以下の文面はフィクションです。
実在する人物、団体、組織等とは一切関係がございません。
似てる人が居ても、それは偶然の一致です。
ですので、どっかに通報したりチクったりしないでください★
・・・、頼むよ、マジで (ToT)
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夏はいつだって、大事な何かを連れて行ってしまうんだ・・・。
お祭りが近づいて、色違いのおそろいTシャツを着る機会がどんどん増えた。
もう意識してないつもりだったのに、目の端に映る青い欠片に、心臓が過剰に反応してしまう。
居るはずないと分かっているのに、不意打ちみたいにあの時と同じ青に目を奪われる。
とっくに通り過ぎたはずのあのときの感覚が、生々しく心に蘇ってくる。
本気で、時間が止まってしまえば良いと思った。
永久にこの旅が続けばいいと、そう願った。
ふと覗くと、笑顔も忘れて遠くを見てるあいつが居て、
そんな、覚悟を決めるような顔はまだして欲しくなくて、
ちょっかい出したりイタズラしたり、そんで『も~~』って言いながら答えてくれる瞬間を感じていた。
パタパタと走り出してサンダルを脱ぎ捨てると、あいつは仕方ないなって顔でおっかけて拾ってくれた。
思い立ったみたいに背中に飛びついても、しっかりと受け止めておんぶしてくれた。
どうしたら良いのか分からなくて、ただ全部を代弁するように甘えていた。
暑い夏。
見渡す限りのみんなの笑顔と声援が降って来た。
熱い夏。
声も身体も心も、全部全部完全燃焼だった。
削られていく時間。
離れるのが恐くて、俺はずっとあいつの隣にいた。
何か、小さなコーナー一つでも終るたびに、もう止めてくれって叫びそうだった。
この日を、終らせないでくれ、って。
終らない時間なんてないって、オレがよく知っていることなのに。
あんなに、心が潰れそうだったのに。
あれほど、声を殺して泣いたのに。
まるでずっと昔の出来事のように、オレの中で薄れて霞んで日常に紛れて。
終わった事をいつまでも引き摺っていても意味がないことは分かっている。
だけどたまに自分に問い質したくなる。
あのときの高揚したキモチは、いったい何だったのかと。
あいつのために流した涙は、そんなに安っぽいものだったのかと・・・。
夏は好き、でも嫌い。
終わると何かを失くした気分になるから。
終ってしまった夏は、取り返せないから。
振り返って見える眩しすぎる夏が、手の届かない宝物を置いてきてしまった気にさせるんだ。
駅伝、なんて使命を与えられて正直良かったと、無茶振りが過ぎるとーちゃんに感謝した。
何かに集中していれば、過去に捕らわれなくてすむ。
少なくとも、自分の『すべきこと』がはっきりしているのは、余計な事を考えなくて助かる。
とーちゃん、青のシャツを着たとーちゃん。
いつからか、とーちゃんが進んで青の役目を負ってくれた。
周りに誇示するほど強くないこの人は、特定の誰かに想いを入れすぎる。
そのために自分が傷付いてしまうこともたくさんあった。
とーちゃんが望むなら、オレ、なんでもするよ?
そういうと、とーちゃんは俯いてすまんなぁって呟いた。
俺はもうお前に何もしてやれへん、何も取り戻せてやれへんかった・・・。
・・・違うよとーちゃん、オレがあんたにしてあげたいんだ。
なんにも出来なかったオレたちを、本当の息子のように可愛がってくれた。
やれば何だって出来るって、たくさんの方法で教えてくれた。
ファミリーって呼べる仲間と、いっぱいいっぱい出会わせてくれた。
だから、とーちゃんが望むコトでオレができるなら、何でも叶えてあげたいんだ。
もうここに居ない、あいつの分も。
続く