『またその絵本を読んでるの?』
『うん、しらゆきひめ』
『本当にそのお話が好きだね』
『しらゆきひめはいーな。たくさんのこびとさんと一緒でいーな・・・』
『・・・ねえ、うちには7人の小人さんはいないけど、おにーちゃんが居るだろ?
人数じゃ負けるけど、おにーちゃんが寂しい思いを絶対にさせないから、それじゃ駄目かい』
『ダメじゃないよ!7人のこびとさんよりおにーちゃんのほうが良いよ!』
『じゃあ寂しくないね?おにーちゃんと一緒なら平気だね?』
『うん、へーき。おにーちゃんが居るなら寂しくないもん(o^冖^o)』
お兄ちゃん。
ずっと傍に居てくれるって、私を守ってくれるって言ったのに。
寂しくさせないって言ったのに、どこに行ってしまったの?
お兄ちゃん、私、一人ぼっちはいやだよ。
どうして私を置いて行っちゃったの?
お兄ちゃん。
お兄ちゃんのうそつき・・・・!
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実家帰省で緩んだ剛士さんのお顔がシャープに戻り、雄ちゃんも全国のお雑煮食べ比べに飽きが回った1月後半、どうやらやっとお台場基地もお正月ムードが薄れてきたようだ。
(Paboさんたちは相変わらず冬物バーゲンに走り回っていたが)
お正月に休んでいたのは悪の組織も同じだったようで、クリスマスからこっちは出現したという情報が入って来ない。
日本の歳時記を分かっているなんて、なんて有難い敵だ。
しかしそんな都合良い事がいつまでも続くわけがなく、久し振りの出動要請がヘキサレンジャーに降りたのは今年一番の冷え込みと言われた日のことだった。
「か、勘弁してよ~~。こんな日に出動なの?」
「仕方ないですよ、向こうが出てきちゃったんですから。
お正月休みを邪魔されなかっただけでも有難いと思わなくちゃ」
剛士だってお正月をあんなにゆっくり過ごせるとは思っていなかった。
愛妻や可愛いわが子と自宅で正しいお正月を過ごせたのは、敵が現れなかったお陰である。
「ま、だからちゅーて手をぬくつもりはないけどさ☆」
「鈍った身体の試運転に丁度良いんじゃねーの?
サッキー、今回出てきたのはどいつだ?アンガ?FUJIWARA?」
「そ、それが・・・」
崎本は次々と舞い込む現地の画像や過去データとの照合を繰り返しながら首をかしげた。
「イッパツヤのヨシオンやハタヨクの姿が確認できます。
加えてFUJIWARAの二人も居るようなのですが、いつもと様子が違うんです」
「え?タッグを組んで来てるってこと?」
「そうなんですが、いつもと雰囲気が違って・・・。
確認しきれてない敵もまだ居るようですし、何か企んでいるかも知れません」
現場は土煙がひどく、また妨害電波でも出しているのか画像がひどく荒れている。
どうやら実際に現場に行って見ないことにははっきりしたことは分からなそうだ。
「よっしゃっ!何が起こってるか分かんねーけど、俺らで一発ケリを着けてくるか。
Paboちゃんたちは一応基地に待機しててね」
「うん、分かった♪たけパパたちも気をつけて^^」
「まーかせときなさいって」
余裕の笑顔を残して羞恥心の三人は出動して行った。
いつもと同じ風景。
いつだって彼らは笑顔で戦地に向って、笑顔で帰って来るんだ。
「崎本さん?」
「あ、ごめん。ボーとしちゃった。僕もお正月ボケかな?」
心配そうに覗き込む里香に笑顔で答えると、崎本はメインシステムの前に座りなおした。
妨害電波の影響が少ない周波数を探して、現地の様子を正確に把握できるようにせねばならない。
すべきことは分かったているし、羞恥心の三人を信用している。
だけど、
なんなのだろう、この胸に広がる暗澹とした不安のような影は・・・。
続く
(おっとノックの出番が少ないぞぉ!(^^;))