注意事項☆必読!
注意①
昨日告知したように、今週は『ヘキサレンジャー』をお休みします。
注意②
今回のお話は昨年夏の南紀白浜合宿がベースとなっております。
古い時代(笑)のお話ですが、時間を巻き戻してお付き合い下さい。
注意③
このシリーズは、羞恥心とPaboが『良い雰囲気』になってます。
そうゆうのは読みたくないという方、すぐにご自分のルームにお帰りください。
注意④
これから先の文章は司さんのフィクションです。
現実に似た人がいても全く関係ないので、混同しないで下さい。
以上の注意事項が守れる、理解できる方だけ先に進んでください☆
後からの文句は受け付けませんぜ。
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大胆にも、彼はホテルの廊下で大の字になって寝っ転がっていた。
いくらワンフロアまるごと番組で借り切っているとは言え、なんとも無用心で無警戒な姿である。
「な~にしてるの」
彼の頭近くにしゃがみ込んだスザンヌが、詰まらなそうな表情で天井を見ていた雄輔の顔を覗き込んだ。
時間を持て余しているのは誰も同じで、こうして通りすがりの誰かに構ってもらうのが魂胆なのだろう。
本当に寂しがりやなんだなぁと微笑ましく思いながら、大きく成長した番組一番の『子供』がどんな反応を見せるが楽しみに待っている。
「あ~、ザンヌだぁ」
気の抜けた声。
眠いんだったら自分の部屋に戻って寝てしまえば良いのに、それも時間が勿体ないとでも思っているのだろう。
「の、さ。俺、なんで振られたの?」
彼女の腕を捕まえようと手を伸ばし、それでもやっぱり触れるに躊躇ったまま空に揺らめかしている。
あれ?もしかして気にしてる?
一番最後の告白は、一番人気と思われていた雄輔で。
それをあっさりとスザンヌが振ったときは、会場中が予想外とどよめいたのだった。
昨日の食材集めツアーは確かに楽しかった。
会話も意思疎通も、実はそれなりに成り立っていた。
だけど・・・。
本当の理由を言ったら、いろんな人が傷付いちゃうから、だからあのままでそっとしておいて欲しかったんだけどな。
スザンヌの逡巡なんて知りもしない雄輔は、真っ直ぐ過ぎる眼差しでじっと見つめてくる。
一緒に回って、楽しかったべ?
無言のうちに確かめてくる。
本当に困った男の子だ。
「だってさ、おんなじ二人が二日もデートしてたら、見てる人は飽きちゃうでしょ?うちらは一回デートしてるから、テレビ的にはもういいんじゃない?」
「テレビ的って、そんな理由?!」
素っ頓狂に不機嫌な声を上げた雄輔に、思わずスザンヌは似合わない苦笑を誘われた。
だってね、去年、野久保っちとデートしたでしょ?
ちゃんと照れないで手を繋いでくれて、水族館も綺麗で、すっごく楽しかったの。
でも、彼のファンの子はあまり面白くなかったみたいで、放送されてからちょっと嫌な思いもしたんだ。
楽しい思い出は、そのまんまにしたかったのにね。
上っちと山ん中駆けずり回って、いろんな人に優しくしてもらった思い出は、楽しいまんまで持って帰りたいんだ。
言いたいけれど言えない理由。
貴方は知らなくても良いことだから。
彼女が少しだけ悲しい笑顔になってしまっていることに、雄輔もさすがに気が付いて、ちょっと不審げに眉を顰めて見上げてくる。
「おまえ・・・」
「だから、今度はカメラのないところでデートに誘ってよ」
突然の提案に驚いて、雄輔は目を見開くと勢いよく飛び起きた。あまりの急激な行動に、頭が一瞬くらつくくらいで。
でも驚きが勝ったのか眩暈なんて気にも止めず、首をかしげてにっこり微笑むスザンヌを凝視してしまう。
「山は行ったから、今度は海に行きたいな。人がちゃんといる海。かみっちの地元も海が近いんだよね?一回、かみっちが自慢してる故郷の海を見てみたい」
長い睫を揺らしながら、穏やかに彼女は微笑んでいた。
良いところだよ、みんな優しくて、気の良い奴らばかりだし、海も空もすっげー綺麗なところだ。
スザンヌだって、きっと好きになる。
連れて行ってあげれるなら、時間の許す限り沢山のところを案内して上げたい。
だけど。
リアルにその画を頭に描いた途端、懐かしい故郷を思い出して高揚しかけた気分が、すうっと空気が抜けるように萎んでしまった。
「でも、動物園になっちまうかもよ?」
珍しく気弱なことを言う雄輔に、スザンヌは変わらぬ調子で言葉を続けた。
「ん~、二人なら大丈夫なんじゃん?それでも上っちが恐いんなら・・・」
どうして彼女が『恐い』という表現を持ってきたのか、雄輔には理解できなかった。
でもその言葉は、確かに自分が抱いているものに近い意味を持っていて、自分でも気が付かなかった心の奥を言い当てられたような感じだった。
けれどスザンヌは、戸惑う雄輔を置き去りにした笑顔で明るく言葉を続ける。
「みんなで行けばいいよ。ユキちゃんとかまいちゃんとか、野久保っちやつるのさんも一緒に。他にもいける人み~んな誘って。そしたら動物園じゃなくて、みんなが楽しめるお祭りになるんじゃないかな?」
「ザンヌ」
すごい、のかもしれない、この子は。
何にも考えてない顔して、すっごく大事な事が見えている。
「それじゃデートになんねーべ」
「あ、そっか」
目を細めてくすくす笑うこの少女に、いつか自分が生まれ育った浜辺を、自分がずっと見てきた海を見せてあげたい。
真っ白な砂浜に立つ彼女のスカートの裾が、塩辛い波風にはためいている様子が、まるで見てきた記憶みたいに雄輔の脳裏に浮かんできた。
行ける、きっと。
そんでお祭りをするんだ。
誰がいても気にならない、楽しさに紛れて見失ってしまう、そのくらい盛大なお祭りを。
続く。
根拠は無いけど、自信だけはたっぷりあったんだ。
そして実現できるって、自信があった。
見えた、気がした。
俺はでっかいスピーカー抱えて、もうちょっとで準備終るからって叫んで、昔の仲間も今のファミリーも、みんなみんな期待に目を輝かせて。
スザンヌが手を振っている。隣には際どい水着の優樹菜とまいが居て、剛士と直樹はちょっと目のやり場に困りながら砂浜に寝転んでいる。