラバラと立ち上がり、必要な相手を捕まえて細かい説明や状況を問い直す。
そうでなければ自分の机に戻り、携帯やパソコンで確認作業を始める。
不確かな物がこの現場には何も無い。
無論、現時点で未定の物事も山ほどあるが、何がどう進行しているのかの情報は一同が共有している。
「ナオねーさん、さっきのプレイベントのお話しても大丈夫ですか?」
背丈はとっくに追い抜かれて、だけど歳よりも幼い笑顔を浮かべたゴウがやって来た。
若くて素直な分、吸収力が恐ろしく早い。
そしていつでも新しいことに出会うと楽しそうに打ち込んでいる。
「今のほうが私の手も空いてるから、少し具体的に詰めておこうか。
現場の人だと誰と連絡がとりやすい?」
「だーいじょうぶです。設備設営のナベさんに相談してあります(^^)v」
「手回しが良いな~~。でもナベさんが間に入ってくれるならやりやすいね」
助かるなぁと思う。
こうゆう小さな手回しが行き届いているかどうかで、次への対応の速度や根回しが全然違ってくる。
事前に一手置いているかどうかが、その後の動きを大きく左右するのだ。
ユウちゃんは思いつきでドンドン話を膨らましてくれたからなぁ。
実現できるかどうかの考証なしで、彼が『楽しそう』『面白そう』と感じた事を口にする。
どうやってそれを現実に行うかという調整は後から付いてくるのだ。
だからこそ前例の無い企画をいくつも実行できたのだが、寸前までジタバタしていたことも多々あった。
理詰めとまでは言わないが、充分に話し合えて行動に移せる方が几帳面なナオには合っている。
可能不可能を弁えて、可能の限界までをトコトン掘り下げていくやり方のほうが向いているのだ。
あの激流に揉まれるような時間も嫌いではなかったけどね・・。
自分のデスクに戻ったショウの姿をそっと追いかける。
決してメンバーの負担にならないように、上手に役割を分担させ作業を効率よく回す。
その手腕はさすがとしか言いようが無い。
尊敬も信頼もしている。
頼りにもしているし、教えを乞うこともまだまだ沢山あるだろう。
同じように仕事をしているが、まだまだ同等に位置に立っているとは思っていない。
追いつくためには、彼からもっと多くのコトを学ばなければいけないのだ。
彼の近くに居て、沢山の事を吸収したいと思う。
でも、今よりも近い間柄になるのはイヤだった。
まだ甘やかされたく、なかった。
「ナオねーさん?」
「あ、ごめんね。ちょっと寝不足で・・・」
「大丈夫ですか?無理しないでくださいね」
平気だよと笑ってみせると、ゴウは安心したように頬を緩ませた。
話が聞こえたのかどうなのか、寝不足の原因の半分がこちらにチラっと視線を向ける。
刹那のことなのに、胸がジリっと焦げ付くような感情を覚えた。
彼に私的な目線で見詰められる事が恥ずかしい。
そうゆう対象として捕らえられている事が、逃げ出したくなるくらいに恥ずかしくて仕方ない。
遣る瀬無くて、ナオは小さくため息をついた。
今度こそ本当に、憂鬱で困り果てたため息だった。
続く